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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第五章:生命の女神リレアス

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077話:イースさんが起きるまで……

女官イースさんは、いつ寝ているのだろう?

私が内室に来たとき、彼女はいつもはそこにいたけど。


――偶然なのかな?


内室からロビーに出て、二階へと階段を上る。

イースさんの部屋は、この並びのどこかにあると知っていたけど……

どの部屋だったかしら?


階段から二番目に近い部屋の扉が、音もなく開いた。


中から出てきたのは、見たことのない女官――

イースさんと同じ年ごろに見えた。

彼女は、はっ、と私を見るなり、少し慌てた様子で言った。


「あっ、あ、イースはまだ寝てます。……お起こしましょうか?」


頷くと、彼女は私がちょうど立っていた、目の前の扉に手をかけた。


ほんの少しだけ開いたところで、私はそっと手を伸ばして制した。

小さな声で「ありがとう」と伝えると、女官さんは静かに階段を降りていった。


こっそりと足を運び、静かに扉をくぐると――

女官イースさんは、ベッドの中で私のいる方とは、

反対側を向いて横たわっていた。


部屋は簡素で、タンスと机以外に大きな家具は見当たらない。

だけど、床に敷かれている絨毯は柔らかく、

普通に歩くだけでは音も立たなかった。


私はそっと近づいて、声を掛けようとしたけれど……

イースさんの寝息が聞こえてきた。ぐっすり眠っているのかな。


横に置かれていた椅子の向きを少しだけ変えて、借りていた服を静かに置く。

そして、彼女の顔をもう一度だけ、よく見つめてから――

入ってきたとき以上に気をつけて、

音を立てないように部屋を出た。

扉を閉めるときも、静かに、そっと。


朝食、どうしようかな?お腹が特別空いているわけじゃないから、

朝に何を食べようか決めていなかった。

女官イースさんが起きていれば、彼女の好みの朝食を届けてもらって、

一緒に食べればよかったのにね……


ここは人の少ない居住区だから、

さっき見た女官さん以外には誰の姿も見かけていなかった。

だからなのか――私が扉の前でどれだけ長く立っていたのかわからない。


そのとき、背面の扉が音を立てて開き――


「きゃっ!」


悲鳴と共に、身体が私の背中にぶつかった。

振り返るまでもなく、それが女官イースさんだとわかった。


彼女は後ろに倒れてしまったけど、鼻をぶつけたのか、

顔を押さえながら急いで立ち上がった。


「あ、あぅ、すいませんっ、瑠る璃さま……」


そのあと、かすれた声で――ほとんどつぶやくように「……まさか」と続けた。


「大丈夫かな?」


そう言いながら私は彼女の手を握ったけど――


「だっ、だいじょうぶです、すいません……すいません……」


私の手から逃げていった。


いつまでも謝り続けているので、話題を変えるために言ってみた。


「朝食を一緒に食べましょうよ」


女官イースさんに笑顔でそう言うと、彼女はうつむいたまま動きを止めた。

そして、小さく「はい」と答えると――ようやく落ち着いたようだった。


「あのぅ、私がすぐ料理士の所から持ってきますので……

あ、どちらで食べましょうか?」


「ん? あなたの部屋でいいのよ?――そうだ、服も貸してくれてありがとう」


女官イースさんは、大きく深呼吸をすると、


「はい!!」


元気に答えてから、折り畳み型の小さなテーブルを出した。

今、部屋にある二脚の椅子のうち、

どちらを私に差し出そうか少し迷っていたが――

普段は使っていないと思われる方の椅子を選び、私の前に置いてくれた。

そこには、イースさんが普段使っているクッションを丁寧に乗せてくれた。


「すぐ持ってきます!」


そう言って、ぽんぽんと料理を取りに部屋を出て行った。

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