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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第一章:少女二人

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お互い秘密事を知っている、これって友達かな?

扉を超えて最初に目についたのは、部屋の広さだった。


壁一面の本棚には、大量の本が詰まっている。

なかには、私が隠れられるほどの巨大な本もある。

いったい誰が読むのか、想像もつかない。


手を引かれながら先を見ると、煌びやかな棚に並ぶ数々の宝石が目に入った。

それだけではない。机の上にも、まるで無造作に散りばめられたかのように宝石が積まれている。

さらによく見ると、ふかふかの長毛の絨毯の間にも、光を反射して煌めく小さな宝石が埋もれていた。


視線を巡らせると、螺旋階段がある。

そこから覗いた先に見えたのは――キッチンのようだった。


そんな部屋の中心で、「座りなよ」と促されたのは――


百人は寝られそうなほど巨大なベッドの上だった。

さらさらとしたシーツが掛けられている。

私は、手触りを確かめるふりをしながら、そっと顔をそらした。


すると、相手が間近に寄ってきた。


「ねぇねぇ、瑠る璃。」


その声に、思わず反応して視線を向けてしまった。――その瞬間、確信した。

先ほどから、まるで心を読まれているような感覚があった。けれど、今は違う。


もう、すべてを見透かされている。

その瞳が、私の奥の奥まで覗き込んでいる――絶対に。

けれど、どうしても視線を外すことができない。


どうしたらいいの? 魅了の魔法なの?考えてることも読まれているし……

一体、何を求めているの……?


「――友達になろうよ。というか、友達になるよ。君と僕はね」


なんで友達になるのよ、こんな状況で。


「だって、お互いの秘密を交し合えば、友達になれるよね?」


瑠る璃は、自分の意思ではないと思いつつも、こくりと頷いてしまった。


えっ……えっ……えーーーーーー!?


もう、最後の手段しかない。先ほどは効果がなかった指輪とは違う、自衛用の首飾り。

いざという時、最後の最後にだけ使え――そう言われて渡されたもの。


どんな魔法が宿っているのかは知らされていない。

だが、確実に強力な力が込められている。


目線が外せない。頭がぼやける。意識が呑まれそうになる――ダメだ。このままでは……!


瑠る璃は、最後の手段として護衛魔法のワードを唱えた。


――その瞬間、視線が外れた。


気づけば、目の前の子供が瑠る璃の胸元に手を伸ばしていた。


……え?


自分の胸元を見下ろすと、碧い光に包まれた首飾り。

その輝く宝石を、子供が右手でいじくりながら、ぽつりと呟く。


「これ、使うのは勿体ないよ。……ほんと、君、大事にされてるんだね。」


……魔法のワード、最後まで言えなかった?それとも、途中で遮られた……?


けれど、もう魅了の魔法にはかかっていないようだ。


「次は……私に何をするつもりなの?」


瑠る璃は、首飾りを取り返しながら、できるだけ距離を取った。


「何もしないよ。もう友達でしょ?だからおしえるね。」


「……何を教えるつもり?」


「名前だよ。」


子供は笑う。


「僕の名前はヴェル。」


友達……になればいいの?なってもいいの?


私の秘密は……もうバレちゃったの?


ヴェル……君の秘密って?


……もう、どうにでもなりなさいよ。


「友達ね、ヴェル君。よろしくね。」


これでよいのだろうか?

……まぁいいか。

考えることがたくさんあって、もう疲れた。


――ふと気づけば、『蝕界』が終わっていた。短時間で終わったのは幸運だった。

私のこの状況も、短時間で終わればいいのだけど……。

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