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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第五章:生命の女神リレアス

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074話:この世界で一番楽しい本ですね

夢の中はとても落ち着く。


夢を操れるわけではないけど……でも、今考えているのは私だよね?

――なぜ、私の夢なのに自由にならないのかしら?


それとも、これが無意識というやつで、私が勝手に考えているのかな?

だから……目の前に生命の女神リレアス様がいるのも……

そうか、姿がはっきり見えるわけじゃないのに、

女神様だとわかるのも、これが私の夢だから……だよね。


「探して、瑠る璃!! 私を……どうか……さ、が……し……」


えっ、女神様!? 探すって? どうやってですか?


――今日の目覚めは、全然さわやかじゃない。だって、まだ真夜中だし……


ベッドの上にはヴェルシーはいなかったけど、

お風呂があるから彼女はまた、湯船に潜っていそう。


私も入りたい……そう、誘惑にかられたけど……


私の瞳が、勝手に私にいろんなものを見せつけるのは、無意識なの?

だんだんと、胸がちりちりする。


なにも考えず、私は外に出かけた。


見る限りの整ったレンガ道やタイルの壁、等間隔の明かりは――

知らない世界へ通じている道に思え見えてくる。


奥宮殿は、昼間でさえ人に出会わない。


もともと私の宮殿内室は、主要な宮殿の高さより低い位置にあったので、

宮殿の柱がたくさんあって、その多くは倉庫。

住居は少なく……そう、目の前にある図書室などは、

ここにしかなさそうだった。


もう真夜中だというのに、開いているのだろうか?

中から漏れる明かりが、他世界への道にある休憩所みたい。

いつだか、ここで見せてもらった本はとても面白かった。

もしかして、また見れるかしら?


たまには女神様の本以外を読んで、休憩すればよかったかな?

そう考えながら、私は、入り口で逡巡していた。


それをまるで見ていたように、中から「どうぞ、入りなさいな」と声がした。


ひゃっ、驚いた。私のこと……ですよね?

もし鍵がかかっていたら逃げちゃおうかな?

そんなちょっと後ろめたい考えをしながら、取っ手を捻って、扉を開けた。


「お久しぶりですねぇ。こんな夜遅くにねぇ……」


――母さまのような、優しさをもった声だった。

家出前に来た時のことを、自然と思い出した。

そうだ、目の前にいるのは――管理人のローズさんだった。


部屋の中には、手前に二つだけランプがあるけれど、

奥にそびえるたくさんの図書棚には、その明かりは届いていなかった。


その仄明るい光の中で、管理人ローズさんは四角いテーブルに座っていた。

そして、薫り高い――私の記憶をふっと浮かび上がらせてくるような、

紅茶を口にしているようだった。


「今ね、あなたにも入れてあげるから、そこに座っていてねぇ」


私は、すすめられるまま椅子に座った。

ゆっくりお茶を入れてくれているローズさんに、そっと声をかけた。


「急に、あの本を読みたくなって……」


いや、部屋から出て来たのは別の理由だったけど……

なんて言えばよかったかな?


と、言葉に詰まっていた――


「はい、はいね、できましたよ」


テーブルの上を滑らすように渡してくれた、入れたてのお茶。

その香りは、以前よりもずっと豊かだった。


目を瞑り、香りを楽しんだ――


「この本が読みたかったんだねぇ。うれしいよ」


そう言って、ローズさんは本を取ってきて、そっと私の目の前に置いてくれた。


「まだね、私は寝ないから。読んでいっていいからねぇ」


「はい、ありがとうございます」


甘えるように礼を言って、本の表紙をそっと開いた。

数ページをめくると、そこに書かれていた文章は……以前と全然違っていた。

一瞬、間違えて渡されたのかと思った。でも――思い出した。

この本は、読み手が望むことが書かれる本だった。


ページをめくるたびに、私は物語の深みにどんどん引き込まれていった。

そんなに時間は経っていないはずなのに、

気がつけばもう半ばまで読み進めていた。


私がここまで夢中になっていた理由。

それは――物語の中心に、生命の女神リレアスが描かれていたから。

もう最後まで読み切らないと、帰りたくない。そんな想いにかられていた。


――それから、どのくらい経っただろう?


半分ほど残っていた、すっかり冷たくなったお茶を飲み干した。

それから一度、深呼吸して……私は最終章を読み始めた。


この物語は、“もちろん”架空のお話だよね?

私にこんな驚きをくれるなんて、すごいよね?でも、

もし――本当の話だったら?


……そうか。聞いちゃえばいいんだった。


お話の中の生命の女神リレアスさまは、

その昔「クォルローズ」と名乗っていた。


そして、一緒に旅をしていた仲間たちは、彼女をこう呼んでいた――ローズと。


ふふっと小さく笑って、私はローズさんに聞いてみた。


「ローズさんは、女神リレアス様の昔の名前と一緒だったんですね。

素敵です」


「ありがとうねぇ……」


ローズさんはそう言って、私を見たまま――ずっと静かだった。

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