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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第三章:魔法王ジ

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039話:この大人の女性をどうしよう?

この女性は、どこの世界の人なんだろう?


顔立ちも、服の雰囲気も、私の世界の人とは違う。

年齢は……成人は越えてて。凛々エルお姉様くらいに見える。

でも、背は低めで、可愛らしい顔立ちをしていた。


そっと手を伸ばし、脈を確かめる。


……ない?


私のやり方が正しくないのかもしれない。見た目だって生きているようだし。


とりあえず、この女性を背負って行くことにした。

今の私なら、なんとかなるだろうと思ったけど……

うん、大丈夫そう、苦にならなかった。


今度は低い山を目指して歩く。


しばらく進むが――やっぱり両腕だけで背負って支えるのは無理がある。

バランスがとりづらい。紐のようなものが必要だな……

そう思いながら、辺りを見回してみた。


あれ使えるかな?


足元のガラクタに、ほとんど埋もれているけど――リュック?


ふぁー……やった。


思わず、自分の運の良さに感謝する。


彼女をそっと降ろし、リュックを掘り起こした。少し小さめだけど大丈夫そう。

どうやってこの女性を入れるか考えながら、

試行錯誤してなんとか――収めることができた。


くの字になってもらい、手足はリュックからはみ出している。

でも、これでなんとか持っていける形になって、

さっきよりとっても楽になった。


一歩一歩を確かめて歩く。

――小さい山の上で休憩したところで、上を見てみる。


水面までの距離はまだ高く、さらにその上の天井もはっきりとは見えない。

まわりを見ても岩壁が広がっているだけだった。


私の世界には、ヴェルシーと入ったお風呂でさえ、

たくさんの水の量に驚いたのに。


ここの水の量はいったいなんだろ?

――なんだか怖くなってくるほどの水の量だ。


――次にどの山を目指そうかと考えていると、

水面の微細な揺れが光を反射していた。


ん?あの辺り何かあるのかも……


そう思って、ガラクタ丘陵地を目指して歩き出す。

ガシャ、ガシャと踏むたびに伝わってくる。

山を登るよりも平地を進む方が楽で、足取りも自然と軽くなった。


試しに手で水を後ろへ押してみると、思った以上に進みやすい。

押す力加減や角度を少し変えるだけで、どんどん歩きやすくなって、

速度も上がっていった。


あれ? さっきまで、この水の多さが怖かったのに……

なんだか、楽しくなってきたかも。


水をかきわけ、目的にした辺りに来ると、光が見えてたと思うところよく見た。

なにかある、それは垂れ下がるツタのようなものだったけど、

よく見れば植物種ではない。何かを撚り合わせたロープだった。


これだったら登って行けるかな。


そう思い、軽く跳び上がってロープを掴む――が、ぐらりと大きく揺れた。


はぅっ、びっくりした!


しっかりとしたものに結ばれていないらしい。

でも、慎重に登れば問題なさそうだ。ゆっくりとロープを手繰りながら登る。

体重をあまり感じないおかげで速かった。


水面から顔を出して、周囲を見渡した。

ロープの先には、水に浮かぶ何かがある。

何で出来ているかもわからないし、複雑な構造をしている。

でもこの長細い箱に入れば、一息付けそうだ。


どうすれば入れるかな?


試しに体重をかけると――ぐらりと大きく揺れた。


うぅ……これは慎重にやらないと、箱の中に水が入り込んでしまいそう。


ひとまず、この女性だけでも入れようと、

リュックを降ろして持ち上げようとしたけど――

足場がないせいでうまくいかない。


次は、できるだけ勢いをつけて持ち上げてみる。

すると、長細い箱も大きく傾き、驚いた。


この女性を水面から出すのは無理そう……


今度は自分で乗るために、

女性が沈んでいかないようロープでリュックを固定した。


よし、やるぞ!


気合を入れ、勢いをつけて水を蹴る様に上がると、

今度は上手く箱の中に入ることができた。


げほげほ、と大量の水を吐き出した。

ふーっと落ち着いていると、箱の縁辺りに置いてあったランタンが、

今までは微細に光っていたのに、周囲を照らすほど明るくなった。

そして、箱がゆっくりと動き出した。


えっ、勝手に動いてるよね? どこに行くんだろう?


きゃっ――なにこれ?


ずぶ濡れた私から水が生き物のように動いて離れていく。

この箱の縁を乗り越えて水たまりに戻っていった。


何だったのかな?生物とか?もうすっかり全身が乾いている。

どう思い返しても不思議な水だった。


生物だったら……私……食べてたのかな?大丈夫かなー


――箱はまだ自動的に動いている。


女性はそのままにして、箱の行き先を確かめる。

向きを変えながら岩をかわし、やがて、砂が大量に積もった場所へと向かった。


箱は、その砂の上に乗り上げるようにして、静かに止まった。


――どこへ続いているのかわからない洞窟があったけど、

先に陸に上がって水の中から女性を引っぱり出した。


すると――女性の体から、水があっという間に離れていった。


やっぱり、水が"動いて"水たまりに帰っていく……

やっぱり生物……じゃないよね?


気持ち悪いなーと思いながらも、女性の様子を確かめる。

近寄って、女性の髪をそっとかき分けて、顔を覗き込む。


――そのとき。


女性の目が、ふっと開いた。


ドキッ。


高鳴る心臓。


見つめ合ったまま、女性がゆっくりと口を開いた。

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