読者と作者、6つのタイプ
けっこう前になりますが、物語を楽しむ人を6つのタイプにわけてみた的なエッセイを書きました。今回はその続きみたいなもので、作者もタイプわけしてみようかなという試みです。ちょっと名称を変更しつつ、まずはおさらいがてらその読者6タイプご紹介したいと思います。読み物に限らず映画とかゲームのプレイスタイルとかにも通じるんじゃないかと思う所存。まあなんか話の種になるかなくらいの気持ちで見て行ってください。
・主人公憑依型
・主人公寄り添い型
・主人公応援型
・観客型
・考察型
・推し型
さっそく解説していきましょう。
【主人公憑依型】
主人公=自分として、作中の冒険や感情の揺れ動きを自分ごとのように感じとれ、成長や達成感を味わうことができる。主人公がどんなに変なことしても、主人公だからで許せる。許せるって感覚すらないかも。だって主人公だから。このタイプは物語をストレートに受け取ってくれる非常にありがたい存在。ただし作中の体験が心に響かなければ物語からすぐおりる。そして主人公=自分だからこそバッドエンドはだめ。特殊性癖ならワンチャンあり。
【主人公寄り添い型】
憑依と似ているけれど、これは共感が鍵になっていて、主人公に共感できればできるほど物語に没頭してくれる。時に120%の読書体験をしてくれるから、作者としては「そんなに楽しんでくれたんだ!?」と冥利に尽きる。このタイプは共感できる何かがないと読めないし、読まない。共感できない=つまらないになってしまうことも。
【主人公応援型】
ポイントは好感。「この主人公好きだ。応援したい」って思ってくれたらどこまでもついてきてくれる。だからこそ主人公の倫理観がおかしいとダメ。主人公が受け付けないと、どんなにいい話を作っても眼差しは冷たい。頭おかしい主人公でも周囲がそう認識してツッコんでくれてたらいける。イメージとしては主人公をそばで見守る妖精さんポジション。気に入らないと脇役に憑く。
【観客型】
一歩離れてスクリーンを眺めている観客のごとく客観的に物語を見つめるので、主人公の性格が悪かろうがなんだろうがOK。納得感があるならバッドエンドビターエンドなんでもこい。それよりも話のつじつまや設定をシビアに見ている。あまりにご都合展開だと萎えるが、「でも最後まで見ないと分かんないよな」というスタイルでもあるので、最後まで見た結果おかしいままだとぶち切れる。
【考察型】
思考族、深読み族。物語の一歩奥をのぞこうとしてくる。なぜこの場面から始まった? どうしてそんなことをする? ここで作者が伝えたいことはなんだ? なんてことを開始早々頭フルスロットルで見てる。ミステリなら探偵よりも先に犯人を見つける。怖い。作品を課題として受け取っている可能性あり。その後嬉々として考察文や感想文を書く。
【推し型】
特定のジャンルや要素が好きすぎて判定がガバガバになる人。「サメ映画好き! 話の整合性とか無茶苦茶でもサメ出てくるならそれでいい! むしろ変なのが味!」みたいな。特定のキャラクター、シチュエーション、映画だったら俳優や監督、音楽がいいからなんて理由で絶賛してくれる。
ひとりひとつのタイプを持っているわけではなく、共存したりジャンルで変わったり、特定のものだけに発動したりすると思います。そこに個人の感覚が合わさると感想は千差万別。同じ作品を見て真逆の感想が出てくるとびっくりしてしまうけど、それには理由があるからかもねって考察のすえがこの6タイプでありました。
トンチキなサメ映画とか、各タイプの人がみたら絶対所感バラバラだろうなと思うのです。
爆破されるサメを見てニヤリとする憑依型。
つまらなすぎて見るのをやめた寄り添い型。
主人公がどう考えてもクソでいっそサメに襲われてるのが楽しい応援型。
終始展開についていけないけど一応見る観客型。
名作ジョーズと比較してなにがダメなのかを延々と考える考察型。
サメ映画な時点で100点満点な推し型。
あとね、どんなに素敵な内容でも、地雷ひとつ踏み抜くと総じてダメって場合もあるからね、感想はほんとに人それぞれなんです。
◇
普段は本を読まないっていう層までふくめて、世の中には主人公系の憑依・寄り添い・応援の3タイプが大部分をしめているのではと思います。体感ですけど。
いろんな場所で物語はキャラクターを第一に考えたほうがよいとされるのは、読み手に主人公系のタイプが多いからではないかと考えます。主人公に共感や好感を抱ける主人公にすれば多くの読者が興味を持ってくれます。もしくは離脱せずについてきてくれる。
じゃあキャラさえよければいいのか?
もちろんNOでございます。
最初に出した主人公憑依型。これは自分自身が憑依しているので主人公を通して得る体験や感情の動きが大事になってくるのです。結局のところ、物語よし、キャラクターよしがベターなのです。
そして今回、これってもしかして作者にも当てはまるのかななんて思ったので、エッセイを書いてみた次第です。とはいえそんなに深掘りすることはないんですけれども。
例えば私は主人公寄り添い型と観客型が半々くらいかな、の自認なんですけど、そう思って自分の創作を見てみると、大事にしてるとこがまんまそれだったりするんですよ。応援できる主人公で、できるだけ話に整合性つけたくて、でも優先するのは物語としてのおもしろさだから多少粗があってもご都合主義で押しとおる……! みたいな。
ただ読者傾向と創作傾向は同一であるなんて主張でもないので、これもまた気軽に見ていってください。
では作者向けとして、傾向と気を付けポイントを簡単に書いてみようと思います。
【主人公憑依型】
物語性と臨場感ナンバーワン。波乱もの得意。
自分ごとのように主人公を動かせるので物語を動かすパワーが強く、問題解決や困難を乗り越える描写にカタルシスが生まれる。
主人公の行動が作者の中では自然すぎて、周囲からどう見えているかが抜けやすい。
【主人公寄り添い型】
身近な幸せ&心理描写ぴかいち。日常もの得意。
些細なことでもドラマチックな場面を作れたり、大きな事件を起こさなくても主人公の気持ちの揺れ動きだけで一章作れる。
主人公の気持ちに寄り添い100%だからこそ、相手側の気持ちをないがしろにしている場合あり。
【主人公応援型】
成長させていく過程がうまい。キャラがいい。
どこをどうしたらキャラを好きになるか、このキャラの魅せ方はこうと自分の中に解があるので、そのためのエピソードがすんなり出てくる。
「こんなことしたら嫌われる……!」と慎重になるあまり、ストーリーにインパクトが出づらい。
【観客型】
設定、情報の出し方が巧み。お話が上手。
物語のお約束やセオリーを本能で察知できるため、物語の転がし方が安定している。こうしたら引きやピンチを作れるなどのメタ視点が強い。
展開の整合性を重視し過ぎて、キャラが淡々としたり、言動がぶれたりする。
【考察型】
言語化と解釈の鬼。作品が唯一無二。
着眼点からしてすでに常人と異なっており、普通に書いたつもりでも異彩を放っている。細やかな言語化、作りこまれた世界観、練られたストーリーなどの魅力をぽこぽこ生み出せる。
内容が濃すぎてたまに初心者お断りの匂いがする。
【推し型】
創作の動機が最強。もはやプレゼン。
その魅力をいかようにも語れるし、魅力を引き出すための下ごしらえも欠かさない。今回は控えめにしようかなと思っても気づいたら好きなものを入れている。
好きなものをこれでもかと書ける一方、そうでないものとの熱量差が出がち。
最近は創作におけるAIの進出も目覚ましいので、それにも触れてみましょう。
AIを無理やり当てはめるなら観客型かなあと思います。起承転結をうまい具合でまとめますもんね。文章は読みやすいし出力は短時間だし、発表の場で優位なことを考えると脅威だなと思います。あれも物語のパターンを把握して文脈や展開を予想しながら文章積み上げていくらしいので、その仕様も観客型っぽいですね。だとしたら苦手なのがキャラクター描写っていうのにも納得するかも。なんにも指定しないと淡々とした会話しかしないイメージあります。どれくらい調教が可能なんでしょう。もしキャラがよかったAI使用小説があれば教えてほしいです。
あとは寄り添いも入ってそうだなあ。それこそお茶をひと口飲むとかの何気ない動作を巨大風船レベルに膨らませて語れそう。プロンプト次第でいろいろ書けるんしょうけど、一番書けないのは推し型のあの熱量じゃないですか? 考察型の変態さも捨てがたいかも。どっちも最終的に「バカやろう貸せ! 俺がやる!」って人力になりそう。
いかがでしょうか。
これもひとりひとつのタイプを持っているわけではなく、複数だったりジャンルで変わったり、「全部持ってるぜ」なんて神もいるかもしれません。また読者の時と同一であると主張するものではありませんが、強く感じるものだからこそ創作に反映されているという可能性はあるのかなと思います。
そしてタイプはあくまで傾向です。執筆力、ネタ選び力、さらに「ケモ耳不憫ヤンデレこそ至高」「ごめんね、きみはここで殺します」などの個人の癖が絡みだしていろんな物語ができてしまうんでしょうね、きっと。
創作における自分の強みがわかんねえ、という方はこの6タイプを参考にしつつ、おのれと問答してみるといいかもしれません。創作してる時に大事にしてること、気をつけてること、読者さんから言われた嬉しいことを思い出してみるとなんか出てくるはず。なんかね。
個人的に、気を付けポイントには「ほんとそれな反省せえ」と思うけれど、だからダメだってわけじゃないです。それが味になってることもありますから、自分の強みを伸ばしつつ、たまに立ち止まって自作を見つめてみるくらいでどうでしょうか。
ミステリやホラーは登場人物の共感なんて二の次なことが多いし、「俺は破天荒ではちゃめちゃな主人公でスカッとしたいんだ!」みたいな読み手はたくさんいると思うし、「私が報われるストーリー」に心が癒される人もいると思うんですよ。
強みを伸ばして、癖を込めて、弱みには目こぼししてもらいながら、楽しく創作していきたいですね。
最後に、創作とは奥深いものでして、そこそこの時間やってる気がするんですけど、いまだに発見があります。先日気付いたのは「敵や障害を身近な人物にするのは苦手かも」でした。自分のことなのに今それに気付くんだって感じです。たぶんまたいろいろ考えては「ああそうか」とひとりで納得していそうです。




