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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第四章:触燃リン界

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055話:動かし方を知りたいな

慌ただしくなった外を突き抜けて、

私たち四人が洞窟の中へ入ると、突然に背後で扉が閉まり始めた。


岩同士がぶつかる鈍い音。その衝撃で、多くの小石がぱらぱらと落ちてくる。えっ……?思わずルクミィさんの方を見る。

すると彼女は、「私ではない」と手振りで教えてくれた。


完全に扉が閉まると、あたりは闇に包まれた。

だけどすぐに、ルクミィさんがいつも腰に付けているランタンに、

橙色の明かりが灯た。


探検家クロノークさんも慌てて荷物を探り、ランタンを取り出した。

黄色い火がぼんやりと灯り、周囲の壁を照らし出した。


「なぁ、君たち……」


クロノークさんの声には、わずかに緊張が滲んでいた。


「冗談ならやめるんだ。ここなら、援軍を待つまでの時間を稼げるだろ?」


探検家クロノークさんは、じっと私たちを見つめた。


私たちは――みんな真剣だった。


一瞬の沈黙のあと、彼は困惑したように呟いた。


「……まさか」


探検家クロノークさんは、疑うように呟いた。

だけど、その目には恐れよりも、困惑の色が浮かんでいた。


無理だとわかっているはずなのに――

それでも彼は、素手でこの巨大な岩の扉を開けようとしていた。


一度目を離せば、どこにあるのか、わからなくなるほどの扉の合わせ目。

ただの巨石の壁に、指を突き立てるだけだった。


探検家クロノークさんは、しばらく無言で岩を押したり、

なぞったりしていたけど――やがて、ため息をついた。


……諦めたのだろう。


探検家クロノークさんは私たちが“悪魔”だとは、

本気では思っていないようだけど。

その理不尽な苛立ちは、行き場を失い、私たちへと向けられていた。


ルクミィさんが、ふと「あれ?」とつぶやく。


「えーと……これって、逆予言かしら?

もしかして、私たち封印されちゃったとか?」


「なぁ、ルクミィ君……どうしたらいいんだ? 俺は……」


探検家クロノークは、混乱した様子でルクミィさんを見つめる。


「落ち着いてくださいね」


ルクミィさんは、静かに微笑んで言った。


「そうですね……古くからの預言書などは、無視するのが一番なのですが……。

あなたたちは、個別に発生している事象を、繋げて考える癖がありますからね」


クロノークはまだ困惑しているようだったけど、ルクミィさんは淡々と続けた。


「まぁ、実際には千を超える“予言”という事象が、昔から動いているだけです。

例えば、“星が落ちると災厄が訪れる”という予言があったとしても、

それはただの周期的な現象ですので」


私は、人だからわからなくても当たり前。少しホッとした。

つまり、この扉が閉まったのは――偶然。たまたまだったのよね?

……あれ? そうなると――私がここに入ったのも、

偶然?そんなはずない……よね?じゃあ、私どうしたらいいのかな?


探検家クロノークさんは、ヨロヨロと歩くと、

疲れ切った体を休ませる為に寝転んだ。精神的にも、限界なのだろう。


「君たちは、余裕があるな。関心するよ」


ぼそりと呟くように言うと、

探検家クロノークさんはルクミィさんへと視線を向けた。


「ルクミィ君に、君たちはどこから来て、どこへ行くのか聞いたが……

俺には、さっぱりわからなかったよ」


……それは、私もわからない。

なぜここにいるのかも――けれど、偶然だとは思いたくなかった。


「君たちの世界は、すごいんだろうな……」


その言葉は、羨望にも聞こえた。


そう呟いた探検家クロノークさんを見て、私はふと、”彼を助けたいと思った”


――その時、地面が揺れた。


いや――洞窟全体が揺れていた。あちこちから、岩が崩れ落ちてくる。

つなぎ目が見えなかった扉の片側が、軋みながらずれていった。

だけど――私たちの上には、一つの岩も、小石すらも落ちてこない。


これは、予言でも偶然でもないはず。

――ヴェルシーがやってくれている。ありがとう。


探検家クロノークさんは、慌てた様子で立ち上がると、

揺れが収まったのを確認して、ズレた扉から外へと駆け出した。


私の場所から入った外の光景だけでも、ひどい惨状が見えた。

だけどよく見ると――死んでいる人は一人もいない。


それどころか、先ほどまで戦っていたはずの敵同士の人たちが助け合っていた。

見るからに敵同士だった者たちが、今は互いを支え合っていた。


……これ、すべてヴェルシーが計算していたのかしら?

そう考えて、振り返って彼女を見た。

――けれど、ヴェルシーは、まるで知らんぷりだった。


探検家クロノークさんが再び駆け戻ってきた。

ズレた扉の隙間から、私たちを見る。

――いや、どうやら、彼には私たちが見えていないようだった。


「ありがとう、ルクミィ」


そう言い残すと、探検家クロノークさんは再び仲間の救助へと向かっていった。

わかってはいたルクミィさんが、小さく微笑みながら言った。


「ここは幻影もかけやすいですし、いいマナが流れてますね」


ルクミィさんも、私も――まあ、私は何もしていないけど――


この世界での出会いがよかったと思っていた。


だけどヴェルシーだけは違う様子で、ぽつりと呟いた。


「やっぱり……止まっているから、動かないや」


独り言のようだった。


ヴェルシーの呟きを聞いて、

私はふと、彼女の言う“止まっている時”が何を指しているのか考えた。


ねぇ、もし時が動いていたら、この世界はどうなっていたの?

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