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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十五章 事業を拡大して冒険者を支援します:危機管理編

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第235話 見えない手

その日も、剣牙の兵団まで警備の相談に行った後、会社に戻る途中の2等街区と3等街区を結ぶ人通りの多い道で、俺は、ふと足を止めた。

隣を歩いていたサラが、俺の顔を覗き込んで尋ねる。


「どうしたの?」


そう聞かれたので、俺は答えた。


「ちょっと用事を思い出したんでね、少し寄って行くよ」


「ふうん。どこに行くの?」


「ああ、ちょっとそこまでだから、大丈夫だよ」


俺が答えると、サラが少し離れた位置で護衛をしているキリクに声をかける。


「ちょっと待ってね。キリク!ケンジが出かけるから準備して!」


サラの奴、何だか大袈裟だな。俺があまりに心配させ過ぎたからだろうか?

ちょっとそこまで行くだけなのに。


「いや、ちょっとそこまでだから、1人で大丈夫だよ」


そう言って、たしなめたのだが、サラは納得しない。


「だって、1人で出かけたら危ないでしょ?自分でも、1人で行動したら絶対にダメって言ってたじゃない」


サラが、今日は妙に頑固だ。心配することなど、ないというのに。


「そうだっけ?まあ、だけど大丈夫だよ」


俺は辛抱強くサラをなだめた。

だが、それでもサラは考えを変えずに、俺を問い詰める。


「なにが大丈夫なの?どこに行くつもりのなの?」


「いや、だからその・・・」


と説明しかけて、俺は自分でどこに行こうとしていたのか、わからないことに気がついた。


「ええと・・・」


なんだ、これ。なにが起きている?

俺は、何をしようとしていたんだ?


俺の様子が妙なことに気がついたのか、サラが護衛のキリクを呼んだ。


「キリク!警戒して!ケンジ、事務所に戻るわよ。走れる?」


「あ、ああ。問題ない」


昼日中の街中で、人通りも多いのだが、キリクとサラは剣を抜いて、俺を挟むようにして小走りに走り出した。


会社までの道のりは、ほんの数分だったのかもしれないが、半時間は走り通しだったように、俺は汗だくになって会社の事務所に駆け込んだ。


「全員、警戒して!魔術師よ!」


サラが、叫んだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


それから、会社は大騒ぎになった。

全ての窓と出入口を閉じ、職人達は事務所と工房の中を棒で叩いて回った。

剣牙の兵団から来た護衛達は、交代要員も起き出して、2人が外で、2人が中で警備をしている。


俺はドアが閉じられた事務所の奥で椅子に座らされて、サラとキリクから尋問された。


「それで、何があったの?」


そう聞かれても、答えようがない。


「いや、俺にも何がなんだか。別に何もなかった、としか思えないんだ」


「だけど、あなた変だったわよ?」


サラは追及するが、俺も言葉にしようがない。


「そう言われると、そうなんだが・・・」


キリクは珍しく肩を落としていた。


「俺の責任だ。おそらく人混みの中で魔術を使われたんだ。それに気がつかなかった」


確かに護衛としての責任を言えば、そうだろう。

もし使われた魔術が致死性のものであれば、俺は今頃死んでいた。

だから、単純に慰めることはできない。


「まあな。だが、俺も甘かった。まさか、昼日中に堂々と襲撃してくるとは・・・」


思っていたよりも相手は本気で、仕掛けも早かった。そういうことだ。


「それにしても、その、魔術師は何をするつもりだったのかしら?」


サラが疑問を投げかける。


「とにかく、俺を動かして1人になる状況を作りたかったんだろう。俺を1人にしてしまえば、殺すなり、誘拐するなり生殺与奪も思いのままだと思ったんじゃないか。死体も出ないし、証拠は残らない。逆に、俺が自分でいなくなった、という証拠は残る。誘拐された、と主張しても相手にされないだろう。うまく考えたものさ」


俺は、どことなく他人事のような気持ちで、推量してみせた。

ついさっき、誘拐され死にそうになったのだが、まるで実感が湧かないせいか、恐怖はなかった。


「だって・・・死ぬところだったのよ!それも、どこに消えたのかもわからないように!許せない!」


サラは唇を噛んで、青い顔で震えていた。

本日は18:00にも更新します

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