現実と葛藤
読んでくださっている皆さま、ありがとうございます(*´∀`)♪
あの後、一体どのようにして自室まで戻ったのか記憶にないまま
気が付けば人払いが済んだ寝室で声も出さずに泣き続けていた
こんなときでも、周囲を気にして無意識のうちに声を出さず哭く自分にどうしようもないやりきれなさを感じる
辛いときに哀しいときに、そのありのままの感情を受け入れてくれる相手など誰一人思い浮かびはしない
そう、これまでただ一人さえも、私がそう振る舞うことを望み、許す人などいなかったのだから…
―――その事実に、さらに打ちのめされる
自分の心を素直に預けられる存在がいない
それが酷く悲しく感じる時もあったけれど、
たった1つ、本当に望むものが与えられるなら―――
ただその一念で、その感情に蓋をし見ないようにしてきたのだ
この先の未来には望む世界があると、信じていたからこそ目を瞑り耐えてきたのだ
けれど、
すがり付いていたその希望さえも最早どこにも存在しないというのなら
これから先たった一人で、一体何のために耐えなくてはならないのか
これ程傷付き砕け散った心では
小指の先ほどの小さな事でさえ、到底耐えられそうにない
どのようなときも、悠然と取り乱すことなくあれと仰るなら
どうか、お父様、その術を今、私にお教えください
この哀しみを、痛みを微塵も見せることなくあることなど
今の私には到底出来そうもありません
どのようなときも、微笑み絶やさず淑やかにあれと仰るなら
どうか、お母様、その術を今、私にお教えください
これ程嘆き悲しむ己の心を隠すことも捨てることも
今の私には到底出来そうもありません
今の私に出来る唯一は、ただ声を殺し泣くことだけ…
あぁ、
私はこれから一体どうしたらいいの?
あの方とマリーの気持ちを、関係を知ってしまった今、
今までと同じように接することなど出来はしない
あの方に対しても
マリーに対しても…
何食わぬ顔でただ顔を合わせる事さえ、今は出来そうにない
けれど、相手は婚約者と実の妹
暫く距離を置いて、問題を先送りにすることさえ難しい
何故現実は、こうも私に対して残酷なのだろう
疲れた心を癒す暇さえ与えられないまま
それでも考えなくてはいけないなんて…
――――どうしたらいいの?
正式な婚約者であると言うその事実だけを盾に
勝てる見込みのない闘いに、この身を投じる?
それとも、現時点ではあの方の正式な婚約者は私で、
マリーだってやがてはどなたかと婚約し婚姻を結ばなくてはならないのだから、それがあの方にならないようただ息を潜めて祈り待ち続ける?
―――あの方が愛しているのが私ではないと知りながら?
その全ての時に、あの方がマリーを愛し案じ慈しむ様を見せられ続けるのに?
私はそれに耐えられるの?
…いいえ、いいえ!
そのようなこと、到底耐えられはしない
あの方にとって私自身が無価値な存在だと
これ以上知らされることも
自身の感情だけにしがみつく
浅ましい人間だと思われることも
何よりあの方の気持ちがマリーにある以上、
手を伸ばしすがりつこうとすればするほど
それが叶わなかったとき
私には「浅ましくも醜い女」のレッテルと
侮蔑の眼差ししか残らないだろう…
これまでの時をかけて望んだ
たった1つの希望さえこの手には残らなかったのに
これ以上、「私」の存在を落とし惨めにする道を私は選ぶことができない
ならば、私が採る道は1つ―――
それはもしかしたら「逃げ」なのかもしれない
けれど、今の私に出来る最善の選択だと信じて―――
静かに呼吸を整えながら
ゆっくりと目を瞑る
お父様、お母様、どうぞ私にお力をお貸しください
悠然と微笑みを絶やすことなく、毅然とあれるように――
今こそ、私は私の矜持を
見失うことなく体現しなければならない
誰でもなく、
これまで精一杯努力し築きあげてきた、過去の自分のために
深く傷付き、疲弊しきった心を、それでも建て直さなければならない
今の自分のために
そして何より、
これからを生きる未来の自分のために
傷付いた心を誰の目にも触れさせはしない
一人生きていくならなおのこと、
愛されないことに傷付き、裏切られていた事で砕け散った、ただの女としての弱い「私」を護れるのは、私しかいないのだから―――
閉じていた瞼をゆっくりと開ける
声を出すことさえないまま、
静かに頬を流れていた涙は
ついに誰にも気づかれる事のないまま
密やかにその事実さえも流し消し去ってしまった―――
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです♪