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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十三章 事業を拡大して冒険者を支援します:事業計画編
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第199話 画期的な仕組み

俺が切り出すと、ミケリーノ助祭は聞く姿勢になった。


「相談ですね。お聞きしましょう」


「この開拓者の為の靴についてですが、これには2つの画期的な点があると考えております」


「2つの画期的な点ですか。履き心地だけでも、十分に画期的ですがね」


「ありがとうございます。私が申し上げたいのは、靴そのものではなく、仕組みとして画期的な点であり、それは教会にとっても利益になる筈である、ということを申し上げたく思うのです」


俺は説明を続けた。


「1つは、この靴の価格構成です。この靴には守護の靴に様々な改良を加えて作られております。この靴を履くことにより、教会や貴族様方の開拓事業は、飛躍的に進むこととなるでしょう。

それだけの工夫を施しておりますが、工夫の結果として、この靴は守護の靴よりも安価に製造することができるのです。もちろん、教会の方で安定して大量に購入いただけるのであれば、ということですが」


「ほほう。それは素晴らしいですね」


「ありがとうございます。ここからが仕組みの話です。その安価に製造することで生まれた利益を、私は農村の孤児たちのために使おうと考えております。

私は、ミケリーノ様と同道した、あの農村の光景を忘れておりません。

困窮し、我が子を売らなければ季節を乗り切れない農婦の嘆きを忘れるわけにはいきません。

この靴を販売することで得られる利益の一部は、農村を支援するために使いたいのです」


「なるほど、あの農村からの帰り道の話を、憶えていて下さったのですね」


そう言ってミケリーノ助祭は微笑んだ。


「そうです。そうして利益を農村のために使用していることを証明する印を、靴に頂きたいのです」


「ほほう、靴に」


「はい。そうです」


「それは教会の利益になるのですか?」


「なります。それが2つ目の画期的な仕組みです。私は、そうして浮いた分の利益が寄付された財産を管理する部門を、教会に設けていただくのはどうか、と考えているのです」


「新しい部門」


そう繰り返したミケリーノ助祭の目は、真剣さが一段増した。


「そうです。新しい部門です。これまでも教会に様々な方々が寄付をされてきたことと思います。その多くは領地からの喜捨を除けば、土地の所有権移転や葬祭に関する手間賃とでも言うべきものであったのではないでしょうか」


「なかなか、詳しいですね。まあ、あなたのことですから、今さら驚きはありませんが」


「ありがとうございます。今回の靴の売却金額に寄付が連動する方式の特徴は、寄付が靴の販売数量に応じて行われることです。そして、基本的に教会の方に動いていただく必要はない収入なのです」


要するに靴の販売事業を、教会組織にとっての不労所得にするということである。

今まで領地経営や事務代行で稼いでいた教会組織に、知的資産で稼ぐ道を教える、という大きな意味がある。

考え込むミケリーノ助祭に、俺は続けて説明する。


「もちろん、農村のために幾ら使用したのか、使途と金額を完全に公開します。教会全体の財務を公開するという話になると、裁可を得るのが非常に難しくなるでしょう。そのために、小回りの利く専門の部門を立ち上げてはいかがか、と申し上げたいのです」


要するに知的資産で稼ぐ道とセットで、それを管理する公益財団を設立してはどうか、というのが俺の提案である。公益財団には管理者として教会から人員が派遣されることになるだろう。所謂、天下りである。教会は巨大な官僚機構であるから、出世競争のポストができることには大賛成である。

こうやって、組織の出世の仕組みと靴を売り上げることを結びつけるのだ。


俺の考えを聞いたミケリーノ司祭は目を瞬いた後、大きく微笑んだ。


「ケンジさんの殊勝で画期的なお考えを、ニコロ司祭は、きっとお喜びになることでしょう。早速、連絡をとることにしましょう」


どの道、いつかはこの種の団体ができる。そうであれば、俺が先例を作って設立に協力し、規約や会計を公開する仕組みを作って、汚職が入る隙をなくしてしまう方がマシだ。


上機嫌のミケリーノ助祭に、本命の相談を持ちかけた。


「それで、もう一つご相談なのですが枢機卿に、この靴を履いていただくことはできないでしょうか?」


ミケリーノ助祭の笑顔は硬直した。

22:00間に合いました。

明日は18:00に更新します。

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