ルドさん。キューちゃん。だいじょうぶかなー
とても静か……、動けないし、どうすればいいの?
ヴェルシーと一緒に入ればよかったかなー?
そもそも私、何のためにここにいるの?
――家出したのに、自由にならない自由って、なんなの?
考えても仕方がない。少しだけ休もう。……はぁん、眠い。
――また、見られている?
でも、”あの目”とは違う。冷たい視線じゃない。優しい、懐かしいまなざし。
「……まま……?」
かすかな声が聞こえた。
「僕、ママじゃないよ。」
その声で目を覚ました。
目の前にヴェルシーがいた。すぐそばで私を覗き込んでいる。
――こういう時、深る雪姉さまだったら、
「ママですよ~」なんて冗談を言って飛びついてくるのに。
でも、ヴェルシーはからかっているの?
それとも、怒っているの? それとも……本気?
きっと私が変な顔をしていたのだろう。ヴェルシーは笑顔を見せた。
私も、つられて小さく笑った。
――二人だけのこの場所は、深い森の中のようだった。
ねじれたツタが四方八方から絡み合い、上へ、下へ。
左右にだって、うねるように伸びていた。どこを見ても行く手を阻まれる。
まるで、閉じ込められているみたいに。
「私たち……捕まっているの?」
「いや、場所が悪かったんだ。だから捕まっている訳じゃないよ。
魔掌ルドは、僕たちを助けるために途中で降ろしたんだろうけど……」
ヴェルシーは少し困ったような表情をした。
「君は……"なぜか"寝ていたし!」
えー私のせい?――はぁー。ヴェルシーの言葉に、
少しだけ申し訳なさを感じて、小さく「ごめんね」と謝った。
ここから出られるのか心配で、言葉にならない疑問が広がっていった。
「地下都市から逃げるのは、きっとできる……。
でも、魔掌ルドたちがどうなるのか、気になる」
ヴェルシーが誰かを気にかけるのを、私は初めて見た。
やっぱり、彼女は優しい。
いつも私を助けてくれるし、
今も魔掌ルドさんと魔法生物キューちゃんのことを心配している。
私も同じ気持ちだ。
「ねぇヴェルシー。
魔掌ルドさんたちは捕まったのかな?――誰に捕まったのかな?」
「僕も気になるよ。なぜ捕まったのかは分からないけど……きっと、
それまではいつも通りだったはずだよね。」
ヴェルシーは少し考え込む。
「違ったとしたら、僕たちが"異物"だったとか?」
その言葉に、胸がざわつく。
「もし、そうだったら……助けに行きたい。
でも、どうしたらいいのか分からない……」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。
僕だって自信はないけど……二人なら、きっとなんとかなる。」
ヴェルシーはそう言って、私の手をぎゅっと握る。
「とりあえず、隠れながら進もう。少しは魔法で歩く道を作ってみるよ。」
どんな事かわからず、ヴェルシーに付いて行くと壁の様なツタが、
まるで意思を持つように動き出した。
絡み合っていた壁が、ゆっくりとほどけ、トンネルのような道ができていく。
ヴェルシーのすごさは、もう言葉にできない。
「はい」
ヴェルシーがそっと手を差し出す。――そこには、いつものキャンディー。
――とても美味しい。
「ありがほぅ!」大飴玉だね。




