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第38話 今後はどうするか

「それで、今後についてだが・・・俺も少し計画を立てるのに

 時間が欲しい。」


「当然だな。とりあえず、ここまでの報酬を払おう。」ジルボアは頷く。


「いや、金銭かねは要らない。」実際、目先の金に困ってるわけではないのだ。

欲しいのは、もっと別のものだ。


   

「今、俺は冒険者向けの靴を作ってる。

 丈夫で、疲れにくくて、滑りにくい、画期的なやつだ。

 そいつを、お前さんのところで使ってもらいたい。

 そして、剣牙の兵団の意匠が決まったら、

 それを使わせてもらいたい。」


「ふうん・・・?まあ、俺達にとって損はない話のようだが。

 パトロンの一種なのか?貴族みたいなことするんだな。

 面白そうだから、できあがったら俺にも一足くれ。」


 貴族の中には、自家の名声を高めるため、

 高名な冒険者を支援する者もいる。

 たしかに、表面的には似たようなものに見えるかもしれない。


「あとは、口の堅い革細工職人がいれば教えてほしい。

 靴の作り方には秘密が多くてな、信用できる職人の伝手が欲しいんだ。

 3等街区の職人だと、金銭かねで転びそうな奴が多くて困ってる。」

   

「うちは貴族も含めた口が堅くないとやってられない取引も多いからな。

 わかった。それでいいなら紹介しよう。」


「よし、契約成立だ。近いうちに、また来る。」


 これで、伝説の男との話し合いは、一旦終わりとなった。

 俺は契約を手に入れ、剣牙の兵団は今後の方針を手に入れた。

   

 これからは、剣牙の兵団に変化を起こすため、じっくりと

 付き合っていくことになるだろう。


 ジルボアと握手して別れると、3等街区の宿まで

 スイベリーが送ってくれるという。


 何か言いたいことがありそうだったので、

 黙ってついて行くことにした。


 しばらく無言で歩いていたが、スイベリーがポツリと漏らした。


「お前、剣牙の兵団(うち)に来る気はないか?」


 それは冒険者なら誰もが憧れる一流クランへの勧誘だった。

    

「俺は、膝が悪くて引退したんでね。戦えない奴は不要だろ。」


 買ってくれるのは嬉しいが、クランの事務所や団員達を見た後では、

 どうしても二の足を踏んでしまう。

 あの脳筋集団で、俺のようなロートルがやっていけるとは、

 とても思えない。

   

 だが、返事に構わずスイベリーは続けた。

  

「俺には学がねえ。今日、お前の話を聞いて、つくづく思った。

 俺は、団長シェフについて行って、団員なかまと一緒に盾を掲げて

 剣を振れれば満足な人間だ。

  

「団員も、俺と大差はねえ。腕は立つが、それだけだ。

 剣牙の兵団を大きくしようと思ったら、頭が使える人間が必要だ。


 俺はこれまで、頭がいい人間ってのは、口先が上手くて

 信用ならねえと思ってた。


 だが、うまい言い方はできねえが、お前の頭の使い方は

 俺みたいな学のない人間にもわかりやすくて、ためになるように、

 考えてくれてるのがわかるんだ。」


 思いもよらぬ、雄弁な勧誘だった。


 だから、考えておいてくれ、というスイベリーの言葉に、

 真剣に検討することを約束した。

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