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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第三章:魔法王ジ

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045話:ルクミィさんごめんね、他の運び方思いつかなかったよ

――起きなきゃ。早く起きなきゃ。


でも――なぜだっけ?


あなたは覚えている?あなたが誰かもわからないけど……

もう少しで起きるよ。


――はっ、水の中にいる?体にまとわりつく水。


――起きたよ私。


……私、いま手を握ってる?


血をまき散らしていた腕を思い出した。


ルクミィさん……


目をつむったまま、体を起こして、一呼吸する。


――そして、目を開ける。


やはり、見覚えのある水の中。


そして――私が握っている手は、細かなガラクタに埋もれているけど、

その奥には確かに"体"があった。


すぐに掘り出し、もう片方の腕も確かめる。

ルクミィさんは、何も変わらず、そこにいた。


よかった――今すぐ、湖から出るからねー大丈夫


記憶を頼りに、船がある方へ向かう。

――やっぱり、そこに船はあった。


最初にここから出たときのように、行動をなぞる。

思い通りに進み、砂浜へと到着する。


そして、ルクミィさんが目を覚まし――こう言った。


「RょーllこぁMぃ」


……やっぱり。


想像はしていた。そう――時間が戻っている?

だけど、それでもよかった。やり直せるなら。


「あーあー。あら、調整をしないとダメだったかしら?

これで聞こえていますか?」


「聞こえますよ。私は瑠る璃って言います……あなたは?」


「瑠る璃さん……」


ルクミィさんは、考え込むように少し黙る。


「なるほど……了解しました」


――ふふふっ。


思わず笑いがこぼれた。


「こんな格好では笑われちゃいますね」


ルクミィさんも苦笑する。


私は笑いながら、リュックから出るのを手伝った。


ルクミィさんは、体をもぞもぞと動かしながら、ようやく全身を外へ出す。


「ありがとうございました」


「どういたしまして、ルクミィさん」


私がそう返すと――。


ルクミィさんは、目を丸くして固まった。


「あれ?」


そして、何かを考え込むように動きを止める。


「なるほど……私たちは、どこかで会ったことがあるのですね?」


私は、静かに頷いた。


「はい、会ったことがあります」


そう言って、今までの出来事をすべて話した。


――おかしいことを言っていると思われてもいい。

変な人だと思われてもかまわない。


それでも――彼女が生きているのなら、それでよかった。


――ルクミィさんは、余計な質問もせず、

驚くこともなく、ただじっと話を聞いてくれた。


そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「すごいですね……記憶を残したまま、時間遡行できるなんて」


どうやら、私の言うことを、信じてくれるようだ。


……言っている私だって意味はわからないのにね。


「感激です、瑠る璃さま。一生ついていきますね。」


「は、はぁう……?」


瑠る璃さま……?


なんだか、私の知っているルクミィさんと雰囲気が違うような……


でも、それよりも――


どうして私は過去に戻ったのかな? なぜ、ここにいるの?


もちろん、いくら考えてもわかるはずがない。ルクミィさんにも聞いてみた。


「ルクミィさん……。この湖って、どういう仕組みなんですか?

それに、どうして私は過去に戻ったんでしょう?」


ルクミィさんは、少し考えながら答える。


「瑠る璃さま。この保管湖は、中にある物の時間を止めていると言えます。

でもでも、瑠る璃さまは、この湖の中でも活動できる――つまり、

時間が止まらない理由はいくつか考えられます」


「いくつか?」


「はい。まず、一つは"古代魔法"ですね」


「古代魔法……?」


「強力な魔法であれば、時間の影響を受けずに済むと聞きました。

ですが守るだけでなく操るほどの力には、

世界に一人、いるかどうかもわからないほどの力を持った魔法使いでしょう」


ルクミィさんは、指を折りながら説明を続ける。


「ちなみに、この話は……ファ、いや……フォ……あれ? 違うな……」


ルクミィさんは、何かを思い出そうとしている様子だったが、

ぽんっと手を打った。


「あっ! 魔賢人フェプス老から聞きました!」


「魔賢人フェプス老……」


「そうです! 魔賢人フェプス老は、

この世界のことなら何でも知っていると思いますよ」


ルクミィさんは、にこっと微笑んだ。


「私にとっては、なんでも教えてくれるとても良い方なんです」


「おひげの中に魔法小人が住んでいるって噂もあるんですけど、

私は信じてませんよ?」


私は突然、叔父のガルッサルオジさまを思い出して、笑ってしまった。


「それとですね、魔法王ジさまの能力についても考えられます」


ルクミィさんは指を立て、説明を続ける。


「魔法王ジさまは、古代魔法の源である"マナ"を管理する方だと聞きました。

保管湖を作ったのも、この方のようですし……

時間操作もやってのけるはずです」


時間操作……?


私は思わず息をのんだ。


「それとは別に、"時を操る存在"として、もう一つの可能性もあります」


ルクミィさんは少し表情を変え、別の話を始める。


「どこかの世界にいる"亜神"のことです。

強大な力を持ちながらも"神"にはならず、

それでいて時間を操ることができたらしいですね」


「……そんな人がいるんですか?」


「伝承の話ですけどね。

でも、本当に時間を操れるなんて、すごいですよねー!」


ルクミィさんはくるりと回って、手を広げた。


「私、魔法の才能ないので無理ですけど――」


ではでは瑠る璃さま。

この世界でお会いできるのは、魔法王ジ様だけですので探しましょ。


瑠る璃さまの親友と会う為にも。

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