第333話 冒険者を辞めました
ケンジはすっかり大物になってコンサルも業界や世界を揺るがせるものばかりになりました。
それで、ちょっと小さなコンサル話も書きたくなったので、主人公をサラちゃんにして閑章としてコンサル話を書いてみることにしました。
時系列的には、結構前です。
全6回を予定しています。
好評であれば、別小説として立てて続けようかな、と思います。
「もう、冒険者の依頼なんて受けないんだから!」
ケンジを解雇にした連中に、今日こそ言ってやった。
もともと、ケンジを解雇にしただけでも気に入らなかったのに。
代わりに入ったのが剣を振り回すしか能がない嫌な奴で、いい加減、頭にきていた上に。
今度は壊した武器の修理費をパーティーで借金しようとか言い出した。
「冗談じゃないわよ!」
そんなわけで。
あたしの冒険者生活は、数年で終わった。
もともと、弟と妹のために農村から出てきて、弓矢の腕の他に食べて行く方法がなかったから冒険者をしていたのだし。
ケンジがいた頃のパーティーは、あんまり危険なことをしなくても、それなりにお金になったし、依頼をこなせば実家に持っていくお土産代くらいは貯金出来ていたのに。
ケンジを解雇にしてから、本当におかしくなった。
それに、今はケンジのところで仕事を手伝ったり、いろいろ教わるので忙しいし稼いでいける。
「あたし、冒険者やめる!」
もう、冒険者なんて商売は辞めるんだから!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あー失敗したかなー」
いつもの宿で頭を抱えて、昼間から微温い麦酒をチビチビと啜っていると、同じ弓兵のキンバリーが声をかけてきた。
以前の依頼でケンジに紹介してから、今でもときどき話をする仲だ。
「なんだ、ケンジに浮気でもされたか」
「浮気とか、そういうんじゃないし」
いつもの軽口にも反応する気になれない。
これでも一応、落ち込んでいるのだし。
「あー弟と妹にお土産買っていくって約束してたのにー」
と思わず愚痴が口からでる。
「なんだ、依頼でも失敗したか」
と少しキンバリーの口調が慮る感じになる。
「違うわよ。冒険者を辞めたの。今、パーティーに言ってきたところ」
「ふーむ」
「まあ、ケンジのところで仕事してるから直ぐに困るわけじゃないんだけど、やっぱりお金になる仕事しないと実家に仕送りできないし」
それに、肉の入っていないスープを啜ることになる。
「ケンジのところで手伝いって、何してるんだ」
「えーと?市場のモノの値段を憶えたり、新しく調べて数字を足したり、あとはケンジにくっついて職人さんの仕事内容を聞いたりとか、冒険者にアドバイスしたりとか・・・」
「なんだそりゃ。じゃあ、ケンジと同じことができるってのか?」
キンバリーに聞かれた時、お酒が回って少し気が大きくなっていたのかもしれない。
そうでなければ、こんなことは言わなかっただろう。
「あったり前じゃない!あたしに任せて!」
今回の更新が(1/6)にあたります。
本日は22:00更新を予定していますが(2/6)になります。
少し新しい試みなので、感想やご意見をいただけると嬉しいです。




