春色ラプソディー
画:西院桂様(https://mypage.syosetu.com/147673/)
ウチ、春奈って言います。
下の名前はあるけど、名字はまだ無いんよ。おっしょさんが「おめぇにゃまだ早ぇ」って言うてはったけど、何でなんかな……? 春に生まれたから春奈なんやったら、夏に生まれたら夏奈、秋やったら秋奈、冬やったら冬奈なん? おっしょさんに聞いても教えてくれなんだわ。ほなけどウチ、冬に生まれるのは嫌やなー。寒いの苦手なんよー。
あ、ほなけんウチ、春奈なんかな。ほなって、春がいっちょー好きなんやもん。ほなって、春には桜の花が咲くやろ? ウチ、これでも桜の精霊なんよ。あ、このことおっしょさんには内緒な。言ったらしばくで?
ほなけん、ウチは春奈なんやね。そんで、桜の精で……んー、後何か言うことあったかいな……?
あ、ほうほう、ウチな、人間に憧れてるんよ。何でやと思う? ウチな、いっぺんでえーから恋してみたいねん。好きーとか、嫌いーとか、そーゆーのやってみたいんよ。ほなけど、ウチは桜の精やろ? ウチの本体のお桜はんが動いてくれんけん、彼氏の一人もゲットでけへんのよー。寂しいわぁー。
ほなけどな、たまーに、すっごくたまーにやけど。ウチに逢いに来てくれる人が居るんよ。遠くからわざわざ、いっちょーしんどい思いして、何しに来るんやと思う? ウチのこと、退治するんやってー。何でかなー? ウチ、何も悪いことしてへんよ? ウチええ子やもん。ほなけどおっちゃん、わかってくれへんのよー。何でやろーね? わからんこといっぱいやわ。
けど、ウチ。
そーゆーのもけっこーええかな、って思ってます。
◇◆◇◆◇
時代は大正。
首都東京、上野公園の西郷像の前に、腕組みをして立つ一人の男の姿があった。袴姿が凛々しく似合う二十代後半のその青年は、獣を狩る前の狼の如き視線を、公園一杯に咲き乱れる桜の方に向けていた。
「正に百花繚乱。あやつが蠢き始めるのも近い、か」
低く唸り、彼は目を閉じた。見てはならぬ。桜は人を魅了し、虜にしてしまう。故に奴らと渡り合う時には、自ら視覚を閉ざす必要があるのだ──。
師匠の教えを守り、彼は一切の物事を見ないことにした。空間上に存在する全てのモノの動き、息遣い、胎動。それらは何も、目で捉える必要は無い。心の眼を開いて「視る」のだと──所謂心眼とは原理的に異なる──師匠は常に言っていた。
だがその師匠さえも、半月程前に里の魔の毒に中り、今は床に伏している始末だ。まぁ、その所為で自分が代わりに出向くことになった訳なのだが。
「桜の妖」
自分がこれから対峙するであろう物の怪の名前を口にし、心中にて呪殺する。桜の妖、春奈。師匠が唯一抑えることのできなかった霊。毎年桜の花が咲く季節に人里に現れては、人を惑わし黄泉へと誘い込もうとする悪魔の一種だと師匠は言っていた。そんな悪鬼を野放しにしておく訳にはいかない。師匠が駄目なら自分がやるまで。彼は上京を決意した。
しかし、上野公園に咲く桜の木の内、一体どれが問題の桜なのか。先程から睨みを効かせて居るものの、それらしいモノは見当たらない。警戒されているのか、それとも。
(出向くのがちと早過ぎたか……?)
見た所、七分咲きといった所か。満開にはまだ少し早い気がする。そう言えば、春奈が現れるタイミングを訊くのを忘れていた。果たして既に出現した後なのか、それともこれから出現するのか。胸中で舌打ちし、彼は銭袋の中身を確認する。日帰りのつもりで来た為、余分な金銭は持ち合わせていない。もし今日春奈が現れなかった場合、野宿するしかないのだ。春とは言えまだ肌寒いこの季節、独りで公園に座り込む自分の姿を想像し、彼は嘆息した。できれば、そうなって欲しくはない。
(俺を嘲って楽しんでいるのか、春奈。ならば姿を見せてみろ。お前ごとき、瞬時に叩き斬ってくれるぞ)
彼が心の中で挑発した、その時だった。
「ウチは此処に居るよ」
突如として声が聞こえた。人や動物の声ではない。もっと抽象的な、漠然とした声。はっきりとは聞こえない、ノイズ混じりの音声が、彼の耳に届いたのだ。
「ウチのこと、呼んだよなー?」
訊いて来るその声を頼りに、春奈の姿を探す。目では何も見ることはできない。心の眼を使い、彼は桜の妖の位置を遂に特定した。
春奈は、公園の片隅、まだ花の咲いていない、桜の老木の下に居た。見た目は若い女性の姿をしている。日本女性特有の艶やかな黒髪を肩まで垂らし、まだあどけない瞳で此方をじっと見つめている。着物は女学生風の制服だが、細部においてデザインが異なっていて、何だか妙ちくりんだ。所詮は仮初の姿、気にする程のことではないのだが。
(まさか、女だったとはな)
師匠が梃子摺った相手と聞くから、ついつい屈強な男の姿を想像してしまっていたが。女子供の姿をしているとなると、どうにもやりにくくて仕方が無い。
「なぁなぁ、あんたどなたさん? いつものおっちゃんはどないしたんよ?」
人懐っこく訊いて来るその声には、もうノイズは混じっていなかった。此岸と彼岸を繋ぐ回線を、彼女の方で繋いだのだろう。彼女……まぁ、見た目は一応女だ。実際には男も女も無いから、妖を性別で区別する意味は無いのだが。
「静馬。霧島静馬だ。訳あって、師匠の代わりに汝を討たさせて頂く」
春奈に向かって慎重に歩を進めつつ、彼は名乗りを上げる。妖に名前を告げる意味があるのかどうか疑問ではあるが、だからといって無視できる程静馬は薄情ではなかった。
「ししょー……? あーあー、おっちゃんのお弟子さんなんやね。ウチてっきり、おっちゃんが若返ったんかと思ってもーてたわー」
納得して応えてから、春奈はぴょんと飛び上がった。その脚力たるや相当のもので、軽く跳ねただけで桜の枝の一本に飛び乗ってしまった。流石は桜の妖と言うべきか。
「ほなけどな、静ちゃん。退治なんて穏やかちゃうなぁ。ウチ、なーんも悪いことなんかしてへんよー?」
「其方の是非は関係無い。此方側が被った実害を憂慮するに、始末に値すると判断したまで。よって、即刻排除する」
「わっ、ちょい待ち! ウチ、そーゆーの苦手やねん」
「問答無用」
「わっ、わっ、わー!」
静馬の渾身の力を込めた蹴りが、桜の木を大きく揺さぶり。バランスを崩して、春奈は落下して来た。幼い頃よくしたクワガタ捕りと同じ要領だが、妖にも有効だったらしい。ふらふらと起き上がりかけた春奈を、地面に押さえ付ける。
「これでお前は終わりだ。覚悟しろ」
「ええっ? ウチ、終わりなん?」
「……成仏しろ」
まるで危機感の無い声を上げる春奈の額に、静馬は持っていた札を貼り付ける。符術の一種で、妖の動きを著しく制限するものだ。それだけではなく、呪殺効果もある。静馬が術式を書き込んだが最後、春奈は塵と消え失せるのだ。そう、札に術式を書き込むことができれば、彼女は完全に消滅し──。
「なーんか、これってあれみたいやねー。ウチ、もしかして押し倒されとるんとちゃう? いややわ、なんかどきどきしてきてもーた」
だというのに春奈は、呑気にそんなことを言って来る。頬を赤らめ、潤んだ瞳で静馬を見上げ。彼女の胸元に手を触れていたことに気付き、静馬は慌てて手を引っ込めた。
「あれ? やめんの?」
「お前が妙なことを口走るから……くそっ、術が乱れた」
札に書き込みかけていた術式が解放され、虚空へと消えていく。その様子を見つめ、静馬は悔しそうに毒づいた。本来なら春奈がこうなっていた筈なのだ、その筈なのに。一瞬でも彼女に心を奪われてしまった自分が情けなくてならない。相手は物の怪なのだ、人間の婦女子ではない。それなのに……俺は何をやっている? これでは色惚け師匠の二の舞じゃないか。
静馬は溜息をつき、彼女から距離を取った。目標との接触を要する符術系が駄目ならば、別の手段を実行に移すまでだ。
「五式霊術・金剛槍」
「ごしきれーじゅつ? こんごーそー?」
練り込まれた大気が、金色の光となって静馬の右手に収束されていく。その様子を、春奈はきょとんとした表情で見守っていた。何が起ころうとしているのか分からないのか、それとも余裕の表れなのか。どちらにせよ、彼女の妨害が無いのは助かる。
収束した光は、やがて細長い棒状となる。質量を持たない、純然たるエネルギーの塊。原子が内部崩壊を起こす際に放出される莫大なエネルギーが、光の槍という形で静馬の右手に収まっているのだ。その威力たるや、空間をも貫く程で。今まで幾多の妖怪変化を、彼はこの術をもって闇に還してきた。
「たとえどんなに強力な妖であろうと、この術を防ぐことはできない。たとえ次元の狭間に逃げ込もうとも、空間さえも超越することのできるこの術からは逃げ切れない。お前は消えて無くなるんだ、今度こそ」
「なぁ、もーやめにせーへん? こんなこと続けてもしゃーないって」
「命乞いは聞かん」
「むー。強情なやっちゃなぁ。ウチ、手荒なことはしとうないんやけど」
渋々といった様子で、春奈は手を上げた。周りに降り積もった桜の花びらが舞い上がり、彼女の手の中に集まっていく。
「やっと、やる気になってくれたようだな」
静馬は不敵な笑みを浮かべる。彼女がどんな術を使って来るのか知らないが、金剛槍を持つ自分が負けることは絶対に無い。勝利を確信し、彼は光の槍を正面で構えた。来るなら来い。
「いっくでー。ウチの必殺技! 秘儀・桜吹雪や!」
ぶわっ。彼女が叫んだ瞬間、花弁が空を舞い、まるで吹雪のように静馬の身体に吹き付けられる。痛みは無い、だが視界が完全に遮られてしまった。見えるのは、桜、桜、桜。世界は完全にピンク色に覆われてしまっていた。
心眼を試してみるも、何も見えない。桜の花びらに込められた霊気が邪魔をしているのだ。焦って槍を振り回すも、春奈の姿は見つからない。破滅的なまでの効力を発揮する武器も、相手に当てることができなければ全く意味は無い。
「くそっ」
耐え切れなくなって、思わず彼が吐き捨てたその瞬間。
「ほい、これで終わりや」
ぴん。強烈なデコピンの一撃を受け、静馬は大きく仰け反った。
こうして、勝負の決着はあっけなくついてしまったのだった。
◇◆◇◆◇
桜には人を惑わす魅力があるという。ならばその霊である、彼女の場合はどうなのだろうか。
まるで警戒心の無い、幼い顔立ち。関西訛りの、妖艶さの欠片も無い口調。女学生の服装を真似たはいいが、微妙に真似しきれていない変な格好。どれを取っても不完全で、桜独特の儚さは微塵も感じられない。逆に生命力の強さを感じる。生物でもない妖にそれを感じるのはおかしなことだが。
「ゴメンなー。ウチ、ちょっとやり過ぎたみたいやね。あ、まだ痛い?」
ズキズキと痛む額を押さえてうずくまる静馬を見て、彼女は心配そうに声を掛けて来た。春奈のデコピンには呪いに近い効果でもあるのか、痛みは一向に減る様子が無い。むしろ増して来ているようだ。
「なぁ。その。もし良かったら、ウチが痛みを取る御呪いしてあげるけど」
「要らんお世話だ」
「そーゆーと思ったわ」
苦笑し、「ほなけど、無理したらあかんで?」と言い足して、春奈は彼の隣に座った。驚いて見ると、彼女はにこにこ笑っていた。
「あんなー。ウチな、こーゆーのしたかってん。彼氏と一緒にお花見すんの。あんたは嫌そうやけど……堪忍してな」
「俺はお前の彼氏じゃないし、花見をする気分でもない……いてててて」
「ええよ、ほんでも。ウチが居たいだけなんやから。あんたの痛みが取れるまで、一緒に居るからなー」
「……勝手にしろ。どうせ俺ではお前を御することはできないんだからな」
諦めて呟き、静馬は上空で咲き乱れる桜を見上げた。満開ではないにしろ、十分美しい。
だが。春奈の本体だという老木だけは、未だに花開いてはいない。蕾は付いていて、咲く準備は出来ている筈なのにだ。周りの桜達に後れを取って──まるで咲くことを躊躇っているかのように、静馬には思えた。
「なあ、春奈」
「なんや? 静ちゃん」
「その静ちゃんって言うの止めてくれ。悪寒が走る」
「なんでー? 可愛いやん」
「全然可愛くない……って、俺が言いたいのはそんなことじゃなくてだな」
一呼吸置き、静馬は続けようと口を開いた。その時、まるでそのタイミングを狙っていたかのように、一片の花びらが彼の口の中に入る。
「……ぷっ……げほっ……」
「静ちゃん!?」
「こほっ……いや、もう大丈夫だから……」
「あかん! ばい菌が入ったかも知れへん。待っててな、ウチが吸出したるわ!」
「は? ちょ、待て──」
ちゅうううう。止めようとするも、時既に遅かった。春奈の唇に押さえられ、静馬は何も言えなくなる。甘酸っぱいサクランボの味が口内に広がり、桜の良い匂いが鼻をくすぐった。勢い良く吸引され一瞬息が詰まったが、それも直ぐに苦しくなくなった。肺の中に溜まった澱んだ空気が全て吸い出されていき、入れ替わりに新鮮な空気が入って来る。光合成と呼ばれる現象だ。桜の精霊である春奈には、植物と同じ空気清浄能力が備わっているのだ。
「……っ……どう? ちょっとは楽になった? とりあえず有りっ丈の空気を吸い出してみたんやけど」
「あ……ああ。楽になったというか、何と言うか」
柔らかい彼女の唇の感触を思い出し、静馬は赤面する。一方の春奈も呼吸を整えながら、少し頬を赤くしていた。恐らく、自分がやってしまったことの意味に気付いたのだろう。気まずそうに此方の顔を見ては、直ぐに視線を逸らしてしまう。
少しだけ。ほんの少しだけ、静馬は彼女のことを可愛いと思った。
そう言えば。何時の間にか、額の痛みが引いている。
「ウチな。接吻したん、初めてなんよ。静ちゃんは?」
恐る恐る、彼女は訊いて来る。どう応えるべきか少し迷ったが。
「俺も初めてだな」
正直に応えると、春奈の顔がぱぁっと、それこそ花が開いたように明るくなった。
「そかそか! ほならウチら、初めて同士やね! わー、良かったー」
「何がだ、何が」
「ほなって、何か嬉しいやん。ウチの為に取っておいてくれたんかなー、とか、ウチは静ちゃんと接吻したかったんやなー、とか。静ちゃんはウチの白馬の王子様やねっ」
「こらこら、話を広げ過ぎるな。誰が白馬の王子様だ」
興奮する春奈に、冷静にツッコミを入れ。静馬は改めて、唯一つ花を付けていない桜の老木を見上げた。どうにもイメージ的に春奈と同じモノだとは思えないのだが。年代を経た大木には霊が宿ると言うし、春奈とこの老木の関係も、それに近いのかも知れない。
ふと思った。もしこの木が枯れて朽ち果ててしまったら、春奈はどうなってしまうのだろうかと。自分が退治するまでもなく、彼女は消える運命にあるのではないか? それとも、桜の木と分離して、一個の霊として存在するようになるのだろうか。それはそれで悲しい運命だ。彼女には、行き場が無いのだから。
「お桜はん。今年は咲いてくれへんかもなぁ。もう寿命やもん」
春奈も彼と同じように老木を見て、そう呟いた。それから静馬の視線に気付き、慌てて「大丈夫、まだ大丈夫」と言い足して来る。
「あんな、ほんま言うと去年もこんな感じだったんよ。ほなけど、結局は咲いてくれたから。今年も大丈夫やと思うよ」
「……桜の遅咲きは危険の兆候なんだぞ。そんなものが何年も続いたら、それは死期が近付いている証拠なんだ」
「え……あ、うん……ほうなんやけど……でも」
困ったように応える春奈の姿を見ている内、静馬は儚さの本質を知った気がした。
儚いということは、何も外面的なことではないのだ。普段どんなに明るく振舞っていても、消える時は容赦無く消えてしまう。目の前から居なくなってしまう。交通事故が良い例だ。あっさりと、何の前触れも無く人は死ぬ。いや、人だけではない。全ての動植物が、命を懸けて日々を過ごしているのだ。精一杯生きているのだ。だがその命の灯火も、死神によって呆気なく吹き消されてしまう。儚いとは、その状態を示した言葉だ。墓が無い──すなわち、墓を用意する間も無く、死んでしまうことの形容。
「あ。見てみ、あれ」
突然の春奈の言葉に、彼女が指差した方向を見てみると。老木の頂上付近に、小さな一輪の花が付いているのが見えた。本当に小さく、今にも風に飛ばされ散ってしまいそうな感じだが。そのたった一輪の花を見て、春奈ははしゃいだ声を上げた。
「ほらなー、大丈夫なんよ。ウチ、まだまだ現役なんやもん。枯れてなんか居られるかいなっ」
そう言って、嬉しそうに微笑む彼女。此方に気を遣って、明らかに無理をしている。だがそれでも、静馬は彼女に笑って居て欲しいと思った。笑っている限りは、大丈夫なんだと信じたかった。
そして同時に、そんな風に思ってしまう自分に驚いてもいた。消そうと思っていた相手に同情しているだなんて──いや、この感情は同情なのか?
「ほなけん。また来年も来てな。ウチ、待ってるけん」
「ああ。来年こそは、お前を退治してみせる」
「あはははは。そう簡単にはいかへんでー?」
今の春奈には儚さがある。いや、今まで自分が気付いていなかっただけで、彼女は常に儚さと共に在ったのだ。そしてそのことを、心から哀れむ自分が居る。悲しい……こんな風に思ったのは、祖母が亡くなった時以来だ。そう、死は残酷で、とても悲しいもの。
「必ず、また来るからな」
彼は彼女と約束した。
決して果たされることのない約束を。
◇◆◇◆◇
──その年の秋。
静馬は肺病を患い、完治することなく息を引き取った。
◇◆◇◆◇
そしてまた、上野公園に春がやって来る。
「あれー? 今年はおっちゃん独りなん? 静ちゃん、どないしたん?」
彼女はこれからも、待ち続けるのだろう。いつまでも、いつまでも。
その命、尽きるまで。
◇◆◇◆◇
追伸。
ウチ、好きな人ができました。とっても優しくて、とっても強い人なんです。名前は静ちゃん言います。ほんまは「きりしま・しずま」っていうんやけど、可愛くないからこっちの方がええよね。ほんでね、ウチ、その人と接吻しちゃったんです。初めてやったからちょっとびっくりしてもーたけど、嬉しかったです。ほなって、静ちゃんも初めて言うんやもん。運命感じました。絶対恋よね、この感覚。静ちゃんはウチの白馬の王子様や思います。ほなけど静ちゃんは違うって言うんです。何でやろー? 静ちゃん、ウチのこと嫌いなんかな? ううー、違いますよね? ウチ、静ちゃんにだけは嫌われたくないんやけど……。
来年も静ちゃん逢いに来てくれはるやろか? ちょっぴりどきどきな春奈やったりします。早く逢いたいな、静ちゃん。
ほんでは。以上、春奈でしたー。
◇◆◇◆◇
追伸の追伸。
おっしょさんに静ちゃんのこと話したら、むっちゃ怒られました。人間を好きになっちゃいけないって言うんよ。何でなんやろー? おっしょさん言うには、後でお互い悲しくなるんやって。ウチが悲しくなる分にはええんやけど、静ちゃんには悲しんで欲しくないです。ほなけどウチ、静ちゃんのこと好きなんやもん……諦めたくないです。
もう少しウチなりに、色々考えてみよーと思います。
ほなねー。
上野公園の春奈より
画:騰成様(https://twitter.com/touseisyousetu)
画:ヨギリ酔客様(https://twitter.com/tane_hanashi_No)