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第40話 冒険者の飯

サラの問いには、胸を張って答える。


「続けるさ。駆け出し連中が、ボラれて泣くのを見るのも胸糞悪いしな。

 それに、サラも夕食に肉のスープがなくなるのは寂しいだろ?」


「にっ、肉のスープとか2日に1回しか食べてないし!」


冒険者かけだし連中は、肉体労働の割に、あまりいいものを食っているとは言えない。

基本は芋か麦粥、雑穀のパンに、塩か酢で加工した野菜の葉物を日に2回。

冒険の最中に狩りで兎や鳥が取れれば、追加で肉を食べられることもある。


魔物は、大地のけがれが集まって誕生すると考えられているので

魔物食はタブーである。


前のパーティーで、魔物は食えないのか、と聞いたら

見張りの夜に物知りの魔術師が教えてくれた。


村の掟を守らず魔物ばかり食べていた村の嫌われ者が、

ある日、自分が魔物になってしまうというたぐいの童話を、

子供たちは寝物語に聞かされるのだという。


統計など取られていない、この世界では事実かどうか検証はできない。

そして、よほど飢えない限り、自分で検証する理由もない。


魔物が多い世界では、広く安全な土地が必要な放牧は難しい。

この街では、肉は高級品なのだ。


それを2日に1回も食べているというのだから、サラも金回りが

よくなったものだ。


よく見ると、サラの顔や髪の色ツヤが、ずいぶんと良くなっている。


「なんか、お前、肉付きが良くなったな。」と褒めると


「でっしょーーっ?!」と腹を突き出してくる。


このあたり、ほんと田舎育ちだよな、と思う。

田舎の農民で太った人間はいない。

太れるほど、豊かではないからだ。


肉付きがよくなった、は農民にとって褒め言葉である。

家畜を褒めている気分だが。


「じゃ、剣牙の兵団の誘いは断るの?もったいない!!」


ホッとしたり赤くなったり叫んだり、忙しい奴だ。


「いや、本当に考えてるんだ。少し一人で考えたい。」


そう言うと、サラは引き下がった。


久しぶりに、酒でも飲んで考えるか。

剣牙の兵団の連中は、毎日、肉を食ってるんだろう。


娯楽の少ない、この世界では格差って奴は食事にでる。


肉を食い、エールを飲みながららちもないことを考える。

サラは、ちゃっかりと相席して自分の分のエールまで頼んで

俺にツケてやがったが、途中でどうでも良くなった。

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