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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第二十一章 出世して冒険者を支援します

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第351話 代官と金貸し

翌日は食い過ぎで腹が重かった。

俺よりも沢山の肉を食ったはずのサラはケロッとしているので、年だろうか。


朝食は抜いて、茶を啜りながら、今後について計画を立てる。

職人の家族達は相変わらず賑やかに朝食を食べているが、周囲に多少の賑わいがあった方が頭が働く性質たちなので問題ない。


結局、代官を引き受ける羽目になったのだが、自分の立ち位置を忘れるべきではない。

代官は社会的信用のある仕事だが、結局は与えられた地位であり、政治的状況によって簡単に剥奪されるものだ。

だから、任期制の代官は次の任地を得るため、普通は上役に訴えるに実績として農村に多額の税を課すし、それが手腕であるとも見なされている。


だが、俺はそれをやりたくない。

代官の仕事をするならば、いつ首になっても構わない覚悟で臨みたい。そのためには、靴の事業も代官と平行して運営したい。もっと言えば、相互効果シナジーがある仕掛けを作りたい。


「金貸しをやってなくて良かった、ってところだな」


「どういうこと?」


サラが、俺の呟きをとらえて聞いてきた。

朝から麦粥をタップリと皿に盛り、スプーンで嬉しそうに口に運んでいる。


「よく食うな・・・」


「昨日はお肉ばっかりだったでしょ?それに最近はニンニクとか塩とかが入ってて、味も毎日違うの!」


朝の賄いの費用を少し増やしたからか、メニューにも工夫が凝らされているらしい。

中華粥みたいなものか。


「固くなったパンとかを、細かくして散らしても美味いかもな」


「それ!明日は、それにしてもらわないとね」


話をしつつも、朝食をとる職人と家族達を見守る。

小さな体で、皿に目一杯盛っている少年、それをたしなめつつ世間話に姦しい母親達、それを見守る寡黙な若い職人達。靴の事業は、こうした人達の暮らしも支えている。

たかが代官に祭り上げられたぐらいで、この人達を捨てて行けるわけもない。


「それで、さっきの金貸しじゃなくて良かった、ってどういうこと?」


「うん?ちょっとだけ、ややこしい話になるが・・・」


と前置きしてから説明する。


「金貸しで儲ける秘訣は、沢山の資金を手間賃をかけずに回すことだ。だから、こんな風に大勢の人を雇うことはできない。むしろ、雇ったらダメなんだ」


「それは、ちょっと寂しいわね」


「だから、沢山の資金を引き受けられる貴族やエライさんが相手になる。代官と金貸しは、事業の相性もいい」


「相性がいいなら、いいんじゃないの?」


「良すぎるんだよ。代官で金貸しなんていうのが、農村に赴任してきてみろよ。領地の農民に重税を課す。払えないから、金を貸す。借金を返せなかったら畑を取り上げる。もし払えたら翌年、もっと重税を課す。こんなことがやりたい放題だ。任期が終わる頃には、農民は全て借金持ち、農村の土地は全て代官のものになってるさ。そして、その財産と手柄を抱えて、代官は次の任地に腕利きの代官として移るわけだ。最悪なのは、俺が金貸しだったら、合理的に考えて同じことをやりかねない、と思うからだ」


「ケンジは、そんなことしないよ!」


ビックリした。大声を出すなよ。周囲まわりが驚くじゃないか。


「ああ、やらない。なぜなら、俺は金貸しじゃなくて靴を作る、モノづくりの人間だからな」


「そういうことじゃなくて・・・」


サラは他にも何かを言いたそうだったが、それはうまく言葉にならないようだった。

本日は18:00にも更新します。

明日も12:00と18:00に更新します。

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