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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十三章 事業を拡大して冒険者を支援します:事業計画編

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第185話 ウルバノへの報告

ウルバノ、あの仕事のできないギルドの二重顎は、どうしているだろうか。


ギルドの二階に通されて久しぶりに会うウルバノは、随分と様子が違っていた。

まず、取り巻きが減っていた。

それに、服につける装飾品が減っていた。

体形は服に隠れてよくわからないが、心なしかスッキリしている気もする。

顔が引き締まっているだろうか。

なにより、その表情が最初に会ったころとは随分と違う。


「おお、ケンジ久しぶりだの」


「お久しぶりでございます、ウルバノ様」


ウルバノからの挨拶も普通だ。

以前は、いかにも仕事に無関心な風であったのに、ずいぶんと変わったものだ。


「今日は、ニコロ司祭様より仰せつかりました教会との共同事業について、改めてご報告に参りました」


「おお、教会の件であるか。ニコロ司祭からは伺っておるが、実務はそなたが説明を受けたのであったな。うむ、報告するが良い」


事実としては、ニコロ司祭と俺の間で話がついたことであるが、ウルバノの頭の中では、話をつけたのは自分で、実務のみを俺に投げたことになっているらしい。それで別に問題はないので、訂正はしない。


「教会との間で、死亡した冒険者については教会敷地の共同墓地に葬られるということになっておりますが、そのための名簿管理と葬儀日程の管理につきましては、こちらで取りまとめさせていただくことになっております」


「うむ。それは知ってる。それが何か?」


それが何か、と言ってしまうからウルバノはウルバノなのだが、そこに文句はない。


共同墓地が設けられ、亡くなった冒険者を葬ることができるようになったと言っても、使用が無制限に許されたわけではない。生前に使用していた武具や遺体を土葬することなどがあれば、土地の限られた街中の墓地などすぐに溢れてしまう。そのあたり、農村出身者の多い冒険者と街中の葬儀では習慣が異なるので、教会で説明を受けさせる必要があるのだ。


また、教会で対応できる人員も限られているので、名簿や日程についても打ち合わせ、ある程度の予算や人員についてすり合わせる必要もある。

本来的には冒険者ギルドの仕事ではあるが、俺は冒険者の死亡原因を調査したいので、報告書作成のため、という名目で業務を引き受けてしまうようにしている。


「教会で行っている冒険者の治療についても、効果が上がっていると聞いております。そのあたりについても、近いうちに、ご報告させていただけると思います。」


また、負傷した冒険者は有償ではあるが以前よりも手軽に教会で負傷の治療を受けることが可能になった。

手軽に、というのは冒険者ギルドに所属していれば紹介料の必要がなく治療を受けられるという意味なので、安価に、ということでもある。


以前は、負傷した後で教会の治療魔法を使用できる聖職者の紹介を受け、そうして治療してもらうまでに数日かかることもザラだった。

その数日の間に、負傷部位が悪化したり、容体が悪化して死ぬことも、ままあったわけで冒険者の生存率は大きく向上している筈なのだ。


これについても、報告書作成の名目で以前の冒険者の生存率を数字で押さえられたのは大きい。教会の治療が如何に冒険者の生存率の向上に貢献しているか、比較することで、数字を示すことができるからだ。


開拓事業推進のための人手が不足している現在、冒険者治療の効果を数字で示すことができれば、治療費について割引や冒険者の為の補助金が検討される可能性もある。


これは次回の報告書に、ぜひともコッソリと忍び込ませたい項目だ。


「まあ、そうであるな。冒険者の者ども、教会へのお布施を増やしているそうではないか。まったく、ギルドへの上納を増やせばいいものを」


教会への治療費とは別に、お布施を増やしているということだろう。

確かに、自分達を名簿からも排斥していた教会が、有償ではあるが治療してくれて、死んだときは墓地に葬ってもくれるようになった。農村から出てきた根無し草だった冒険者にとっては、それはとても大きいことだろう。

大きな図体をして無学で粗野な連中だが、皆、とても若いのだ。まだ子供のような年齢の奴らもいる。

どれだけ粋がってみても、どれほど不安なことだろうか。生死のかかる仕事を日常的にしていて、不安を感じない人間などいない。


ウルバノの愚痴にあいまいに返事をしつつ、冒険者達の日常に、ささやかな救いがあることを祈らずにはいられなかった。

本日は22:00にも更新します

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