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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第二十四章 新人官吏達が冒険者を支援します

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第390話 経験がないのなら

翌日、靴事業の方を見ていると新人官吏達が計画を見て欲しい、と言ってきた。

昨夜、サラから様子を聞いていたが、だいぶ自信がありそうだ。


そうして新しい工房の角に設けられた講義のスペースに赴くと、床一面に板切れが並べられていた。

しゃがみこんで、板切れの1枚を拾い上げ、読み上げる。


「荷車調査と調達、リュック、1か。この意味を説明してくれるか?」


そう質問すると、名前が書かれていたリュックが進み出た。


「一つ一つの板切れには、仕事、担当者、それに必要とされる人数が数字で書かれています。私の実家は商家ですから、計画に必要な荷車の台数を割り出し、調達することを引き受けました。それに荷車の計算と調達は、私1人で1日もあればできる仕事なので、1と書いてあります」


「ふむ。では、この荷車の調達という仕事が、この場所にある理由を説明してくれ」


そう尋ねると、リュックは少し戸惑った様子で問い返してきた。


「場所、ですか?」


「場所というか、時期、順番、タイミングと言い換えても良い」


「なるほど。意図はわかりました。私は必要な荷車の数を測定するためには、計画全体で運ぶべき荷物の量が明らかになってから調達するのが良いと考えました。ですから、領地に出発する直前に揃うよう計画を立てています」


「よくわかった。もし付け加えるなら、試用機会を設けた方がいいのではないか、と思うが」


「試用、ですか?」


「そうだ。この計画はよくできていると思う。正直なところ、驚いた。だが、この数字については、このぐらいかな?との予想で書いたのではないか?書いた当人も確信がないのでは?」


数字の正確性について疑問をぶつけると、新人官吏達全員が下を向いた。

仕事の見積もりには、経験が必要だ。新人達の意識は素晴らしいと思うが、経験不足は机上の議論では埋まらない。


「数字を正確にするためには2つ、方法がある」


俺が指を2本立てながら説明を始めると、新人官吏達の視線が集中するのを感じる。


「まず、1つめの方法は試用機会を設けることだ。先の荷車の例で言えば、一度、領地まで荷車を牽いて移動してみると良い。荷車にどれだけの荷物が積めるか、領地まで荷車で行く際にはどんな道を通るのか、途中の修理はどうするか、難所はどこか、など総合的な情報が得られる。そうすれば、実際に荷車を調達する際の台数を正確に見ることができるようになる。それに、荷車を借り出す時に、どこの商会の荷車が頑丈か、安価か、場合によっては特別に制作したほうが良いか、などの判断をつけることができるようになるだろう」


要するに、少数で先行して実施テストをしよう、ということだ。

テストをすることで、計画の精度が高まる。


「それに、ど素人だと商会にボラれても気づかない、そうだろ?」


「そうですね、急に出世された貴族様は支払いが良いので、良いお客様だった覚えがあります」


リュックに確認すると、実家の商売を引き合いにだして笑顔で答えた。


「2つめの方法は、もう少し簡単だ。経験がないのだから、ベテランに聞いてみるといい。全体を見通すことのできる人材は少ないが、個別の仕事にはベテランとか、名人とかがいるもんだ。そういった人に板切れを持って行って聞いてみるんだ」


自分達でわからなければ、わかる人に聞いてこい。

ごく当たり前の指摘ではあったが、新人官吏達は意表を突かれた顔をした。

本日は22:00にも更新します

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