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第54話 気分が抜けてない

子供達が持っていたのは、初級冒険者なら、誰もが狩るスライムの核だ。


この世界のスライムは、沼地や下水などに潜んでいて、

普段は小さな鳥や獣などを食べているのだが

街中に棲んでいる奴は、まれに子供を襲うこともあるので、

見つかり次第、駆除される。


現代世界の感覚で言うと、ドブネズミのようなものだ。


ただ、スライムの核は加工するとにかわの原料や

染料の粘度を上げるのに使用されるので、革通りの工房に

一定量が納入され、備蓄されている。


子供達は、そこからクスねて遊んでいたものだろう。


その完全な球形と、弾み具合を見て思ったのだ。

なぜ、ゴムの再現にこだわっていたのか。

バカな自分の頭を殴ってやりたい気分だった。


転移あれから、5年も経つというのに、

まだ文明世界気分が抜けていないらしい。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


怪物(モンスター由来の弾力性ある素材を選定し、

靴のかかと中心部分に使用して衝撃を吸収する。


その方針が定まってからは、開発は早かった。


この世界では、工業由来の素材を使用するより

怪物由来の素材を用いる方が、供給量でも規格の具合でも

信頼性が高い。


サイズの微妙な違いは、数を調達して規格外品を除外すればいい。

鶏卵やオレンジのサイズをそろえるのと同じだ。

2つ穴を開けたトイの上を転がして、やや小さめの穴を通過しつつ、

基準サイズ丁度の穴に落ちたものを使用すればいい。


規格外品は、そのまま冒険者ギルドへ転売すればロスも少ない。


スライムの核を、そのまま使用するのは耐刃性と耐久性の問題で却下したが、

鳥形の魔物の肺とスライムの核を化学薬品で処理して熱した素材が、

性能と価格の面で残った。


鳥形の魔物の肺袋は、素材が少なく規格を揃えるのが難しかったが、

軽量で高い衝撃吸収性を発揮した。


スライムの処理した核は、肺袋に比べて重量はあったが

サイズが一定のものを揃えるのが容易で価格も安く済む。


前者を高価格モデルに使用して、後者を普及モデルに使用すればいい。


これで靴製造にかかわる素材の問題は、全て解決した。


あとは、信頼できる設計者を探すだけだ。


技術が洩れないよう、注意して複数の職人にパーツを取り付けてもらい、

一応の量産型の冒険者用のサンプル一足だけは完成した。


俺は、久しぶりに剣牙の兵団まで行くことにした。

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