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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十二章 事業を拡大して冒険者を支援します:意思決定編
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第168話 工場を建てる理由

サラとの問答は続く。


「パンを焼くみたいにたくさん靴をつくったら、街の靴工房はどうなっちゃうの?」


サラが工場が稼働した時に心配となる点をあげてきた。

まあ、そりゃあ心配になるよな。


「靴が売れなくなってつぶれるかもな。そうしたら会社うちで雇うよ」


俺はあっさりと答える。


「靴ギルドの人達は、怒るんじゃないの?」


「怒るだろうな。だけど、無視する」


そう答えると、サラはむきになって反論をぶつけてきた。


「それで取引相手の貴族様に言いつけたりするんじゃないの?」


「するかもな。だけど伯爵様は押さえてるんだ。他の貴族様なら、教会の権威と剣牙の団の暴力で黙らせられるよ」


「そんなことしたら、街の商人さん達が意地悪して、街で靴を売ってくれなくなくかもよ?」


「そうしたら、他所の街に売るまでさ。グールジン以外の街間商人とも契約して、国中に売り捌く」


そこまで言うと、さすがにサラの方も感情のボルテージがあがってきたようで大きな声で言った。


「ケンジ、あんた変よ!こないだまで、貴族様に見つからないように、こそこそと商売をしようとしてたのに、急にそんな喧嘩腰になって!」


だが、大声を出したことで却って冷静になったようで、サラは俺の好戦的な物言いを訝しく思ったようだ。


「・・・そんなにたくさん靴を作って、どうするのよ?何か理由があるんでしょ?」


俺は答える。


「守護の靴を、大規模に、大量に製造するようになれば、多くの冒険者や教会の開拓に従事する者達に行き渡るようになる。怪物の駆除も進むし、人間の世界も広くなる」


そこまで言うと、サラは何かに思い当たったようだった。


「それって・・・前の農村の家族のこと、まだ気にしてるの?」


サラの疑問に直接答える代わりに、俺は言った。


「怪物の駆除が進めば、隠し畑なんてものは存在できなくなる」


サラは腰を落として俺の目を下から覗き込むようにして聞いた。


「ねえケンジ、司祭様に何か言われたの?そういえば、あの時からちょっと変よ」


俺はできるだけ平静を装って答えるように努めた。成功したとは言えなかったが。


「言われたさ。ケンジ、お前はよくやった。だがお前にはできないこともある!我々は王でも英雄でもない、ってな!」


そう言って息を吐き出してから付け加える。


「そう、ニコロ司祭は正しい。俺は王や英雄のような真似はできない。剣をとって万の敵を打ち破ることはできないし、国の貴族達に言うことを聞かせることもできない。

それでも、隠し畑に頼らないと生きていけない農民は減らしたいんだ。

それは回り回って冒険者のためにもなる。

だから、俺は俺のルールとやり方で戦う」


「・・・それが、工場をつくることなの?」


サラが囁くような声で聞いてくる。


「そうだ。工場を大きくして、農村で暮らしていけない人達を雇う。雇った人達を使って靴を大量に作り、靴を大量に売って、大勢の冒険者を支援する。開拓に従事する大勢の者達を支援する。そうして人間の世界が広がるのを支援する。


これが、俺が一番効率よく世の中を変えられる方法なんだと思う。この世界で一番効率よく靴を作れるのは俺なんだから、仕方ない」


「だから、危ない目に遭うのを承知でやるの?たくさんの人から嫌われるわよ?」


「遠慮するのは、やめたんだ」


俺が静かに言うと、サラは諦めたように溜息を吐いた。


「じゃあ、仕方ないわね。とことん付き合ってあげるわよ」


そう言って、笑顔を見せた。

明日も12:00と18:00に更新します

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