第418話 剣牙の兵団の戦力
スイベリーが指揮をしているせいで兵団の団員達は続々と会社に集まりはじめ、さながら兵舎の様相を見せ始めた。
拡張した工房の空きスペースには盾、斧槍、弩などの怪物を倒すための軍団装備が続々と運びこまれている。
護衛をして欲しいとは依頼したが、こいつらは一体どんな竜を倒そうというのだろうか。
ハリキリすぎである。
活き活きと団員達を指揮しているスイベリーに相談を持ちかける。
「スイベリー、連れてくる証人を1人、預かって欲しいんだがな」
「ふむ。誰だ?」
「村の司祭様だ。村長や村の人間と司祭様は隔離しておきたい」
「その理由は?」
「司祭様が、どちらの立場に立っているか分からないからだ。村人と一緒にして、何かを言い含められても困る。それに、身分の高い司祭様を保護するには、ここではちょっとばかり手狭だ」
答えを聞いて、スイベリーは片眉をあげてこちらを見つめる。
「前から思っていたが、お前は決断は果敢でイロイロとやらかす癖に、行動はみみっちくて用心深いな」
「そりゃあ、あんたらみたいに魔剣で全てを真っ二つ、ってわけにはいかないからな。こっちは普通の人間なんで」
「普通の人間ねえ・・・。まあいいだろう。司祭様も街並みが綺麗な2等街区にいた方が何かと心証も良くなるだろうさ」
と、冗談をとばす。
どうせ村からは拉致同然で連れてくることになるのだ。いい印象など持たれようもない。
だが、剣牙の兵団の事務所で武装した傭兵達に囲まれていれば、文句も少なくなるだろう。
少しばかり笑った後、スイベリーが真面目な声で聞いてくる
「それで。いつ頃、仕掛けてくると読んでる?」
「先方の頭が悪ければ、今夜にでも。相手が優秀なら、今夜は監視だけに留めて証拠が揃った頃合いを見計らって全戦力で襲撃。物凄く優秀なら、そもそも襲撃を企まない」
「なるほど。道理だな。お前さんの見方は?」
「代官の裏に誰がいるか、それ次第だな。相手のやり方は、ハッキリ言って杜撰だ。だから今夜の可能性も結構高いと思う。今夜襲撃がなかったら、かなり注意しないと不味いな」
「今夜襲撃してきた場合、標的はお前さんか?戦力はどの程度だと思う?魔術師はいるか?」
「今夜襲撃してくるようなら、標的は俺だ。金では黙らないのがわかっているだろうから、命を狙ってくるだろう。その場合、相手は小物だ。魔術師を雇える可能性は低いと思う。主力は冒険者崩れの用心棒や私兵の集団になるんじゃないか?数だけは揃えてくる可能性はある」
スイベリーは事務所で闘いの準備を整える団員達と、壁際にずらりと並べられた装備類を眺めてニヤリと笑うと、声をかけた。
「そいつは楽しみだ。数を相手の防衛戦は、剣牙の兵団の十八番だからな。お前ら!敵さんの襲撃は今夜だ!歓迎してやるぞ!」
「「おおっ!!」」
二十人を越す男達が、野太い声で副団長の気合に唱和する。
剣牙の兵団は、人喰巨人や有翼獣、小竜達を相手にする一流クラン
なのだ。
その本気の装備と陣容に突っ込んでくる私兵達には、同情するしかない。
明日は18:00に更新します
 




