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02(sideジュリアン)


「ジュリアン様、今よろしいでしょうか?」

「ええ、もちろん」


セレナ様が嫁がれてきて数か月、共にやってきたエリシアは出国前の不安はどこへやら、我が国の近衛騎士として真面目に働き、素直に周りの言うことを聞きあっという間に溶け込んでいった。


セレナ様付きではあるが、女性騎士という珍しさと綺麗な外国人という事もあり、国民向けの行事の警備に派遣されることは多い。

建前は様々な部署との連携が目的だが、本音は各所の目の保養や外国人を王族に近づけないための措置だ。それを知ってか知らずかエリシアは文句の一つも言わずに真面目に任務をこなし、関係各所から高い評価を得て指名で仕事が舞い込む優秀な近衛騎士の一人となっている。


正直、面白くないが元気に楽しそうに働いている姿を見れば、何も言えなくなる。



出会いは数年前、殿下が隣国に留学していた頃だ。私は殿下の護衛として、彼女はセレナ様の近衛騎士として出会った。

当初はセレナ様に望まれ近衛騎士として地位を得ているかと思っていた、実力も近衛騎士としては見れたものではなく正直警護の邪魔だとすら思っていた。

だが、自分の至らなさを自覚し、真面目さと素直さを武器に教えを請い努力できることを知り、好ましく思った。

ここまでは好感だったのだ、殿下とセレナ様の交流が深まるにつれ、私もずぶずぶとエリシアの魅力の虜になっていった。


セレナ様に関わる事は疑り深いのか、直感が働くのか見事なまでの危機回避能力なのに、自身の事になると危なっかしいほどの素直さを発揮する。

お人よしというのか、自分に悪意をもって近づく者がいないと思っているのか、とても騙されやすく、私が阻止したものの何度か男に連れ込まれそうになったり、詐欺にあいかけたりと危なっかしい。


師として慕ってきてくれるものだから、己が守らなければという気持ちも働きいつの間にか好ましさが愛おしさに変わっていた。

何からも守ってやりたい、私の隣で笑っていて欲しいそう思ってはいたものの、一番美しく幸せそうに笑うのがセレナ様の隣だったので、一度は諦めた。

だが幸運なことにエリシアはこの国にやってきた。そうして一度諦め恋心が再燃し、自分でも驚くほどにエリシアを構い、庇護してしまっている。



「大変申し訳ないのですが、個人的な相談をしてもよろしいでしょうか?」

「もちろん。どのような事ですか?」


困ったときは一人で悩まず、必ず相談するようによくよく言い含めてきて良かったと心底思う。

今、彼女を実質的に守れるのは私しかいない。

セレナ様や殿下の庇護下にあると言えども、目の届かない所が多すぎる。セレナ様に至っては地盤固めの最中だ。それを理解しているエリシアは誰にも相談せずに一人で抱え込むことになっていただろう。

一人で抱え込ませるとろくな事にならないのは、少なくない年月の中で把握済みだ。

彼女を悪意から守るため、誰よりも先に彼女の情報を得る必要があった。



「お茶会の招待状が来まして……」

「エリシア宛に?」

「はい。本来ならお断りするべきなのでしょうけれど、その……」


おずおずと差し出された招待状はエークフェルト伯爵家からの招待状だった。

知り合いかと尋ねれば、以前の任務でその家の令嬢を助け怪我の傷が残らないように治療したとの事だった。


「迷っている理由は?」

「私はこの国の礼儀作法が付け焼刃ですし、失礼があっては問題になると思い……」

「参加はしてみたい、と」

「はい。今の私に身分はありませんが、知り合いは多い方がよいと思いますので」

「気楽に参加して大丈夫だと思いますよ。友人を作ることは悪い事ではありませんしね。その日は私が送迎をしましょう」

「そこまでしていただくわけには」

「牽制ですよ。あなたの後ろには私がいる、というね。念のための措置です。あなたに何かあっては殿下やセレナ様にお叱りを受けるのは私ですから」

「そうですね。では、お願いいたします」


エリシアがすんなり納得してくれて、安堵する。

あの家には確か息子がおり、未婚で婚約者もいない。娘を足がかりに息子と引き合わせる可能性は大いにある。

現在、エリシアに身分はないと言えども、隣国の有力貴族の娘であり、第二王子と第二王子妃のお気に入り。第二王子の意向で相応の身分を与えるべく、この国の貴族に養子として入る予定もある。外国人という所に目をつむれば結婚相手としては最上級の女性だ。


「エリシア」

「はい」

「ドレスは私からプレゼントさせてください。手持ちのお金は十分にあると思いますが、何かと入用でしょう?セレナ様の騎士として存分に力を発揮させてやれない、私の罪滅ぼしと思って受け取ってください」

「えっと、それではありがたく頂戴しますね」

「ええ、そうしてください」



男が女性にドレスを贈る意味を理解せず、相変わらずの素直さを発揮するエリシアだが、それを利用する私も私だと自嘲する。けれど、一気に距離を詰めてはいけない。

ゆっくり、ゆっくり確実に尊敬できる近衛の先輩や上司ではなく、男として私を意識してもらわなければ。


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