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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第八章 事業を通じて冒険者を支援します

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第108話 金がない

貴族様への謁見騒ぎも終わり、ようやく穏やかな日常が戻ってきた。


これで事業の展開にまい進できる。

そう思っていたのだが・・・


「どうしたの?ケンジ」


「金がない」


俺は帳簿を睨みながら答えた。

いくら睨んでも帳簿の数字は増えたりしないが。


「ええ?だってこないだまで、すごい儲かってたじゃない!お貴族様の注文とか一杯受けたし!」


そう。たしかに受けた。そして儲かった。

だが、その利益も今回の騒動と対策で、ほとんど使い果たしてしまった。

おまけに工房は停止していたから、すぐに金が入る当てもない。


「ど、どうするの?あ、ええと靴の権利ってやつを売ればいいんじゃないの?」


「それも一つの方法だな」


「ええと、あと、ジルボアさんか、スイベリーさんのお義父さんに借りるとか」


「その方法もあるな」


だから、別に倒産したりはしないのだが、本当に腹が立つ。

あの、うすい顔をしたロロの奴がちょっかいさえかけてこなければ、こんなことにはならなかったのに・・・。


と、そこまで思いついたとことで、ちょっとした悪戯を思いつく。


「サラ、剣牙の兵団まで行くぞ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


俺の計画を聞いて、真っ先に立ち上がったのはスイベリーだった。


「面白い。自分は乗ってもいいと思います」


ジルボアは黙考している。

計画のリスクとリターンを天秤にかけているのだろう。


正直、俺からすると剣牙の兵団のリターンは少ないと思う。

だから、スイベリーが乗ってきたのが意外ではあった。


「それで、事前情報はこの通りなのか」


俺が集めていた情報を元に立てた計画なので、確認したいのは当然だろう。

だが、俺だってこの情報のためには随分と金を使った。自信はある。


「ね・・・ねえ、これって大丈夫なの?」


と、サラが心配そうに聞く。まあ、普通の冒険者なら、そう思うわな。

だが、心配するサラとは別に、周囲の剣牙の兵団の団員達は、盛り上がっていた。


俺は立ち上がって叫ぶ。


「ようし、それじゃあ一緒に売り込みにいこうぜ!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夜明けの街を、男達が進む。


周囲はまだ薄明りがさして来たところなので、詳細はわからない。

人数は20人前後だろうか。

その一人一人が逞しく、大柄で、よく使い込まれた鎧と、黒光りする靴、そして斧槍やクロスボウなどの大型の武器を装備し、ガチャリガチャリと歩いていく。


その集団は、2等街区にある大きな邸宅の前まで来ると、よく訓練された様子でぴたりと停止する。

1人の男が進み出て、屋敷で大声をあげる。


「ロロさまーーーーっ!!靴を売りにまいりましたーーーーっ!!」


「「「靴を売りに来たぞ―――――――っ!!」」


大勢の武装した男たちが唱和し、足を踏み鳴らす。


静まり返っていた邸宅は、途端にパニックになり、門の警備兵が転がるように走ってきた。


「な、なにごとですか!こんな夜明けに!」


俺は進み出て答える。


「先日、お城で約束しましてね。靴を売りに来たんですよ」


「「「靴を売りにきたんだ、とおせ!!とおせ!!」」


面白がって、団員達が武器を盾にガンガンとたたきつけ、足を踏み鳴らす。

クロスボウを振り回すものもいる。


警備の兵は「ひ、ひぃ」と慌てて逃げ出し、屋敷の中へ入っていった。


「通っていいってよ!よし、行くぞ!」


「「「おう!」」」


夜明けの時間帯に、2等街区の警備兵がこの地区を回らないことは予め調べてある。一応、賄賂も送っておいた。


剣牙の兵団の遠征は朝早く出発することも多いから、武装して街を歩いても怪しまれない。

それに、これはただの営業である。剣牙の兵団が遠征に行く際に同行し、ちょっと立ち寄ってもらっただけなのだ。何も疾しいことはない。


屋敷の中を、奥へ奥へと進み続ける俺と兵団達。それを止めようとする使用人はいない。

主人の人望がわかるというものだ。


そこそこの地位にあるはずのロロが2等街区に屋敷を構えている理由が、それだ。

ロロは貴族の中では嫌われ者なのだ。

出身階級が低く、能力はあるが冷遇されていることに反発し、裏金を稼ぎ、賄賂を贈り、脅迫し、上流に食い込もうとしている貴族階級の鼻つまみ者。それが、俺が調査したロロの実相だった。


こんな奴と組んでは、俺まで貴族階級の敵に回ってしまう。

それに、貸しをシッカリと取り立てるのは、商売の基本だ。

剣牙の兵団も、今回の嫌がらせに対抗しないと、舐められて今後の商売に差し支える。


それで、今回の早朝の押しかけ営業となったわけだ。



無人の廊下を進み、奥まった部屋の、一際造りが立派なドアをガチャリと開ける。


すると、大慌てで服を着こんだのか、衣装と頭髪が乱れた、うすい顔の男がいた。


「おや、そこにおいででしたか。ロロ様。剣牙の兵団が靴を売りに参りましたよ」


「「「おおっ!!」」


武装した20人の男たちが一斉に床を踏み鳴らし、武器を盾にガンガンと叩きつけた。


ロロは、真っ青になって口をパクパクと開閉し、言葉がでないようだった。

本日は22:00にも投稿します。

トップページの「今日の一冊」にて本作が紹介されております。

よろしければご覧ください。

(この文章は次の本が紹介されるまで約1週間、続けさせていただきます)

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