バレンホワイト 男2女1~男1女1台本 9分
たいとる:バレンホワイト
かいたひと:かずは
(※男1女1~男2女2)
しゅつえん:秋谷 朱里・意地っ張りな男性。ヤンキー。俺様。幼馴染の茶菜のことが好きだが、昔からちっとも素直になれない。
春村 茶菜・引っ込み思案で一途な女性。一ヶ月前、朱里に「義理だ」と言ってチョコレートを渡したが、「実は本命だったの!!」と言おう言おうとしている。
しゅくま・朱里を見守っている馬面の悪魔。身長30センチ。姿形は可愛い。ちゃくまが大好き。ちゃくまの恋人(人?)。テンション高い!(レポーター)
ちゃくま・茶菜を見守っている鹿面の悪魔。身長30センチ。姿形は可愛い。しゅくまが大好き。しゅくまの恋人(人?)。テンション高い!(レポーター)
■開幕
しゅくま:(手を叩きながら)はいはいはいはーいやって来ましたよ! 今日は来たる3月14日! んでもってここは、春村 茶菜の家の近くにある、ファミリーレストラン! ……「俺屋」ッ!
ちゃくま:ちょっとしゅくま! 声が大きいよぉっ! 茶菜と朱里に、私たちが後つけてるのバレちゃうじゃなーいっ!
しゅくま:はっはっはっはっ。今日もその鹿面、可愛いよ。ちゃくま
ちゃくま:うふふっ。しゅくま、あなたも。その馬面とってもハンサムで素敵よ! さあ、今日もはりきって。あたしたちが目をつけている人間をレポートしましょっ!
しゅくま:そうしようっ! 店内は、ガラッガラ。ラッキーだったな、朱里! 二人きり。店員なんか、ずっと厨房にこもりっきりさ!
ちゃくま:学校の成績がわるぅい秋谷 朱里は、あたしの茶菜に勉強を教わっている所なの! ドリンクバイキングを頼んで。ノートと教科書を開き。勉強開始から2分が経過したところ!
朱里:あー……。飽きた!
茶菜:えっ?
しゅくま&ちゃくま:はっやっ!! えええええええっ!?
朱里:あーあ。なんでこんなんやんなきゃいけねえんだよ。あー。……おい茶菜、俺の分もお前がやって提出しといてくれよ。ちょっと便所(立ち上がり、トイレに行ってしまう)
茶菜:ち、ちょっと、朱里っ……。……っ
しゅくま:ああ……。こんな形でしかいつも甘えられない。情けない朱里。ボクだったら、(ちゃくまの手を取って)茶菜の頬に手を当てて。とっくにキスしているさ(ちゃくまの手の甲にキスをする)
ちゃくま:ウフフッ! しゅくま、愛してる!
しゅくま:ちゃくまだったら、どう思う? 当ててごらん。今の茶菜の心を
ちゃくま:茶菜は、朱里に嫌われるのがイヤで。いつも何でも引き受けてしまうけど。やっぱり宿題をやってあげるなんて間違ってる! きっと茶菜は、「このまま帰っちゃいたい! よし、帰っちゃおう!」って思ってるに、決まってるぅっ!
茶菜:お金……(学生鞄から、財布を取り出す)
しゅくま:おや。相変わらず律儀な行動を肉眼でキャッチ!
ちゃくま:茶菜ぁ~っ! お金なんていいじゃない! 朱里に払わせなよ! 宿題手伝えって、無理やり連れて来られたんだから!
茶菜:(小声で)朱里、原付が欲しいって言ってたからきっとお金ないだろうしな。っ――あっ、ああっ!?(立ち上がろうとした瞬間。席の段差に躓き、倒れ。鞄と財布をぶちまけてしまう)イッタッ!!
ちゃくま:茶菜ぁっ!?
朱里:(戻ってきて)何やってんだよ(ぶちまけた小銭を拾うのを手伝う)
しゅくま:おいおい、顔面からいってなかったかい!? さあ朱里! ここは男の腕の見せ所さ! 力強く彼女を抱き上げろっ!
茶菜:ごめん……
朱里:本当にドジでマヌケだな。お前に何かを教わろうとしていた俺まで馬鹿みてぇじゃねえか
茶菜:そうだね……
ちゃくま:そこまで言わなくったって、良いのにぃ!
しゅくま:言い過ぎだよ。いつもいつも、朱里は女心をわかってないけどねっ!
朱里:お前、学校のお勉強は出来んのに。どっか抜けてるよな
茶菜:うん。ごめんね
朱里:別に良いけど。ほら、(拾った鞄を差し出して)
茶菜:(俯いたまま)ねぇ朱里、――食べてくれた?
朱里:あ? 何が
茶菜:一ヶ月前、さ。ショコラ、あげたじゃない
朱里:あ? ああ
茶菜:美味しくなかった?
朱里:……さあ、どうだったかな。ほら、さっさと立てよ
ちゃくま:茶菜はずっと、気になってた。「義理だよ」と言ってさり気なく渡した、あれのこと!
しゅくま:本当のことは、とても言えない。照れ臭すぎるから。ちっともダメだ。そんな朱里は男らしくない! 「義理と言われて渡されたんだから。他の奴にも同じもん渡してんだろ」なんて思ってる! 全然違うのにっ!
朱里:ブッ!! ぐっ、ははははははははははっ!!
茶菜:?
しゅくま&ちゃくま:?
朱里:お前がくれたあれさ、なんか変な臭いしたから。うちのバカ犬に食わせてやった! あははっ!!
茶菜:えっ
ちゃくま:うそ……!
しゅくま:流石に、冗談
茶菜:朱里……
朱里:だから味とかわっかんねぇや。悪ィ! くはははははははははっ!!
茶菜:っ!!(鞄と財布を朱里に投げ付ける!!)
ちゃくま:おーっと! 茶菜が鞄と財布を朱里の顔面に投げ付けたっ!!
朱里:イッテっ!!!!
しゅくま:それをモロに喰らった朱里!!
朱里:な、なんだよっ……。じょう……だ、んだろ
茶菜:っ……(泣き出す)っ……。ぅ、っ……。……
朱里:ええええええええ!?
茶菜:っ朱里のバカ!! だいっきらい!!(俺屋を出て行く)
しゅくま:ああ、茶菜っ……
ちゃくま:最低っ!! あれを作るのに、どれだけ時間がかかったと思ってるのよ!! 大体朱里が言ったんじゃない!! 朱里が食べたいって言ったから作ったのに!! 最悪の展開よっ!
朱里:茶菜!!
しゅくま:(溜め息)……
ちゃくま:なによなによなによ! 茶菜が料理とか苦手なの知ってるくせに。無茶難題与えて何アイツ! 必死になって、あんなに頑張って……。ちゃんと、美味しいの、持って行ったのに……
朱里:……
しゅくま:追いかけないつもりか。……ちゃくま、もう今日は帰ろう。レポートは中止だ。こんな腐った魂、ボクが狩るにふさわしくない
ちゃくま:朱里の……バカ
朱里:っ……。ッ!! (立ち上がり、外へ)――おい、待てよ!!(追いかける)茶菜!! おいっ!!
ちゃくま:バッリーン!! っと俺屋の窓ガラスを蹴破り!! 茶菜に奇襲をかける朱里っ!!
しゅくま:「げへへ。俺の女にしてやんよ」げへへへへ
ちゃくま:茶菜っ!! 逃げてぇーっ!!
茶菜:(全力で逃げる)っ!! 来ないで!!
ちゃくま:そうよ来ないで!! バリヤーっ!! 大防御っ!! 永久バーリー!!
しゅくま:あははは待てよ!! 超誤解っ!! さっきのは嘘だってっ!! バリヤ無効っ!!
朱里:うるっせえ!!!! お前らちょっと黙ってろ!! 普通に出入り口から出たっつの!!
ちゃくま&しゅくま:はい。ごめんなさーいっ
茶菜:あっ!! きゃっ!(顔面からズッ転ぶ)ぶっ!!
朱里:あっ!! ……おい、バカ……(駆け寄る)
茶菜:うう……。来ないで……
朱里:鞄と財布置いて帰る気かよ……。ほら、
ちゃくま:茶菜に手を貸し。鞄と財布を手渡す朱里
しゅくま:中身は全部抜いて……
朱里:抜くかよ!! おい、しっかりしろ
茶菜:……ごめん
朱里:……っ
ちゃくま:二人の間に、微妙な沈黙が流れる
しゅくま:去ろうとする、朱里
朱里:わざわざ付き合わせて悪かったな。じゃあ
茶菜:……っ
しゅくま:歩き出した朱里の背中を、じっと見詰める茶菜
茶菜:?
ちゃくま:? 鞄の中に、何か、知らない包みが入ってる
しゅくま:何、また朱里の嫌がらせ? 点数の悪い答案用紙?
茶菜:朱里……。……っ朱里! 待ってっ!!
朱里:あ?
茶菜:……こ……これは、何?
ちゃくま:シンプルな包装の、可愛い子包み
しゅくま:朱里は、軽く振り返るも。ダンマリで
茶菜:あ、開けても、いい?
朱里:……うん
ちゃくま:ばっ爆弾だったらどうする気!?
しゅくま:中から出てきたのは、茶菜が朱里に贈ったあのショコラと、まったく同じモノ
茶菜:……? 朱里、これ
ちゃくま:茶菜に再び背を向けた朱里に、少しずつ近付いていく茶菜
しゅくま:茶菜は気付いた。朱里の耳が赤くなっていたこと
茶菜:朱里、犬に食べさせたんじゃなかったの?
ちゃくま:そっと、朱里の制服の裾をつまむ
しゅくま:朱里はダンマリを通す
茶菜:お腹壊せってこと? 一ヶ月も、とっておいたの? ねぇ、朱里
朱里:お前の気持ちが知りたかった
茶菜:え?
朱里:だって、義理だって、言うから
茶菜:義理じゃ……
朱里:っでもすげえ美味かったから!! いつも、炭みたいなモンしか作れねぇお前が!! あれ作るのに……。どんな、気持ちだったのか。なんて、なんでなのか、わかんなくって……。だから、
茶菜:……朱里……
朱里:同じもん作れば、お前の気持ちがわかると思ったんだ
茶菜:……しゅ、
ちゃくま:そっと振り向いて
しゅくま:そっと、互いの額が合わさった
朱里:茶菜
茶菜:……はい
朱里:頼むから。義理だったなんて嘘だって、言ってくれ!
茶菜:……うんっ
朱里:(アドリブ)
END