表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十九章 研究者と協力して冒険者を支援します

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

306/763

第305話 観察

ゴブリンは頭を殴れば気絶するので捕らえやすかった、とは捕獲に従事した団員の言葉だ。

通常の獣は首が短く頭を固定する筋力も強いので頭を殴っても、余程の衝撃を与えなければ気絶しないらしいが、ゴブリンのように人型で小柄な怪物は、脳震盪を起こすらしい。


鎖で手足を固められ気絶した状態で転がされているゴブリンは、緑と茶が入り混じった体毛と口の端から見える上向きの短い牙と相まって、大型のヒヒを思わせる。


「息は・・・しておるようだな」


気絶したゴブリンの胸が上下する様子を見ながら、男爵様が呟く。

手には細い金属製のペンと羊皮紙の束を持ち、早速絵を描き始めている。


「口の中が見たい」


との男爵様のリクエストを受けて、あたりに落ちていた棒を使って唇をめくると、不揃いな牙と歯茎が顕になる。

すると、男爵様は歯の本数を数え始めた。


「ゴブリンの頭蓋骨は持っておるのだがな、それと歯の本数が同じなのか確かめておかねばな」


「ははあ・・・」


歯の形状や本数は、種族を規定する重要な情報だ。この研究が進めば、落ちている歯の一本から種族や健康状況まで推定することができるようになるかもしれない。


「奥歯がみたい。これを使ってくれ」


と男爵様が差し出したのは、太い金属の棒だ。確かに、口の中を弄っている最中にゴブリンが目を覚まして噛み切られる可能性もあるので、理に適っている。


「男爵様、本当に準備がよろしいですね」


と、かけた言葉は、感心のあまり素に戻って少し不遜な言葉遣いになってしまったかもしれない。


「当たり前である!この機会をどれだけ待っていたと思っているのだ!ほれ、それより、もっと奥歯が見えるようにせい!」


そうして、ゴブリンの回りをグルグルと羊皮紙とペンを抱えたまま歩きまわっては座り、座っては俺に指示をして一通り外側からの観察を終えると、男爵様が言った。


「声が聞きたい。起こしてくれ」


ゴブリンに声を出させると、周囲の群れに助けを呼ぶ可能性もある。

そうなると厄介なので、普通の依頼では声を出せないように物陰から仕留めたり、遠距離から狙撃したりと工夫を凝らすものだ。

少し判断に迷って、この場で指揮をとっているスイベリーを見ると、スイベリーは黙って頷いた。

まあ、多少の援護が来たところで剣牙の兵団からするとなんということもないのだろう。

逃げ延びた連中を探しだす手間が減る、ぐらいに思っているのかもしれない。


団員が桶に運んできた水を逆さにして、気絶しているゴブリンにぶっかける。

すると、閉じられていた瞼がゆっくりと開き、頭蓋骨の割に大きい目と、縦に裂けた瞳が露わになった。

目脂が目につくが、意外とまつ毛が長い。


「夜目がきくというから、黒目が大きいと思ったのだが、そうでもないのだな・・・」


男爵様はジッとゴブリンの目を覗き込みながら言ったのだが、覗きこまれていたゴブリンは仰天したらしい。

「ギッ!!!」と叫ぶや跳ね起きようとして、手足を縛った鎖に阻まれて体を僅かに跳ねさせただけに終わった。

その状況が理解できないのか、ゴブリンが狂乱して縛られたままゴロゴロと転がろうとするところを、団員達が棒で押さえつける。


なんというか、この絵面は良くないな。

まるで弱いもの虐めをしているように見える。

実際、剣牙の兵団がゴブリン狩りをしている、という時点で弱い者虐めに違いないのだが、気分は良くない。


そんな俺の気分には一切構わず、男爵様はゴブリンの発する声を記録し続けている。

本日は18:00にも更新します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一二三書房様 庭に穴が出来た 特設ページです https://www.hifumi.co.jp/lineup/9784891998769  バナーは書籍の特設サイトです 

i252242/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ