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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十五章 事業を拡大して冒険者を支援します:危機管理編
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第240話 納品

枢機卿向けの靴は、全部で20足作成した。


枢機卿の足型粘土は、結局届けられなかったので、図面やサンプル靴から推測できる足長以外は、こちらで推測するしかなかった。


足幅については、枢機卿と同じような生活を送っているであろう聖職者の足型をとらせてもらい、3パターンを作成した。

また、甲の高さについても、同様に3パターンで、9足が1セットとなる。

これを2セット作成し、2足は予備である。

うち、1セットを剣牙の兵団の事務所で保管し、1セットを会社うちの事務所で保管する。


これで、一応は納品の体制が整ったことになる。


そうして教会のミケリーノ助祭に連絡を取ったところ、2日後に聖堂の一室で会えることになった。

ミケリーノ助祭は、最後に会った顔色の悪かった時よりは、だいぶマシな顔色になっていた。

むしろ、ここ数日間、事務所に籠りきりだった俺の方が、顔色が悪いかもしれない。

いつものように椅子を勧められて俺が座り、サラとキリクが背後に立つと、ミケリーノ助祭は怪訝な顔をした。

いつもは、俺とサラだけが室内に残り、護衛のキリクは室外で待機していたからだ。


「何か、ありましたか」


そう問われたので、ここ数日、どこかの貴族に雇われた魔術師に狙われていたこと、それを退けたことを報告した。


「・・・それは!ケンジさん、よくご無事でしたね。たしか、あなたのところには魔術が使える人間はいませんでしたよね」


と、ミケリーノ助祭は驚いた後、確認してきた。


「ええ。それほど裕福でも、身分があるわけでもありませんのでね。ですが、頼りになる仲間は大勢いることが確認できました」


俺は、笑みを浮かべて答えた。


「私共が迂闊でした。幾人かの名前は浮かびますが、まさか、そこまでするとは・・・」


と、ミケリーノ助祭は絶句していた。


「1度は私共でも退けることができました。ですが、今後は、こういったことのないよう手を打っていただけませんでしょうか」


俺がミケリーノ助祭に、今後の保護を依頼すると、彼は力強く頷いた。


「わかりました。今後については、ニコロ司祭と図りまして、手を打ちましょう」


考えていたよりも、ミケリーノ助祭は協力的だった。こんなことなら、もう少し早めに相談しても良かった。

俺の意外そうな表情を見てたからか、ミケリーノ助祭は続けた。


「魔術師まで用いて枢機卿への献上品を妨害するとは、教会への叛意を表すことと同じです。必ず、厳正な調査と相応の処罰を約束しましょう」


どうも魔術師を用いたことが、教会関係者を激怒させているようだ。

妨害行為と言えば、サイズの異なる図面やサンプルを送りつけてきた工房も同じことだと思うのだが、それとこれとは全く違うらしい。

そのあたりの感覚は、どうもよくわからない。


「ところで、靴の納品についでですが・・・」


と、今日の訪問の本題について話題を変えると、ミケリーノ助祭の顔は喜色に輝いた。


「おお!できあがりましたか」


俺はサラに合図して、木の箱に入り、布に包まれた開拓者の靴を取り出す。


「こちらが、その1足になります」


「ほう・・・」


ゴルゴゴが心血を注いで作成した開拓者の靴は、仕上げこそやや丁寧であったが、どこまでも標準品の開拓者の靴だった。

それでも、よく磨き上げられ、きっちりと縫い上げられた革の靴は、その機能的な形状と軽やかな配色と相まって、時代を先取りした精神を感じさせる。まあ、実際、靴の歴史を数百年は先どった洗練された技術が詰め込まれているわけだが。

その出来は、十分にミケリーノ助祭を満足させたらしい。


「こちらは、数多く作った中の予備でございます。これと微妙にサイズや形状を変えたものを9足、用意してございます」


そう説明すると、ミケリーノ助祭は目を見開いて言った。


「それはまた!なぜですか?」


どうも、この世界の人は靴の形状やサイズについて無頓着でいけない。

ミケリーノ助祭に守護の靴を送り、それは気に入ってもらえてはいたが、なぜ快適なのか、までは追及しなかったらしい。


「私の故郷では、足は第二の心臓などと申します。足にピッタリと合ったサイズの靴は、よく気の合う夫婦めおとと巡り合うようなものだ、ともいいます。それくらい実際の足と靴には相性というものが重要なのです。私の身分では枢機卿様の足を直接に測るわけにはいきませんので、数を用意させていただきました。その中から、最も相性の良いものを選んでいただけたら、と考えているのです」


そう説明すると、ミケリーノ助祭は頷いた後で続けた。


「なかなか、殊勝な心掛けです。それで、本体の納品は、いつ頃になりますか?」


「そこも、本日、相談させていただきたかった点です。納品はいつでもできるのですが、警備体制を見直さないことには、またいつ襲撃があるものか気がかりで・・・」


と、襲撃の懸念について述べた。


「なるほど、ないとは言えませんね」


ミケリーノ助祭は、そう言って腕を組んで悩みだした。

教会には実働部隊がいないので、どうやって保護をしたものか悩んでいるのだろう。


「いっそ、派手にやるというのはどうでしょうか?」


俺がそう持ち掛けると、ミケリーノ助祭は目を瞬いた。

明日も18:00と22:00に更新します

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