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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第三章:魔法王ジ

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046話:私が女神なら…時間を操れるのかな?

「ルクミィさーん、どこに行くの?」


先頭を歩くルクミィさんが、ランタンを手にして進んでいく。

私の知らない道。だけど、この洞窟の中では、意外と歩きやすい道だった。


「瑠る璃さまのお話によれば、大変な災害に遭ったそうですね?

なので、対策のために保管湖から持ち出そうと思っています」


そうか、私が湖の中で見たものは、ガラクタのようにも思えたけど。

でも、改めて思い返してみると、

"何に使うのかわからないもの"も、かなりあった。


きっと、その中にあるのかな。

――あの"魔法牛"のような災害に対処できる、何かが。


すごいなー。ルクミィさんは頼りになるし、私の話をちゃんと聞いてくれる。

そして、最善を尽くしてくれる。


頭もいいし、カッコいいし、強いし……


――それに比べて、私は……


なんだか、時間を止めてしまって、そのまま寝てしまいたくなってきた。

時間が進まなければ、何も考えなくていいよね?


――あっ、そうだ。


ヴェルシーが、私のことを「神」だと言ってくれてた。

さっき、ルクミィさんも「時の神様がいる」と言っていたし――


……ということは?


女神である私は、時間を操る能力を持っている……かもしれない?


思考が、ぐるぐると巡る。結局、私はまた"囚われている"――


「瑠る璃さま、着きましたよ」


ぼーっと考え事をしていた私は、ふと顔を上げる。


目の前には、私をじっと見つめるルクミィさん。


……いつの間に?


どうやら、私が平気そうか確認してくれていたみたいだ。

そして、ちゃんと前を見ると――

ルクミィさんの背後に、まるで後光が差しているように見えた。


え……? すごく神々しい……ルクミィさんが女神?


「瑠る璃さま、見てください。この方が、

保管湖の物品を貸し出してくださるエレさんです」


そう言うと、ルクミィさんは一歩横へとずれる。


――その奥に"輝く人"が立っていた。


……人?


――いや、"人"と言っていいのだろうか?


その存在は――頭もなければ、手足もない。


カクカクとした形をしていて、ただの"机"のようにも見える。


えっ、これがエレさん……?


でも、魔法人は見た目だけではわからない。

私はルクミィさんと一緒にそばへ行き、恐る恐る挨拶をした。


「エレエレ――エレエレエレ」


……喋った、のかな?


私には、まったく意味がわからない言葉だったけど、

隣では、ルクミィさんが淡々と話している――と思う。


私は一呼吸おき、ゆっくりとエレさんを見る。


……あたま?の辺りは見た事のない言語で、

何か書いてあって一番ひかり輝いていた。

どこから声を出しているのかもわからない。


「エレエレー」


そんな中、ルクミィさんが目の前にある黒い板に手のひらを乗せる。


ピッ――


すぐに、高い音が鳴り響き、その直後――。


ガタッ。


小さな振動とともに、足元の引き出しがわずかにせり出した。


ルクミィさんは、その取っ手を掴み、ゆっくりと引き出す。


「瑠る璃さま、見てください。こちらです」


そう言って、ルクミィさんが見せてくれたのは――


深い箱のような引き出しの中に、様々な"物"が詰め込まれていた。


……いろいろあるけど、私にはガラクタにしか見えないよ……


ルクミィさんは、物品をぽいぽいっとリュックに放り込み、

魔法人エレに軽く挨拶をすると――


「いきますよー」


そう言いながら、私の手を握り、歩き出した。


ルクミィさんが何を言っているのかは分からなかったけど、

私も最後に「さようなら」と魔法人エレさんに言った。


ルクミィさんは、どうやって魔法人の言語を覚えたんだろう?

取得するの、大変そう……


――それに、この保管湖の物品も、すべて把握しているのだろうか?

たしか、管理していると言っていたので、きっとそうなのだろう。


「すごい、すごい!」


私が感心しながら言うと、ルクミィさんはクスッと笑って――


「これは全然すごくないですよ」


そう言った。


……でも、きっとすごいに違いない。


「そうだ。ルクミィさん、剣で戦えるなんてすごいです」


私が感心しながら言うと、ルクミィさんは小さく微笑んだ。


「私の兄さまたちは武系なので、いつもそのような剣で練習していました。

でも、私は軽いものしか扱えなくて……。

だから、短い剣の使い方しか覚えなかったんです」


「ふふっ。その剣も私の”体”ですので、すごくないですよ」


ルクミィさんは、まるで当たり前のことのように言う。


"剣も私の体"……?


私にはよくわからない例えだったけど――それが、なんだかかっこよかった。


「瑠る璃さま、そろそろ魔法牛に出会った場所に着きます」


ルクミィさんの声が少し低くなる。


「その時の私は、なぜあそこを通ろうとしたのか――

わかっていませんでした。でも、今ならわかります」


私は思わずルクミィさんを見る。


「魔法王ジ様がいるのは、あの場所です」


「……あの場所?」


「ええ。この世界には、場所に名前がついていません。

でも――"あの場所"なんです」


ルクミィさんの表情が、どこか鋭くなる。


「魔法牛さんの災害は、いわば"門番"でもあったようですね」

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