第18話 経営支援の形
あのさ、とサラが少し躊躇うように切り出してきた。
「あんた、なんで冒険者に靴を売りたがるの?そんなに、いい靴なら軍隊とか王宮とか偉い人に売ればいいじゃん」
「あんな奴らには売らん。正確には売れないし、売りたくない。
それに、冒険者に靴を売るのは、奴らにもっと儲かるように
なって欲しいからだ」
説明が不足していたようなので、サラにわかるよう補足する。
「まず、軍隊には、今は売れない。軍隊への納品は巨大な利権だ。
俺みたいな根無し草が、突っ込んでいける話じゃない。
簀巻きにされて、河に浮かんじまうよ」
それに、この靴は冒険者のように足で稼ぐ人間に売るべきものだ。
この靴を履けば、依頼地までに怪我をする可能性が減るし、
疲労が少ないから移動時間も減る。
移動に4日かかるところが、3日で済む。
怪我をして休んだり、薬草を使ったりする必要がなくなる。
結果として、1年間でみたら依頼をこなせる件数は3割は増える。
成功率だって高くなる。出費も減る」
「この靴は、冒険を成功に導く靴なんだ。
これは、俺なりの新米冒険者パーティーへの経営支援の形なんだよ」
と、熱弁した自分が恥ずかしくなったので口を噤んだ。
サラは、目に悪戯っぽい光をたたえて、口を開いた。
「あんたの靴が役に立ちそうなのはわかった!あとは売り方を考えようか!あたしも一杯売ってあげる!」
「それで、銅貨をもっと稼ぐんだろ?」と照れ隠しで言うと
「あったりまえじゃん!!一杯かせごうよ!!」
と、満面の笑顔でサラは応えた。




