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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第十一章 農村を支援して冒険者を支援します

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第150話 閉じた世界と開いた世界

これをして下さい、それ以外のことはしないで下さい、というルールの決め方をクローズド・ルールといい、

これをしてはいけません、それ以外のことは全て自由です、というルールの決め方をオープン・ルールという。


助祭達は、おそらく教義や教会の規則が厳しく、クローズドなルールの世界で生きてきたのだろう。

だから、今回の事例ケース学習のように、オープンなルールの世界に戸惑いがあったのかもしれない。

この差異は、俺も事前の認識不足だったようだ。


教会が事業に本腰を入れるならば、この種の事業管理者を継続的かつ大量に育成する必要がある。そのための課程を設計するならば、次回からは、教会の世界と、その外の世界の認識違いを取り除くステップを教育課程に入れる必要があるだろう。


そうした思考法や自由な空気に適応した助祭達が、教会に戻った後で閉じた世界に馴染めるかどうか俺にはわからなかったが、それはニコロ司祭が考えることだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


一週間後の再開を約束して助祭達への講義を終了し、工房に戻る途中で、サラがたまりかねたように話しかけてきた。


「ねえねえ、あの助祭様達、すごく頭のいい人達なんでしょ?どうして最初は協力しなかったの?」


いかにも不思議でならない、という顔で言う。


「サラは、弓の腕に自信があるだろう?もし獲物が小さな鳥で1羽しかいなかったら、他の狩人と協力する?」


と、今の状態を獲物の少ない狩りに例えて聞いてみたのだが、


「するわよ!だって次の鳥を獲るときに協力してもらったら、二人ともお腹いっぱい食べられるじゃない!」


と答えられたので、俺は笑ってしまった。


「なによ!私、おかしいこと言った?」とサラは膨れてしまったが。


俺は笑いを納めてからサラを賞賛した。


「いや、正しい。サラは全く正しいよ。サラが聖職者になったら、すぐに司祭様だな」


半分、真面目に言ったのだが、サラには否定された。


「バカね!女は司祭になれないのよ!まったく、ケンジって何も知らないんだから!」


「そうだな、俺は何も知らないな」


何だかサラとの会話が愉快で、俺は笑いながら帰った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


数日のうちに靴の事業と、ちょっとした手配を済ませて、一週間後、講義を行うために俺とサラは教会を訪れた。


教会には3人の助祭達が先に来て何やら議論をしていた。熱心でなかなかよろしい。

よく見ると、3人の目の下にはうっすらと隈が見える。

相当、頑張ったようだ。これは成果が楽しみだ。


「こんにちは。皆様、この一週間、だいぶ頑張られたようですね」


そう話しかけると、クレメンテ助祭は胸を反らせて答えた。


「あたりまえだ!我々の計画に隙はない。貴様の仕掛けた小細工など、全て回避してやったわ!」


そう言って、羊皮紙の束を机に叩きつけてきた。


「そうですか、それは楽しみです」


俺は、そう頷いてから、念のために確認をした。


「ところで、本日は、みなさんの立てた開拓の計画を聞かせていただける、ということでしたね?」


「そうだ」という回答を貰えたので、俺はにこやかな笑顔で、ちょっとしたイタズラ心と共に爆弾を落とした。


「それは良かった。今日は、これからニコロ司祭様がいらっしゃいます。よい発表をいただけるよう、期待していますよ」


教会の小さな部屋は、助祭達の悲鳴と怒号に包まれた。

明日も18:00に更新します。22:00は所用のため難しいかもしれません。

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