第337話 役に立たないなら
サラちゃんの「こんさる」話、全6話の5話目です。
たくさんのご意見、感想、ありがとうございます。
サラは、昨夜のケンジとのやり取りを思い出す。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あの3人だけで依頼を請けるのは無理ね。ぜったい死んじゃう」
ケンジに聞かれて、サラは答える。
あの3人組は、まず冒険者としての基本ができていない。
字が読めない上に冒険者の慣習に疎いから、まともな依頼を請けることもできないし、まともでない依頼をこなしても、依頼料を誤魔化されたり踏み倒される未来しか見えない。
「すると、どこかのパーティーに放り込んで教育してもらうのがいいかもしれんな」
誰にでも新人の時期はある。
勢いのあるパーティーは、そういった新人から優秀そうな人間たちを選んで、自分達のパーティーの2軍のような形で緩く提携を結ぶのだ。
それは情報の提供だったり、中古の武具を譲ったりすることだったりする。
そうして面倒を見ておいて、いざ、自分のところのパーティーで欠員が出たり、大きな依頼を請けるときに声をかける。新人たちはベテランのやり方や腕を間近で見て成長できるメリットがある。
「でもね、あの子たち、本当にお上りさんなの・・・」
当然ながら、優秀な新人に声はかかるとしても、足手まといには声はかからない。
本当にサポートが必要な時期には、サポートが得られないというジレンマ。
冒険者の世界は厳しいが、そういうものだ。
「別々のパーティーに1人ずつなら、受け入れてもらえるかもな」
3人の足手まといがいれば面倒を見きれなくとも、1人の足手まといなら面倒を見てくれるかもしれない。
幸い、ケンジが世話をした冒険者パーティーは多いので3つぐらいなら何とかなるだろう。
「でもね、あたしは3人は一緒のパーティーにいた方がいいと思うの」
冒険者のパーティーは命を預ける仲間だ。
その絆は戦いや依頼を通じ時間をかけて築かれる。
「だって、本当に危ない時は見捨てられちゃうでしょ。1人なら生き残れないけど、3人なら生き残れるかもしれないし・・・」
パーティー内に絆があるとすれば、新米はその絆の外側にいる。
パーティーメンバーの命と新米の命を秤にかければ、前者をとるのが自然だ。
だから、信頼できるメンバーとしかパーティーを組めないのだ。
「そうすると、多少は役に立ってくれないと紹介はできないな」
ケンジが言うのはもっともで、3人の役立たずを連れ歩けるパーティーはいない。
それが例え、荷物持ちとして最低限の費用しかかからなかったとしてもだ。
ふと、サラのお腹が鳴った。
「とりあえず、飯にするか」
「そうね、また麦粥だけど。お肉つかないけどね」
「俺はあれ、嫌いじゃないぜ。温かいうちは、なかなか食える。殻取りと選別をきちんとしてあれば、匂いも気にならないしな」
ケンジの答えを聞いて、サラは自分の頭にも小鳥が羽ばたいた気がした。
「ねえ、だったら料理で役立つようにしてから連れて行ったらいいんじゃないの?」
本日は22:00に6話目を更新します。
それで閑章は終わりです。サラちゃんの「こんさる」については、6話目までの感想を頂いて整理してから決めたいと思います。




