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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十三章 事業を拡大して冒険者を支援します:事業計画編
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第187話 教会の墓碑

「少し相談があるのですが」


ある程度、話が済んだところで教会の司祭に話を持ちかける。

司祭が教会に報告している内容を修正した上で、冒険者ギルドにも共有して欲しい、ということだ。

その目的については書式を説明した時に理解してもらえたようなので、あとは教会内の手続きについて質問しているわけだ。


「そうですね。最終的にはニコロ司祭の許可を取る必要があるでしょう。教会が得た情報は教会の財産です。それを提供するわけですから、教会にも何かのメリットがないと認められないでしょう」


俺は頷く。情報には価値がある。まして、その情報も無償で手に入れたものではない。当然のことだ。


「どの程度の対価が必要でしょう?報告書作成には、どの程度の労力をかけていらっしゃいますか」


これは、要するに報告書作成の大変さ、という原価を聞いている。

報告書に、どの程度の価格をつけるか、その予備交渉というところだ。

教会は、報告書を共有することで得られる利益を元に、高値をつける。

俺は、報告書を作成するのにかかる原価を元に、低値をつける。

そういうものだ。


「報告書は基本的には治療した冒険者の名前、負傷箇所、使用した触媒の種類と数、冒険者の喜捨を一覧化したものですね」


そう言いながら、司祭は報告書を見せてくれた。

羊皮紙ではあるが罫線が引かれており、その表に数字が一覧化されている。

この形式は、見たことがある。


「最近、中央で流行りだした書式でしてね。とても便利なんですよ」


そう言って、自慢げに笑顔で司祭が教えてくれた。


「そ、そうなんですか、はは・・・」


と意表をつかれて俺は苦笑いで応えてしまった。

ニコロ司祭め、さすがである。この世界の人間の知能が低いわけではないので、いずれは普及するものと思ってはいたが、それにしても動きが早い。

それを受け取り、少し表に欄を加える。


「こうしてですね。負傷要因を縦に並べますから、そこにチェックを入れて欲しいんですけど」


「なるほど、これなら、かかる時間に変わりはないですね。そうすると、報告書を写す手間だけですから、それほどの労力ではないでしょう」


司祭は現場にいて、実際に組織間の利益調整をする立場ではないから、こちらの欲しい言葉をホイホイと言ってくれる。

素直な司祭の態度に、少しばかり後ろめたいが、俺はニコロ司祭と交渉する羽目になった時のために、その言葉をありがたく憶えておくことにする。


「それと、もしよろしければ冒険者のための墓地を見学させていただきたいのですが・・・」


と申し出ると司祭は快く了承してくれた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


冒険者のための共同墓地は、教会の敷地の隅に、思ったよりも大きな空間を取って設けられていた。

横幅は大男が両手を広げたよりも大きいぐらい、高さは人の腰の高さ程の、石碑のような造りになっている。

この壁のような造りの墓碑はアメリカに旅行に行ったときに見たことがある。

戦死者を弔うための石碑だ。


墓碑は表面が綺麗に磨き上げられた黒い石材で、墓碑には「世界を拓く者達、ここに眠る」と彫り込まれている。さらに小さな字で亡くなった冒険者の名前も記されている。

墓碑の前には、誰が置いたのか小さな花束が幾つか置かれている。

冒険者のようなムサイ連中に思いつくこととは思えないので、亡くなった冒険者の近しい女性が故人を偲んでのことだろうか。


冒険者の墓碑は、午後の穏やかな日光を浴びて静かな佇まいを見せていた。

本日は22:00にも更新します

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