第28話 団員の懊悩
だが、と俺は不審を覚えた。
これだけの腕の立つ連中が、引退者もでる深刻な負傷者を出した
戦闘とはどんなものだったのか?
一体、どれだけ怖ろしい怪物と戦ったのだろうか。
そう尋ねると、一様に苦虫を噛み潰したような顔になった。
「お貴族様の子守りのせいだよ」と一人が言った。
スイベリーが後を引き受けて言う。
「剣牙の兵団の戦い方は単純だ。開けた場所に敵を誘い出す。
正面から打ち破る。それだけだ。逆に、狭く入り組んだ場所、
足場の悪い戦場なんかは向いてねえ。
あとは、経験の偏りだな。最近は装備と戦い方が洗練され過ぎて、
怪物との戦闘がアッサリと終わり過ぎる。
そのせいで後から入ってきた新人の練度が上がらん。
訓練はしてるが、訓練は訓練。実戦には及ばん」
強くなりすぎて、練度があがらんとか、別次元の悩みだ。
「先日の依頼は、貴族からの依頼だった。森の中で人食巨人
の番が確認されたので、それを掃討するという話だった。
森の中は、剣牙の兵団に向いた戦場じゃねえし、人食巨人の番
程度では俺たちの獲物としては小物だ。
だが、団長は貴族からの依頼だから、と断らなかった。
そして、事前情報がことごとく間違っていた。森の野営予定地は
ゴブリン達の住処になってたし、そいつらを掃討している
最中に人食巨人が襲いかかってきた。
奇襲を受けて、クロスボウ隊から重傷者を出しちまった。
まあ、今回は運が悪かったとも言えるが、
似たような貴族からの依頼が多い。
最近は、無茶な仕事が多いんだ。依頼料は多いんだが、負傷者も多い」
「貴族の依頼ってのが、どうも気に入らねえ」とゴツイ団員が
零した。
「・・・団長は貴族になりたいのかなあ」と顔に傷のある団員が、
ポツリと言う。
他の団員達も、似たような文句を口々に言う。
スイベリーの話と、団員達の話を聞いて、俺には大体の問題点が
わかってきたように思う。
だが、確認するためには団長のジルボアに会って
話をする必要がある。
「お宅らの団長に、会わせてもらえるかい?」と俺はスイベリーに尋ねた。




