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第二章 鼠と『鴉』 1



 第二章 鼠と『鴉』




   1


「ここ……だよね?」

 薫子は依頼主の三月陽介みつきようすけから指定された場所の前に立ち、しげしげと観察した。

 なんの変哲もないというか、かなり古めかしい四階建ての小さなマンションビル。その一階にある、とても流行っているとは思えない喫茶店。歩道に面した黒っぽいガラス越しに中を覗いても、昼過ぎだというのにほとんど客の姿が見えない。だが『喫茶ドラゴン』という看板が掛かっている以上、ここで間違いないのだろう。

 なんかへんぴなところだなぁ。

 薫子はついそう思ってしまう。

 東京に着いたときは思わず興奮した。林立する建物、至るところにいる人の群れ。山手線のホームに行けば、数分おきに電車が走ってくることに興奮し、老若男女、さまざまな人で溢れている東京にただただ圧倒された。それが、目的の場所に近づくにつれて、だんだん過疎化されていく。

 最寄りの駅に着いたときには、鳳凰院の里の麓にある町と大差ないほどの規模の町並みと人通りに少なからず失望したものだ。

 まあ、ひとことで東京っていっても、新宿のような街から、こういうところもあるんだよ。とうぜんね、世界の常識だよ。

 無理矢理そう思うことにした。自分は観光に来たわけじゃない。

 とはいっても、十七年間、鳳凰院の里で生まれ育った薫子は、初任務という興奮とともに、東京でしばらく生活することに対して憧れがなかったといえば嘘になる。

 まあ、人目を忍ぶ意味で、こういうところにしたんだよね。

 薫子は気を取り直し、喫茶店のドアを開けた。

「いらっしゃいませぇ~っ」

 鈴の音のような声が響いた。狭く薄暗い店のカウンターには、ひとりの若い女性が子供のような笑顔を見せて立っていた。

 おそらく薫子よりも少し年上の、十八か十九。耳を出したショートカットは薫子以上に短く、黒々としている。スリムな長身にジーンズといった姿はむしろ高校生の男のようで、エプロン姿が似合っていない。笑顔はとても可愛いが、その陰にけっこう気の強い素顔を隠しているような気がする。いや、想像でしかないが。

 他に店員はいないから、彼女がひとりで切り盛りしているらしい。

 薫子は愛想笑いを返したあと、店内のテーブルを見回す。それらしい人を探そうとしたのだが、探すもなにも客はひとりしかいなかった。

 窓際の円テーブルに座った二十代前半と思われる若い男。背は高そうだが痩せ形で、弱々しそうなイメージ。よれよれのグレイのスーツがまるでおしゃれじゃない。まるで中学生のようにさらさらしたお坊ちゃんカットで眼鏡を掛けている。顔は癒し系とでもいうのか、のんびりのほほんとした感じがする。

「やあ、こっちです」

 その男は薫子を見るなり、笑顔で手を振った。

 このひとが依頼人の三月陽介?

 薫子の情報はすでに持っていたようだ。あらかじめ写真で姿を確認していたかどうかは知らないが、布袋に入った二本の木刀を持ったセーラー服の女子高生。たしかに間違えようがない。

「ふ~ん」

 年若い女主人は興味深そうに、薫子たちを見比べる。

「三月さん、この可愛らしい方はどちら?」

 彼女はにやにや笑いながら、問いつめる。台詞だけなら恋人の浮気を問いつめているようにも聞こえるが、どう見ても、三月に気があるわけではなく、たんにおもしろがってるようだ。その口調からは嫉妬の欠片も感じられなかった。

「なんかあたしと似た感じの子ねぇ。背は低いけど」

 うるさいなあ、このデカ女。どこも似てないよ。

 その思いが顔に出たのか、女主人はぷっと吹くと、大笑いしながら言い訳した。

「あははは。ごめんねえ。べつにあなたをけなす気はないのよ。ただちょっと三月さんをからかいたかっただけ。それにちょっと興味があったし……うくくくくく」

 怒るな。怒るんじゃない。あたしはその気になれば、こんな女瞬殺できる。やらないだけよ。やっちゃだめ。

「君には関係ないだろ?」

 三月は少し怒った口調でいうと、薫子を手招きした。

「なによ、あの女」

 薫子は依頼人の前に行くと、まだ笑っている女を横目で見ながらぶーたれた。

「で、ほんとにあなたが依頼人なの?」

 薫子はその男の真ん前まで来ると、確認するために小声で聞く。

「もちろん。まあ、座ったら?」

 陽介はふんわりと相手の心をなごませるような笑みで浮かべ席を勧めた。

 薫子は木刀を壁に立て掛けると、椅子に座る。

 なんか、暖かそうな人ね。

 鳳凰院の里には若い男がいないということもあるが、どうも薫子には男とは野性的で攻撃的なイメージがある。だがこの男は、むしろ桜子たち仲間よりも、薫子の心を落ち着かせる。いらだった心がかなり収まった。

「可愛い子ねぇ、あなた。なになに、剣道少女?」

 女主人は水を薫子の前に置きつつ、好奇の目を向ける。

「まあね」

 薫子は口を濁した。第三者から見ればそうとしか見えないはず。もっとも薫子は普通の意味でいうところの剣道などやったことがない。薫子がやってきたのは、まさに殺し合いのための修行なのだから。

「あたし美咲みさきっていうの、あなたは?」

 女主人はにこにこしながら自己紹介する。

「薫子」

 薫子は少し用心しつつも、答えた。べつに名前を秘密にする必要もない。ただ鳳凰院の姓は名乗りたくなかった。闇の世界では知られた名前だからだ。

「そんなに睨まなくてもだいじょうぶよぉ。仲良くやりましょう」

 美咲はけらけら笑う。無意識に警戒心が顔に出ていたらしい。

「美咲さん、とりあえず引っ込んでいてくれるか?」

 三月がすこし怒った顔でいう。ただしまったく迫力はない。

「あら、あたしはオーダーを取りに来ただけよ。なんにする、薫子さん?」

「え、ええっと、カレー?」

 薫子はじつはこういう店ははじめてだ。鳳凰院の里には喫茶店などなかったし、どういうものがあるのかもよく知らない。ただまだ昼食を取っていなかったので腹に溜まるものが欲しかった。

「オッケー。カレーね、まかせといて」

 美咲はぱたぱたとカウンターの中に走ると、キッチンに火を入れた。

「ねえ、三月さん、こんなところで仕事の話していいの?」

 薫子はささやいた。

「こういうところの方がいいんだよ。僕の会社はマークされてるからね。それこそ盗聴されているかもしれない。ここは客も少ないし、いたとしても他の客の話なんか、聞いちゃいないから」

「三月さんの会社って?」

 じつは薫子は詳しい話はなにも聞いていない。聞いているのは、ある学校に転校生として潜入して、不審なことを探るということだけだ。

「三月新聞社さ」

「へえ~?」

 三月新聞といえば、日本を代表する新聞のひとつだ。たしか新聞だけでなく、いろいろな企業の複合体として三月グループがある。

 薫子は気づかれないように『千年桜』の柄の部分だけを布袋からだし、手で触れた。三月の霊体を見てみたいと思ったからだ。そのまま一瞬目をつぶる。目を開けたままでも見えるが、目から入る情報が重なって判断しづらい。

 暗闇に浮かぶ三月の霊体は水のようだった。三月の実体そのままの形の霊体のまわりを水が包みこんでいる。もっとはっきりいえば、裸体の三月が衣服のように水を纏っている。その肉体は痩身ながら思いのほか筋肉質で、それを覆う水は穏やかで透き通っていて、綺麗だ。三月の体はそれに溶け込み、一体化している。邪悪さの欠片も感じられなかった。嘘をついているとはとうてい思えない。

 任務の一環とはいえ、薫子はすこしドキドキした。なにせ男に免疫にないくせに、裸体をじっくり観察しているようなものだから。

 もっとも、ここに来るまでの間、好奇心半分に『千年桜』で通り過ぎる男たちの霊体を見てみたため、すこしは慣れて余裕もできた。どうもこの男はふつうの男とは違う感じがする。

 通りすがりに見た男たちの霊体はどれもこれも妙に荒々しかったり、逆に卑屈なものを感じたり、薫子の心を捕らえる霊体はなかった。

 その点、三月の霊体は穏やかで柔らかく、それでいて弱さを感じさせない。それに包まれれば、気持ちいいだろうな、とすら思えてしまう。

「どうしたんだい、いきなり目をつぶって?」

「なんでもない」

 薫子は霊剣を握ったまま目を開けた。

「ちょっと、顔が赤いよ」

「だからなんでもないってば!」

「いや、ごめんごめん」

 小娘に怒鳴りつけられても、三月は飄々としていた。

「ひょっとして三月さんって、三月グループの人間なの?」

「まあ、グループの末端ってとこかな。たんなる一記者だよ」

「あらあ、三月さんはグループの次期総帥って噂よ」

 聞き耳を立てていたのか、美咲が素っ頓狂な声を上げる。手には包丁、ジャガイモを切っていた。作り置きがないのか、これからカレーを煮込むらしい。

「馬鹿いうなよ。君がそう思ってるだけだろう?」

「ふ~ん?」

 薫子は妙にこの優男に興味が出てきた。べつに大企業のぼんぼんだからではない。どこか飄々としているのに、大きなものを背負っていることに自分と共通のものを感じたからだ。美咲のひとことに霊体がさざ波を立てたから、おそらく彼女のいうことが真実なのだろう。

「美咲さん、立ち聞きするなよ。君は黙ってカレーを作っていればいいんだ」

「へいへい」

 少し声を荒げた三月を、美咲は肉を炒めながら軽く流す。

「で、その次期継承者様がいったいなにをあたしに探ってほしいわけ?」

あけぼの学園高校の内部。転校手続きは僕の方でしておいたから」

「どういう学校なの、そこ」

「都内でも有数の進学校だね。スポーツも強いし、文化系の活動でも定評がある。いわゆるエリート校ってやつ」

「なにが問題なの、そこ?」

 三月はちらりと美咲の方を確認し、声を落とした。

「ある組織の、ある実験が、生徒におこなわれているという情報が、ある筋から入ったんだ」

「はあ?」

 ある組織の、ある実験が、ある筋からって、なんだよ、いったい?

「いや、いいたいことはわかるけど、今はこれ以上いえないんだ。ある筋っていうのは、まあ、うちのグループの情報屋だと思ってもらっていいよ」

 つまり、グループで飼っているスパイか。

「ある組織というのは、まだはっきり正体がわかってない。ただ『楽園の種』と呼ばれている組織で、邪悪なものであることは間違いないね。噂では体に武器を仕込んだ、機械化テロリストといわれる行動部隊がいるらしい。それから、おこなわれている実験に関しては、はっきりいって僕たちにもよくわからない。だからこそ、君に探ってほしいんだ」

「……体に武器を仕込んだ機械化テロリスト? ひょっとして冗談いってるわけ?」

「いや、あくまでも噂だから」

「ふ~ん? まあいいか。一応頭に入れとく」

 霊体の動きに変化はない。嘘はついていないはず。ってことはほんとうにいるのか、そんなマンガみたいなやつが?

「で、どうしてそいつらのことを調べたいわけ?」

「社会正義のため。といっても信じないかな?」

「そうでもない。お金持ちのぼんぼんが考えそうなことだもん」

 ちょっとからかってやると、三月は少し顔をむっとさせた。

「金持ちの道楽なんかじゃできないよ、正義のための戦いはね。もちろんそれだけじゃないさ。うちの新聞社で『楽園の種』のことをスクープしたいという野心があるのも確かだし、そもそもこいつらは放っておけば、うちのグループにとって大きな障害になり得る。いや、逆かな。こいつらがうちのグループを間違いなく障害と見なす。だから探っておきたい」

 一応納得はいった。さらになぜ自分たちが選ばれたのかも。

 学校に潜入するとなると、生徒として入るのが一番だし、しかもかなり危険が伴う。となると、その仕事ができる人間は限られる。一般の探偵事務所じゃ無理だ。

「わかった。つまり、学校で起こっている異変を調べればいいのね? それも非行とかいじめとか、ありきたりのことじゃなくて、もっと得体のしれないことを」

「そのとおり」

「あらかじめいっておくけど、その『楽園の種』とかいう組織が、邪悪なものでなければ、うちは手を引くから」

「わかってる。鳳凰院流は正義の大義名分がないと動かない。だからこそ頼んだんだ。金でどうでも動くところは信用できないからね」

 もっとも正義の大義名分を必要とするのは、鳳凰院流で、薫子じゃない。

 薫子にしてみればたんなる仕事。もちろん薫子だって、悪の片棒をかつぐのはいやだが、積極的にそいつらを成敗したいと思っているわけでもない。どうせやるなら、人を騙したりするより、人を幸せにするほうがいいし、修行してきた技を無駄にしたくない。その程度だ。

 はっきりいえば、高校生が放課後バイトするのに、違法なことをやるより、ちょっとでも社会の役に立ちそうなことをしたい。欲をいえば、自分にあったことで楽して儲けたいと思うのと大差ない。

「じゃあ、これを渡しておくよ」

 三月は鞄からなにかを取り出した。ひとつは学校の案内書、もうひとつは携帯電話だった。

「学校の場所や、見取り図、その他教師の情報などはこれに書いてあるよ。こっちのケータイには僕の番号が入力済み。ちょっと細工してあって、内蔵のデジカメはシャッター音なしで撮れるから、盗撮に便利だね。なにか証拠を握ったら、これで撮って僕のケータイに送ってくれると助かるよ。それとあらかじめいっておくけど、GPSが内蔵されているから、君の位置が丸わかりになる。プライバシー侵害だなんていわないよね」

「まあ、仕事中にプライバシーなんてないけどさ」

 薫子は案内書をぱらぱらめくりながら、しぶしぶいう。

「それとこれは曙学園の制服」

 三月はテーブルの上に箱に入った制服を置く。

 ライトブルーのブレザーと、チェック柄のグレイのスカートが目に入った。箱から出してみないとはっきりとは感じが掴めないが、少なくともセーラー服しか存在しなかった鳳凰院の里では見たことのないものだ。

 ちょっと心が躍った。この場で広げてみたかったが、そんなことではしゃぐと足下を見られそうだから、学校案内書に載っている制服姿のモデルを見て我慢した。

 チェックのスカートは鳳凰院の里では考えられないほどのミニ。太腿がかなりの部分露わになる。

 うわあああ、すっげえぇ。

 思わずそれを履いたときのことを考え、ひとり興奮する。

 上は真っ白なブラウスに紺のブレザーがよく似合っていて、首には真っ赤なリボン。東京ではべつに珍しくもないデザインなのかもしれないが、薫子にはとても都会的なものに感じられた。

「ね、ねえ、これ、……あたしに似合うと思う」

 我ながら馬鹿なことを聞いたと思うが、三月はにっこり微笑んでいった。

「うん、とっても似合うと思うよ」

「ひょ、ひょっとして、可愛い……かな?」

「可愛いよ」

 心臓がどきんと高鳴った。不覚にも顔が少し赤くなったかもしれない。

「うわっ、女子高生に制服渡して微笑んでいるなんて、三月さんって変態?」

 気づくと横に美咲がカレーを持って立っていた。

「な、なにを馬鹿な……」

「うふっ、冗談よ。取材でしょう? その子を潜入させてまでいったいなにを取材する気なの?」

 美咲はテーブルにカレーを置いた。

「だからこの子は親戚の子だよ。上京してくることになったから面倒見てるだけだ。そういったろう?」

「ふ~ん? まあ、がんばってね、小さな記者さん。それとも探偵さんかな?」

 美咲は薫子に向かって意味深な笑みを浮かべる。薫子が戸惑っていると、美咲は鼻歌を歌いながらキッチンカウンターに戻っていった。

「なんか変に勘ぐってない、あの人?」

「だいじょうぶ。変に勘がいいのは間違いないけど、君の正体や僕の目的がわかるはずもないから」

 薫子は念のため、目をつぶり、『千年桜』で美咲の霊体を探る。

 ピンク色の、ふわふわした雲のような霊体だった。魅惑的な肉体を桃色の霞が申し訳程度に隠しているといった感じ。とらえどころのないという点では、三月とそう変わらない。とりあえず悪意は感じられない。

 悪い人じゃないんだろうけど、そもそもこのふたりはどういう関係なの?

 薫子はその点が非常に気になった。だがあえて聞かない。三月に気があるんじゃないかと、ちょっとでも疑われたら、負けだと思った。

「まあ、話はだいたいわかったかな。とりあえず、これ食べていいよね」

 薫子は千年桜から手を離し、目を開けると、カレーを口に入れた。

「あ、そういえばひとつ重大なことをいいわすれていたよ」

 三月は真面目な顔でいう。

「ここの料理はひどくまずい。だから客がいないんだ」

「は、早くいってよね、もう」

 口の中に広がる激烈な味が薫子を不機嫌にさせる。しかもジャガイモとにんじんが生煮えだ。

「でも、この味に慣れておいた方がいいよ」

「なんでよ?」

「ここは君の下宿先だから」

「は?」

「まさか野宿でもする気だったのかい? 宿は僕の方で信用できるところを手配してくれとあなたのおじいさんから頼まれてたんだ。しかも格安のところがいいと」

「うげっ」

 あの爺ぃ。けちるなよ、そんなところで。

「不満そうだけど、悪いところじゃないよ。ここの二階から上はワンルームマンションだから、一応。しかも賄い付き」

「そういうわけで、あたしが下宿のおねえさんなんだよ、よろしくねぇ」

 美咲がカウンターの中からにっこり微笑んだ。



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