第33話 不足しているのは
方針は単純だ。
剣牙の兵団は強い。
強すぎて、近郊の強敵となる怪物を狩りつくしてしまった。
だから、もっと強い敵を相手にできる土地へ行く。
それも、招聘を受けて、行く形にする。
「そのために剣牙の兵団には、欠けてるものがある。わかるか?」
「他所の街の貴族とのコネだな」
とジルボアは言う。そう、こいつは課題がわかってたんだ。
だから、貴族の依頼を集中して受けていたんだろう。
「そうだ。だが、この街で貴族の依頼を受け続けても、
将来の展望にはつながらなかった。違うか?」
ジルボアは苦い顔で頷く。
ジルボアが如何に伝説の男であり、剣一本で成り上がったとは言っても、
所詮は、冒険者の間でのことだ。
貴族達から見れば、30名の傭兵を抱える使い捨てのできる
傭兵団の長に過ぎない。
冒険者である俺から見れば、剣牙の兵団は対怪物戦闘
に関して怖ろしいまでの装備と練度を誇っているのだが、
城壁の中に閉じこもっている貴族には、そんなことはわからない。
なぜなら、そんな怪物狩りの現場に貴族様が行くことはないからだ。
だから、現場を知らない貴族達にも、剣牙の兵団が如何に対怪物
で怖ろしい戦闘力を持つか、知らしめなければならない。
そのために必要なのは、圧倒的な評判だ。
現場を知らない貴族に対し、圧倒的な評判を作り出す必要がある。
それが、俺の提案する、剣牙の兵団を支援する内容だ。




