第31話 未来の価値は
さて、今度は相手がカードを見せる番だ。
「報酬か。形なきものに対して幾らの価値をつけるのか。
つまり、剣牙の兵団の未来の値段を決めろ、ということか」
ジルボアは端正な顔でニヤリと笑う。
「スイベリー、どのくらいの価値だと思う?」
スイベリーは少し考えて言う。
「大銀貨3枚、ですかね」
「その根拠は?」
「自分が半年悩んでも出なかった答えを、
この男が持ってそうだからです」
大銀貨3枚!銅貨の10倍の大銅貨の10倍の銀貨の10倍
の大銀貨で3枚とは。
俺の月収が大銅貨30枚で銀貨3枚だから、その10倍か。
なかなか、太っ腹だねえ。
やはり一流クランの副長ともなると給料いいんだな。
などと、金勘定の計算をしてしまう。
「不足か?」
と、ジルボアはこちらを見つめる。
「不足ですね」
と、俺は間髪を入れずに応える。
「なぜなら、あんたは俺の話をまだ聞いてないからだ。
値段をつけるのは、それからでもいいでしょう?」
「話だけ聞いて、金は払わんかもしれんぞ?」
「団長が、そんなうすみっともない真似しないでしょう」
冒険者や傭兵という連中は、名分や評判を非常に気にする生き物だ。
一流クランの団長ともなれば、剣の腕が立ち、酒や博打に強く、
気前が良いと評判がなければ務まらない。
吝嗇だという評価の親分について行こうという子分が
いるものだろうか。
まして、俺は今や街の新人冒険者達の世話役的な立場になりつつある。
良くも悪くも評判を広げる立場にいるのだ。
それは解った上で、からかっていたのだろう。
ジルボアは真面目な顔に戻ると、俺に言った。
「報酬は、剣牙の兵団のジルボアの名にかけて、
十分に弾むことを約束しよう。
それでは、ケンジの言う未来を聞かせてもらおうか?」




