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03

お茶会当日、ジュリアン様にいただいた淡い若草色のデイドレスを身にまとい彼の家の馬車に乗る。


「よく似合っていますね」

「ありがとうございます。ドレス以外にも色々と手配いただいてしまって……」


仮住まいとしている近衛騎士の寮へジュリアン様と共にメイドがやってきた。そしてあれよあれよという間に身支度を整えられてしまったのだ。

ありがたく思うが、少々お世話になり過ぎな気がして心苦しい。


「私が好きでやったことです、気にしないでください」


そうは言うが、人の手配ならずドレスにアクセサリーにと色々と頂いてしまっている。姫様なら貰えるものは貰っておきなさいと言うだろうが、そうもいかないだろう。


「何かお礼ができればよいのですが……」

「ふふ、あなたならそう言うと思いました。そうですね、では今日はあなたをエスコートさせてください」

「そのような事でよろしいのですか?」

「ええ。十分です」


私としては、一緒にあちらの家の門をくぐってくれるのは心強いが、それがお礼になるのかは大いに疑問が残る。

けれど、ほかに何かないのか?と問うても、無いと言われてしまうのは目に見えていたのでジュリアン様の意向に沿う他なかった。



「いらっしゃいませ、エリシア様。先日は危ないところを助けていただいた上に、治療までいただきありがとうございました」


出迎えてくれた伯爵令嬢、フレイヤ・エークフェルト様はこの国きっての才女で、華やかな容姿を持った美しくも凛とした女性だ。

そのため、男性から邪な視線を向けられる事も多いらしく、私が警備に加わったパーティーで酔った男性に言い寄られ、きっぱり断った事で男が隠し持っていた薬剤をかけられそうになり寸前の所で私が助けに入ったのだ。

割れた瓶から飛び散った薬剤が彼女に少しかかってしまい慌てたが、幸い私でも治療できる範囲のものだったのですぐに処置はできた。

その後の事情聴取は男性騎士がほとんどだったため、あんな状況で男性に囲まれるのは心細いだろうとひと段落するまでお傍にいた。


「こちらこそ本日はお招きいただきありがとうございます。その、不慣れでご不快な思いをさせないとよいのですが……」

「そう緊張なさらないで、今日は楽しく過ごしましょう?」


差し出された手を握ろうと一歩前に出ようとした瞬間、隣にいたジュリアン様にぐっと腰を抱かれ驚いて彼の顔を見る。


「フレイヤ嬢、本日はエリシアをよろしくお願いいたします」

「ええ、もちろんですわ。ヴァルベルク近衛隊長。過保護とは聞いておりましたが、まさか一緒においでになるとは思いませんでしたわ。それにそのドレスの色……」


過保護というのは初耳だ。彼はただ、この国に不慣れな私を案じているだけで、それが過保護に見えているのだろうか?


「大事な女性ですから」

「そう思っているのはあなただけのようですけれど?」

「……」

「では、エリシア様をお預かりしますわ。3時間程しましたらお返しいたします。さ、エリシア様こちらにどうぞ」

「はい」


案内されたのは温室で、様々な花が柔らかな日の光に照らされキラキラと輝く美しい場所だった。


「今日はエリシア様の国の菓子を取り寄せましたの、私も初めて食べるものですから色々と教えてくださいね」

「はい、もちろんです」



姫様に似た気質なのか、とても話しやすく話が弾みあっと言う間に時間が流れていった。


「あの、フレイヤ様」

「なんでしょう?」

「もし、よろしければなのですが、これからもこうしてお会いいただけませんか?その、お友達というか、なんというか……」

「ええ、ええ!もちろんですわ!私のお友達たちもぜひ紹介させてくださいませ。皆さまエリシア様に興味津々なのですよ」

「そうなのですか?」

「麗しい騎士様に興味のない女性はいませんわ。そうだ、今度お友達も呼んでまたお茶会をいたしましょう」

「それは、是非」


次の約束もした所で、ちょうどジュリアン様が迎えに来たことを知らされ席を立つ。


「エリシア様」

「はい?」

「いつか兄にも会ってくださいね」

「はいもちろん」

「それと、友人として一つ忠告させてくださいな」

「はい?」

「若草色を纏うのは気を付けた方がよろしいわ」

「え?」

「近衛隊長の色でしょう?」


気づかなかったソレを指摘された時、心臓がバクバクと音を立て暴れだし、頬に熱が集まった。

帰りの馬車ではジュリアン様の顔が見られなくて、不審がられたが疲れたことを理由になんとかごまかした。


だって、気づいてしまったから。

ジュリアン様の瞳の色とこのドレスの色が同じだって。


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