第06話 依頼者とお買い物
すぐにケンジは動き出す。
キンバリーは正直、ついていくだけで精いっぱいだった。。
まず、別の宿にいたジンジャー、ガラン、ゴラムを呼び出す。
4人+1人でギルドに行き、常時依頼のゴブリン討伐を受ける。
「こんな依頼でいいのか?」とキンバリー。
「いいんだよ、お前らに足りないのは運営の練習だからな。
依頼内容はなんでもいい」
そのまま出発するか、と思いきやギルドの隅にある
テーブルと椅子を占領して打ち合わせを仕切り始める。
「まず、このゴブリン討伐依頼だが」とケンジはパーティーを見回す。
「何日かかる?」
「3日だな」とゴラムが答える。
「必要なものは?」
「食料4日分」とガラン。
「魔術の触媒」とジンジャー。
「弓矢を30本」とキンバリー。
「他には?」
「消毒用の酒が不足してる。」と、ゴラム。
「以上か?じゃ、買い物いくぞ。」とケンジが4人を連れて、
ぞろぞろと歩き出す。
ギルド近くの商店で買い物するかと思いきや、
ケンジは市場の奥に入って行き、
主婦でごった返す街区に突っ込んでいく。
革鎧と武器を持ったキンバリー達は、周囲から浮きまくっているが
ケンジの歩みは止まらない。
「いいか、食料は2日分を普通食、2日分を保存食で買う。酒はこれだ」
「普通食はパンとチーズでいい。保存食は干し肉とビスケットだな。酒は蒸留酒を少し。
この店でまとめ買いするのが安いからな。
なんせ、街の主婦向けだからな。交渉しといてやったから、払え。」
「これだけ買って、銅貨3枚?」とキンバリー達は驚く。
食料も新鮮に見えるし量も多い。
「地元の人間は、こういうの食ってんだよ。次行くぞ、次。」
ケンジの先導で鍛冶屋へ向かう。
「親父さん、鏃だけ売ってくれよ。鋼鉄じゃなくていいから、鉄の鏃。」
「まーたケンジか、100個一緒なら売ってもいいが。」
と鍛冶屋の親父は諦めたように言う。
そこでも、しっかりと交渉したケンジ。
「俺が矢を買うときの10分の1なんだけど・・・」と落ち込むキンバリー
「バカ、1本買うのと100個買うので同じ値段なわけないだろ。
それに、俺は毎日買いに来てるから、相場も知ってる。
今は鉄の鏃が安いんだよ。
先週、鉄鉱石の搬入があったばかりだから、鋼鉄は相場が上がってる。
それに、買ったのは鏃だけだ。矢はお前が作るんだぞ。
残りは、お前も知ってるサラに売る。」
「はー・・・なるほどねえ。」
「わかったら、次だ次。魔術師ギルド行くぞ。」
魔術師ギルドには、普通は剣士たちは来ない。
ケンジたちは、ここでも浮きまくっていた。
「魔術の触媒を買いに来たんだが。」
ケンジはお構いないしにギルド職員に話しかける。
「あなたは魔術師に見えませんが」
「買うのはこいつだよ、こいよジンジャー」と小柄な魔術師を呼ぶ。
「何を、どれだけ買われますか?」
「小火撃の触媒を5つ、小風撃の触媒を3つ」
「では、小銅貨8枚で。」
「そんな高いの!?」と驚くキンバリー達。
彼らは、魔術に触媒が必要なのは知っていたが値段は知らなかった。
魔術師のジンジャーが、いつも魔術をいざという時まで使わなかったのは怠慢のだと思っていたのだ。
「まあ、正直、触媒の値段交渉は俺にはできねえ。迷宮や依頼で拾ったら銅貨だと思って大事にするんだな。」とケンジ。
結局、街を回って買い物に1時間ほどかかった。
「サラの知り合いだから、依頼料は後払いにしてやる。
さっさとゴブリンの討伐に行ってきな!」
そう言って、ケンジはキンバリー達を送り出した。