表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せを盗むという事  作者: むらしぃ
3/4

依頼



「こんばんはお嬢さん。月の綺麗な夜に」

「こんばんは泥棒さん。雪の瞬く夜に」


ウォーリーはブランコに向かって優雅に一礼した。

キイキイと鳴る椅子には、寒さで頬を真っ赤にした女の子が小さく丸まっている。


「まさか来てくれるとは思ってなかったわ」

「でも来ると思ったから、君は待っていた。僕らは君の呼び声を聞いて来ただけだよ」


ありがとう、と女の子は呟いた。

ふと足元を見て目を細める


「この黒猫ちゃんはあなたの飼い猫?」

「友達のジャック。困ったときにいつも助けてくれる」


『飼い猫』というワードをそっと訂正する。

ウォーリーはジャックに対して一度もそう思ったことはなかった。


「そっか……いいお友達ね。おいで、ジャック」


ジャックは女の子の膝に素直に乗り、ひと声ニャアと鳴いた。

抱きしめるとふさふさとした黒の毛並みが心地いい。


「改めて自己紹介をさせてもらうよ。僕はウォーリーで、こっちはジャック。 君の助けになりたくて来た」


女の子はゆっくりと答えた。


「わたしは、……ユリ。わたしの幸せを盗んで欲しくて、泥棒さんにお願いしたの」


そう、彼らはそのために来た。

この年端もいかない少女から、人が羨むほどに輝く『幸せ』を盗むために。



「お願いウォーリー、ジャック。わたしの『パパとママ』を盗んで!」


並々ならぬ事情があると見えた。

しかし彼らはそれを聞かない。


彼らが盗むことで何が変わるのかは、少女自身が決めることを知っているから。


「それじゃユリ、明日の同じ時間に、ここで」


それきり彼らは何も言わずに、雪の中へ消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ