表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第二十二章 部下を教育して冒険者を支援します

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

367/763

第366話 困惑と意義

領地を統治するために、どのような統治が適切であるか。

熱心に議論が進む中で、うまく議論に入っていけない人間がいた。


教会から派遣された、クラウディオとパペリーノの聖職者2人組である。


これまで、測れないと思われていた統治の状況を数字で測ることができる、という指標の考え方は、聖職者である2人に強い衝撃を与えた。


若手の優秀な聖職者とは、聖職者として優れていることを意味しない。

教会という巨大組織を運営する文官として優秀である、ということである。


勢い、彼らの受けてきた教育は法律を元にした統治論であり、それを補強する信仰教育や思想教育である。

実務としては教会に喜捨される膨大な資金の管理や政治的取引に基づく配分の差配と調整が主であった。


それは、より声の大きい者、力を持つ者がより多くの配分を受けられるという仕組みではあったが、組織運営の原理が権力の強さとイコールであるため、特に疑問を抱いたことはなかった。


ところが、ここに全く違った原理を持ち込んで統治しよう、という考え方が芽生えている。

この、煩くて小汚い工房の片隅で!


「ケ、ケンジさん!あなた、何を言っているか分かってるんですか!」


ついに黙っていることができなくなり、パペリーノは立ち上がった。


「パペリーノ、代官様って呼ばないと」


小さな声で周囲が注意するも、彼には届かない。


「皆、この議論のおかしさがわからないんですか?」


「何が?すごくわかりやすいけど?」


「ああ、なんか俺でも出来る気がしてきた」


懸命に訴えようとしても、聖職者として高度の文官教育を受けたクラウディオ以外には、そもそも普通と何が違うのか判らないのだ。


パペリーノは、もどかしさを覚えた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「パペリーノ、議論だから異論を持つのは構わないさ。何がおかしいんだ?」


急に立ち上がったパペリーノに声をかける。


「こ、これではまるで、統治というより商いの取引のようではないですか!」


「ほう」


思わず感心の声が漏れる。


言葉こそ足りないが、パペリーノの直感は正しい。


いい疑問なので、議論を続ける。


「今の議論を聞いて、そう感じるとはいいセンスをしているな。どこで、そう思ったんだ?」


商取引に見えるというネガティブな言葉を上位者にぶつけて、叱責されるどころか褒められたことで、パペリーノは混乱したらしい。


「なっ・・・。その、ケンジさんは、ニコロ司祭様から幾つかの仕事の成果に対する報酬として代官を受けられたと聞きました。違いますか?」


「違わないな」


「で、ですから報酬分を税として取り立てる必要があるはずです。そのための計算をしているように聞こえるのです」


「バッ・・・やめろパペリーノ!」


パペリーノは逆上するあまり、間接的に、俺のことを金が目当てで代官を引き受けたんだろう、と侮辱した形になる。

周囲の人間が袖を強く引いて、懸命に止めようとしたが遅い。


「パペリーノ」


と、俺が声をかけると、厳しい処分を想像してのことか、全員が静まり返る。

教会からの出向とは言え、俺と彼は上司と部下の関係である。

その場で解雇する程度の人事権は持っている。

解雇されたとなれば、教会に戻っての出世は絶望的だろう。


だから、俺が激高することなく平坦な声で


「なかなか興味深い指摘だ。良い点を突いている」


と続けたのを聞いて、全員が困惑した表情でこちらを見た。

明日も18:00と22:00に更新します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一二三書房様 庭に穴が出来た 特設ページです https://www.hifumi.co.jp/lineup/9784891998769  バナーは書籍の特設サイトです 

i252242/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ