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第46話 考えるか行動するか

いきなり交渉に行っては、足元を見られる。


俺はまず、革通りに出入りする皮革の量と種類を数えることから始めた。


幸い、革通りで大型の馬車が出入りできる入口は一カ所だけなので

そこを監視していれば、出入りを見逃すことはない。


俺とサラは、入口を見通せる場所の家屋に金を払って席を借りると

板に出入りする馬車の大きさと台数の印をつけ始めた。


「ね、なんでそんなことするの?」


「安くて、いい革を調達するためだ。

 こっちは革の素人なんだ。普通に顔役や職人のところに行ったら

 追い返されるか、ボラれて終わりだ。


 少なくとも、こっちで大まかな数字を抑える必要がある。


 1日に、どれだけの皮が搬入して、原皮になるのか。

 今、多く入っている皮は何で、不足している皮は何か。

 薬品や塩はどのくらい消費されているのか。

 

 他にも、交渉の材料は多い方がいい。

 

 景気はいいのか、悪いのか。

 

 職人達は、今の待遇に満足しているのか、いないのか。


 金に困ってる親方は誰で、腕のいい親方はどこなのか。


 そういった細々とした情報を押さえてから交渉に臨みたい。」


「は・・・めんどくさそうだね。」


「アホ!お前を連れてきたのは、その面倒くさい情報を聞くためだ。


 今日は、全体の様子を見て、何を数えると革通りの様子がわかるのか、

 様子を探る枠組みを決めるために観察するぞ。」


「枠組みって何?」


サラに問われて、今、ちょうど入ってきた馬車を指さす。

 

「あの馬車を見ろ。普通、街中で馬車の往来は制限されている。

 だが、冒険者ギルドと革通りを往復する輸送馬車は別だ。

 荷台には怪物モンスターの皮が載ってるだろう。

 あれで入荷されている種類と数がわかる。」


続いて、樽を積んだ別の馬車を指さす。


「あの馬車に積んだ樽を見ろ。色が黒ずんでいるし、職人が皮の手袋と

 口覆いをしているだろう。多分、処理用の劇薬だ。

 革を加工するときに使う薬を搬入してるんだ。

 あの樽の数を数えると、大まかに処理されている皮の数がわかる。」


 通りから出ていく別の馬車を指さす。


「あの出ていく馬車は、2等街区に向かう馬車だ。作りが上等だし

 工房のマークが入ってる。おそらく上物の素材だ。

 形からすると、魔狼か?3枚で一くくりになっているハズだから

 15枚程度か。おそらく、防具になるやつだな。」


そこまで言って、サラに振り返る。


「こうやって、出入りする馬車と、積んでいる荷物、行き先なんかを

 数えるんだ。これを定期的に行うと、革通りで何が起きているか

 把握できる。


 入荷が多くて出荷が少なければ、売れていないか職人不足だ。

 薬品樽の入荷が少なければ、職人不足で決定だな。

 有名工房への出荷が少なければ売れてない、景気がわるいはずだ。」


サラは腕を組んで、うーん・・・と一しきり唸ったあと、


「考えすぎじゃない?あたし、聞いてきてあげる!」


と飛び出して行ってしまった。

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