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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第六章:遷進世界

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089話:魔法で変わる体、お風呂で変わる私

みんなでしばらく勉強していたけど、途中で飽きてしまったのか――

トキノ先生は「あと宿題にします」と言って、薄い本を渡してくれた。


でも、ぱらぱらっとページをめくって見ても……どれも白紙だった。


「あとから出題します」


そう言われて、私とヴェルシーはようやく解放された。


階段を上がって部屋に戻ってから、

窓を見ると日差しはなくなっていて、今は夜になっていた。


ぱったんとベッドに倒れて、

「ヴェルシー。お風呂で休みたいよー」と言うと――


いつものように、三日月ベッドの上にまんまるな穴が開いていって、

音もなくあたたかい湯気がふわりと立ちのぼった。


「ありがとうねー」


そう言って、小さな花びらの香りをいっぱい吸い込んでから、

私はごろごろっと転がって、ぽちょんとお湯に入っていった。


……この湯船の中は、私にとって“考えるため”の場所。


いい香りがする自分の中の空気を、一泡だけ出すと――不思議と集中できた。


さっき、探してほしいって言われたのは――“勇者”


でも、私もヴェルシーも、勇者っていう職業の人なんて知らないけど。


さっき「どうすれば探せるの?」と聞いたけど、

トキノ先生自身も勇者を探したことはないらしく、「知らない」と一言。


でも――共に旅をした勇者の特徴なら、思い出しながら少しずつ教えてくれた。


しかも、“帝都にいる可能性が高い”って言ってた。


もう一泡、水面に向かってぽんっと出す。


明日から探すつもりだけど、どこから回ればいいんだろう?


トキノ先生が言ってた勇者くんって――

どうやら私たちと同じくらいの年齢で、独特な正義感を持っていて、

なんにでも顔を突っ込みたがるらしい。


それに、ケンカになると相手がどんなに屈強な大人でも向かっていくし、

必要なら他人の物を盗んだりもするって。


……それって、かなり盗系寄りじゃない?


うーん……そういうタイプなら、北か南の庶民街かも。


それに、最初は「探すだけで接触は避けること」って言われた。

なんでだろう?……そっちは聞き忘れちゃった。まあ、明日でいいや。


ぽんっ、ぽんっ、ぽんっと泡を出すたびに、思考が小さく整っていく。

すべての泡を出しきると、代わりに温かいお湯がじわじわと入ってきた。


もちろん、魔法がなければ息なんてできないし、

私が魔法を使えるわけでもない。


私は、ヴェルシーの魔法にたくさん助けられてると思う。


こうやって水中で呼吸ができるのもすごいけど――

最近は……食事をとらなくても平気だったり。

それに、トイレにもまったく行っていない。


……こうやって、どんどん体が“魔法のため”に変わっていくらしい。

私にはとても便利に思えるけど――

魔法使いにとっては、それが目的じゃなくて、


どれだけ効率よくマナを使いこなせるか、ってことだった。


――はぁ、魔法って難しい。寝よう。


お湯の中で器用に服を脱ぐと、寝衣だけの姿になった。

このまま、ヴェルシーみたいにお湯の中で眠ってみようかな――

そう思った、そのとき。


お湯の中に、何かを見つけた。


なんだろう、あれ?

そういえば以前、空で見た生き物に似てる?

カラフルな色で、ぺったんこ。目は離れていて、

ひらひらした布地みたいな手足。


それが、私のまわりをゆらゆらと泳いでいた。


さらに、そのまわりにはきらきらとした光の筋が、数十本も飛び交ってる。


んっ? この光……

どうやら、ヴェルシーが飛ばしてるんだよね?


光の筋が私のそばで拡散して――同時に、泡がぶわっと広がった。


とても綺麗。だけど、同時に強烈で、危険な力を感じた。


それは――

私をお湯の外まで吹き飛ばすには、十分だった。


空中でぐぅうっと――

体からお湯がすべて吐き出されたどころか、

内臓まで飛び出たかと思うくらいの衝撃だった。


お風呂からお湯がなくなっても、いくつかの光は空中を飛び交っていた。


でも私は、ベッドの上に落ちて――


「きゅーっ」


って変な声を出したまま、動けなくなってしまった。


意識が遠のいていく中で、ぼんやり見えたのは……


あの変な生き物の上半身が、

ゆっくりとトキノちゃんの姿に変わっていく様子と――

お風呂の中から、ヴェルシーもどこかへ飛ばされていく姿だった。

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