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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十六章 事業を拡大して冒険者を支援します:販売管理編

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第253話 スープの味

そうして職人達からも細かな日程短縮のためのアイディアをあげてもらった結果。


作業日程は55日まで短縮された。


「何とかなりそうね」


と、サラがほっとしたように言う。

確かに、理論上は間に合うように見える。それだけでも、最初の状況からは大きな進歩だ。

だが2カ月近い期間の作業を、全くミスなく遅延なくやり切ることは不可能だ。

だから、管理者としては仕事で絶対に遅れてはいけない作業と、少し余裕のある作業の区別を意識して管理する必要がある。


前者の作業としては、靴の製造だ。靴の製造が遅れれば遅れるだけ、納品全体が遅れてしまう。

後者の作業としては、先のパズルで先にやってしまえる作業に分類された作業だ。木箱や香油の調達が1日2日遅れたとしても、納品全体の日程には影響を与えない。


前者にあたる作業をクリティカル・パスという。このクリティカル・パスにあたる作業の期間を短くできればできるほど、全体の納品を短くできるわけだ。


もちろん、そんな言葉を使ったところで職人達に伝わるはずもないので、もう一段、知恵を絞る必要がある。


「もう一度、このパズルを見てくれ。一番長い仕事タスクの繋がる部分があるだろう」


木片を用いたパズルでは、クリティカル・パスにあたる作業は全て一本の作業の繋がりに見えるよう集中させてある。普通の業務フローだと担当部署などで分類するのだが、それよりもわかりやすさを優先した形だ。


「ここの木片タスクが短くなると、全体の納品が短くなる。それは見てわかるな?」


そう言うと、今やすっかりパズルの専門家になった職人達は頷いた。

職人達にとって、仕事の全体像が手を動かしながら理解できる体験というのは、非常に濃い経験となったようだ。


俺は説明を続ける。


「だから、ここの作業だけは絶対にミスをせず、遅れないようにしてくれ。そして、遅れそうなら俺を含め周囲に助けを求めて欲しい。周りのみんなも、この作業に関わる仕事については最優先だ、という意識を持ってほしい」


そう言って周りを見渡すと、職人達は頷いた。


「よし、じゃあ仕事を始めよう!」


そうして、俺が合図すると弾かれたように各自が分担された仕事に向かっていったのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


俺は事務所に戻り、聖職者の足型を取る依頼を出す準備を始めた。


この依頼を受けるのは農民あがりの冒険者達だから、ただ任せただけでは酷いことになるだろう。

こちらで、可能な限り精度をあげる仕組みを考えたうえで依頼を出さなければならない。


そうしてチェックの体制や、足型を取る道具の形状と手配などを板にメモしていると、サラが話しかけてきた。


「ねえケンジ、この街の100人の司祭様から足型を集めても、別の街の司祭様を含めた300人には届かないでしょ?それってどうするの?」


なるほど。この世界の人間が統計的な教育を受けているはずもないので、これは俺の説明不足だった。

できるだけ、サラの関心が引ける事例で説明を試みる。


「サラは、肉の入ったスープが好きだろ?」


「えっ?なによ、急に。そりゃあ、好きよ。だって美味しいじゃない」


「スープの味を確かめるとき、大鍋から大きいスプーンで掬った時と、小さいスプーンで掬った時って、味が違うと思うか?」


「そんなの、一緒に決まってるじゃない」


「それってどうして?」


俺が聞くと、サラは腕を組んで一瞬考え込んだ後、答えた。


「だって、スープなんだから、どこを掬っても、中の塩とか肉の味とか一緒に決まってるじゃない」


「そうだな。よくまざったスープなら、どこを掬っても同じ味になる」


「でしょう?それで、これが靴とどう関係があるの?」


サラの疑問に、俺は答える。


「スープを人間の集団に置き換えて考えてみるんだ。この王国には、聖職者の司祭様は、きっと数千人ぐらいはいるはずだろ?」


「そうね、私もよく知らないけど、それくらいいるかもしれないわね」


「それが、大きな鍋に入ったスープさ。そこから大きなスプーンで300人分を掬っても、小さなスプーンで100人分を掬っても、味は同じになるはずだろ?」


「・・・そうね、司祭様をスープにしたりはしないけど、同じ感じになるかもしれないわね」


「つまり、100人分の足のサイズを測ってしまえば、300人の足のサイズを測ったのと同じことになる」


「そう、なるのね。そうか、そうね。・・・なんか、あたし騙されてない?」


俺は声をだして笑って言った。


「騙したりしないよ、なにしろ命がかかってるからな。守護の靴だって、同じように駆け出し冒険者の足型を測ってただろう?人間の足の形とかサイズなんて、同じような暮らしをしていれば、あまり変わらないものさ。農民なら農民、戦士なら戦士、聖職者なら聖職者。裸足の人は足幅が広くて足裏の皮が厚く、あまり歩かない人は皮が薄く、幅が狭く、甲も低くなる。


その性質を、スープの味に例えて説明したんだ。だから、司祭様100人の足のサイズを測れば、どの大きさのサイズをどれだけ作ればいいのか、全体の傾向がつかめる。そうすれば300人全員の足を測ることなく、先に靴を作れるだろ?」


「・・・ケンジって、ほんっと、変なこと知ってんのね」


サラは何度目になるかもわからない、呆れた声で褒めてくれた。

本日の内容もややこしいので、一旦ここで切ります。


明日の更新は18:00と22:00を予定しています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 先の、枢機卿のために作った靴の予備をその場で履き比べてもらい、履き心地がいい条件の靴を選んでもらうのかと思いました。 (足型取りセットの準備不要、冒険者100人→9人、文集作りのような流れ作…
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