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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十三章 事業を拡大して冒険者を支援します:事業計画編

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第188話 墓参りの午後

司祭に断って、墓碑に近づいて石材の表面を撫でる。指先から温度と共に伝わる石材の滑らかな表面は、かなりの腕の職人が時間をかけて磨いたことを示している。つまり、資金かねがかかっているということだ。


「かなり良い石材ものを用意していただけたようですね。ありがたいことです」


資金が全てとは言わないが、この際は教会が冒険者を活用した開拓事業に本腰を入れていることを示す意味もあるのだろう。俺は素直に司祭に礼を言う。


「神の加護が、とりわけ多く必要な仕事をしているのです。私は、冒険者の方たちのための墓碑が造られたことは、良いことだと思っていますよ」


街中の生誕名簿に登録されずとも、人は人である。この司祭も冒険者と日々、接することで、その当たり前のことが尊重されるようになったのを喜んでくれている。ありがたいことだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


3等街区の教会を辞して歩いていると、サラが声をかけてきた。


「ケンジ、良かったね」


「ああ。そうだな」


「これで、みんなも天国に行けるかな」


俺が墓碑を調べてる間、サラは元のパーティーメンバーの名が石碑に刻まれているか確認していたのだろう。


「そうだな。きっと行けるさ」


「また来ようね、ケンジ」


「そうだな」


サラは、そう言いながら静かに泣いていた。静かにすすり上げながら、右手を伸ばしてきたので左手で、手を握ってやると、黙って手を引かれる。

普段は何かと茶化すばかりの護衛のキリクも、この時ばかりは少し距離を置いてついてきた。


いい年をした男が泣いている女の手を引いている姿は、なにかと外聞が悪い。


それでも、そこで手を放す程に世慣れない年齢でもないので、適当な店先の軒を借りて座り、茶と軽食を注文する。


3等街区の貧乏人を相手にしている店ではあるが、教会の近所は3等街区の中では、そこそこの1等地である。

墓参りに来る地元民向けだろう店で出された茶と軽食は、食べられる味だった。

俺もサラも1年前は貧乏冒険者で懐を寒くしていた身であるし、最近はマシになったとは言え舌がそれ程に肥えているわけでもない。

だが、パンを一口かじったサラは声をあげた。


「あれ、このパンと干し無花果いちじくけっこう美味しい。あと胡桃くるみも」


「そうだな。俺としては別々にせずに、パンに練り込んである方が好みだが」


パンと言っても、3等街区で出されるパンは現代のパンのように焼き立てで白く膨らんだそれではない。

安価な黒パンで、クッキーか、と思うほどに焼き締めてある。

一緒に出された薄い野菜のスープに浸しながら食べるのだが、この店ではパンの甘味を補うためか、干し無花果と胡桃がついてきたのだ。もっとも、俺がそう思うだけで全く別の種類の植物である可能性は否定できないのだが。


「白いパンに木の実を練り込むの?せっかくの柔らかいパンに!ぜいたくー!白パンは、白いだけで贅沢なのに、それに干果物ドライフルーツをいれるなんて!・・・今度、パン屋さんにお願いしてみようかな」


「そうだな。俺の故郷じゃ、白いパンにハムやチーズを挟んで食べたものだが」


俺が思わずそう言うと


「ハムとかチーズなんて、冬籠りで家畜を絞める農家じゃないと普通は手に入らないでしょ?ケンジ、実は農家だったの?それとも白いパンが食べられるなんて、やっぱり大きい商人か貴族様の生まれだったの?」


サラが不思議そうに聞いてきた。

白いパンが食べられるから貴族、という農村丸出しの思考はどうかと思うが、この家畜が手に入りにくい世界で普通の農民がハムを食べる機会が限られているのは確かだ。

これが腸詰になると、くず肉や血の塊を詰めたものも出回っているので、街に住んでいれば、もう少し手に入りやすい。


不用意な発言だったかもしれない。

俺が護衛のキリクもいるので、どう説明したものか少し言葉に詰まっていると


「なんか泣いたらお腹空いてきちゃった!腸詰とエールある?」


とサラがキリクも含めた3人分の料理と酒を注文して、日の高いうちから、すっかり宴会になってしまった。


まあ、靴の事業で儲かってはいるわけだし、たまには、こういう日があってもいいか。

明日は所用のため22:00更新は難しいかもしれません

18:00は更新します

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― 新着の感想 ―
[一言] ケンジの謎に対する周辺人の視点でのストーリーがちょっと気になりますね
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