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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十二章 事業を拡大して冒険者を支援します:意思決定編

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第178話 折り合いをつけろ

常宿を出たが、外をグールジンの手下に囲まれることなく、無事に2等街区まで戻って来ることができた。


「ここまで来れば、まあ大丈夫だろう」


と俺が言うと、スイベリーが鋭い眼で尋ねてきた。


「あれで良かったのか」


あれ、とはグールジンに流通の取りまとめのような役割を振ったことについてだろう。


「よくわからねえが、あいつが集めた仲間と徒党を組むようになったら厄介なことにならねえか」


グールジンは、従順な性格とはとても言えない。

スイベリーからすると、何かしら将来のトラブルの種になるように見えているのかもしれない。


「俺はあいつに徒党を組んで欲しいんだよ」


そう言うと、スイベリーは、わけが解らないという顔をしたので説明する。


「街間商人の隊商キャラバンは、もっと徒党を組んで大きくなるべきだ。このままだと、会社うちだけが強くなり過ぎる。製造が強くなる分、流通にも強くなって安定してもらわないと、産業の健全な発展を阻害するだろう?」


だがスイベリーは首をひねるばかりで納得がいかないようだ。


「よくわからねえな。相手が小さい方が言うことを聞かせやすいじゃねえか」


実に傭兵らしい、そして冒険者らしい答えだ。


「これはね、俺とグールジンがお互いを倒すための戦いじゃないんだ。倒すべき相手は、王国の仕組みだとか、街の商人の特権だとか、大自然の天候や怪物の脅威とか、そういった目に見えない連中なのさ。だから、俺達は両方とも大きく、強くなる必要がある。グールジンにも徒党を組んで、俺が苦労する楽しさを知ってもらいたいのさ」


そう言って笑うと、スイベリーは顔をしかめた。


「俺は、以前に剣牙の兵団の副長にお前を誘ったことがあったな」


「ああ、あったな」


「今は、あれはとんでもねえミスだと思ってるぜ」


「確かに腕は足りないな」


俺は笑ったが、スイベリーは真剣だった。


「お前は傭兵団の副長に納まるたまじゃねえ。なんて言っていいか、俺みたいに学がねえ人間には判らねえが、最近のお前は団長と同じ匂いがするぜ」


「よせよ、ジルボアと並ぶ人間なんているかよ」


あまり買い被られては迷惑だ。

この話題があまり続くのも危険な気がしたので、別の話題を振ることにした。


「そう言えば、お前はどうなんだ。剣牙の兵団の留守部隊で団長をやってるって話だが」


俺の話題の切り替え方はいかにも苦しかったが、スイベリーは特に追及する気もなかったらしく、それに乗ってくれた。


「まあ苦労してるさ。団長の下でやってたのとは、まるで違うもんだな。小さくても集団のトップに立つってのはしんどいもんだ。おまけに金勘定の計算とかな、苦労してるぜ。

嫁さんの実家から商人あがりの連中を貸してもらってるから、そこは楽をしてるがな」


「嫁さんね、お前もすっかり所帯持ちだな」


「おいおい、結婚しろっつったのはお前じゃねえか。団長室の商家の娘がいるところで、大声でお前が宣伝したせいで、あの後は申し込みが殺到して大変だったぜ」


「なんだ?自慢か?」


「そうじゃねえよ。前から団長のところには嫁入りの話が殺到してたからな。俺のところに来る話は、ついでのお零れみたいなもんだ。それよりもよ、お前、あの赤毛のサラって嬢ちゃん、どうすんだよ」


「そりゃあ、時期がきたら、そうするさ。だがな、今も命を狙われて1人でおちおち歩けない身だ。もう少し安心できるようにならないと、そういう話は難しいだろうな」


いつものように答えると、スイベリーは鼻を鳴らした。


「ふん、どうかな。お前が安心できるようになる日なんて来るのかね。俺達のような冒険者が怪物と戦う毎日から離れられないように、お前だって商売を続ける限り、国の決まりや今までのやり方と揉めなくなる日は来ねえのかもしれねえぞ。適当に折り合いをつけて、開き直らねえとな」


そう言われて、何とはなしに、俺はジッと掌を見た。


安心できる日常を取り戻したらその時に、と自分に言い聞かせて走り続けてきたわけだが、ひょっとすると今の状態こそが日常になっているのかもしれなかった。


折り合いをつけるか。そうかもしれないな。


会社の事務所に向かって歩きながら、スイベリーに言われたことをじっと考え続けていた。

明日も18:00と22:00に更新します。

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