表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

砕け散るもの

はじめまして&お久しぶりです!新連載始めました♪相変わらず仕事の合間を縫っての投稿なので更新速度はびっくりの遅さですf(^_^;

少しでも楽しんでいただけたら幸いです♪


あぁ…!!


目の前の光景に、取り乱すことさえ出来ないまま

ただ、大切に慈しんできた心に大きな罅が入る音だけが

確かに響いたのを感じていた



見たくなどないのに、そんな心とは裏腹に

大きく見開かれたまま逸らすことさえ出来ずにいる瞳には、その全てが鮮明に写し出されている



今が盛りと満開に咲き誇る色とりどりの薔薇に囲まれて

1つに重なりあっていた影が、そっと離れていく

僅かな時さえ離れることが耐えがたいのだと言わんばかりに

そっと差し出された手が優しく頬を包み込む



己には決して見せることなく、そして終に見ることが叶わなかった

どこまでも相手を愛しむ色をのせたその瞳に

心が悲鳴をあげるのを止めることが出来ない



望んでも望んでも決して得ることの出来なかったその位置には

相手の愛情に応えるようにはにかむ愛らしい少女の姿





なぜ…?

どうしてこんなことに?



あの方の隣に立つために

誰からも謗りを受けることがないように

決して恥をかかせることがないように



必死で自分を磨き努力してきたこの年月の

なんと長かったことだろう


物心つく頃には既にそうあれと定められ

意味も分からず泣きながらレッスンを受けたこともあった


けれど、初めてあの方にお会いした後は

凛と立つあの方の隣で足手まといではなく、少しでも役に立てるように、今まで以上に広い分野にわたって努力を重ねてきたつもりだ


そうして身につけた知識と教養は、純粋さや素直さ、愛らしさとは対局に位置しており、気がつけば「守ってあげたい」と思わせるような女性らしさを失ってしまっていたのかもしれない


それでも、あの方の隣に立つためには必要なことなのだからと

周りから期待されるままに、自身が望む自分であるために

ただ真っ直ぐに向き合ってきた



そうして積み上げてきた今までの全てが、

ガラガラと音を立てて崩れていく



愛し愛されることを願った婚約者であるあの方と

実の妹であるマリーの悲しくなるほどに美しい口付けに




誰もが守ってあげたいと手を差し伸べずにはいられないような、華奢で愛らしく、純粋なマリー

いつだって花が開くような笑顔を見せるマリーが、切なさと狂おしい程の情熱をその瞳に宿している姿に息をのむ


守るべき存在である妹としてではなく、愛する人に愛されることを望む一人の女性として彼女は今、私の前に立ち塞がっているのだ


彼に愛されているという歴然とした差をその身を守る盾として



今までがそうであったように、これから先の未来においても決して彼に愛されることはないのだと突き付けられた現実に―――

何より大切な妹として慈しんできたマリーに裏切られていたのだという覆しようのないその事実に、胸が張り裂けてしまいそうで


泣き、喚き、詰る事が出来たなら

少しはこの痛みが減るのだろうか…



けれど、今まで築き上げてきた矜持が

そんなみっともなく惨めなまねは出来ないとこの期に及んで否定する

そんな態度はあの方には相応しくない、と



―――最早、私がどれ程みっともなかろうが惨めであろうが

あの方には関係がないことだというのに





それは時間にすればほんの僅か、たかだか数分のうちに起きた出来事で



けれど、間違いなくこの瞬間に、

これまで生きて形作ってきた私の心は

跡形もなく粉々に砕け散ってしまったのだ―――



あまり長くならない予定ですが、お付き合い頂けると嬉しいです(*´∀`)……ドン亀更新ですが(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ