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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第二章:侵蝕遷移

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30/179

ルドさん。キューちゃん。だいじょうぶかなー

とても静か……、動けないし、どうすればいいの?


ヴェルシーと一緒に入ればよかったかなー?


そもそも私、何のためにここにいるの?


――家出したのに、自由にならない自由って、なんなの?


考えても仕方がない。少しだけ休もう。……はぁん、眠い。


――また、見られている?


でも、”あの目”とは違う。冷たい視線じゃない。優しい、懐かしいまなざし。


「……まま……?」


かすかな声が聞こえた。


「僕、ママじゃないよ。」


その声で目を覚ました。


目の前にヴェルシーがいた。すぐそばで私を覗き込んでいる。


――こういう時、深る雪姉さまだったら、

「ママですよ~」なんて冗談を言って飛びついてくるのに。


でも、ヴェルシーはからかっているの?

それとも、怒っているの? それとも……本気?


きっと私が変な顔をしていたのだろう。ヴェルシーは笑顔を見せた。


私も、つられて小さく笑った。


――二人だけのこの場所は、深い森の中のようだった。

ねじれたツタが四方八方から絡み合い、上へ、下へ。

左右にだって、うねるように伸びていた。どこを見ても行く手を阻まれる。

まるで、閉じ込められているみたいに。


「私たち……捕まっているの?」


「いや、場所が悪かったんだ。だから捕まっている訳じゃないよ。

魔掌ルドは、僕たちを助けるために途中で降ろしたんだろうけど……」


ヴェルシーは少し困ったような表情をした。


「君は……"なぜか"寝ていたし!」


えー私のせい?――はぁー。ヴェルシーの言葉に、

少しだけ申し訳なさを感じて、小さく「ごめんね」と謝った。


ここから出られるのか心配で、言葉にならない疑問が広がっていった。


「地下都市から逃げるのは、きっとできる……。

でも、魔掌ルドたちがどうなるのか、気になる」


ヴェルシーが誰かを気にかけるのを、私は初めて見た。

やっぱり、彼女は優しい。


いつも私を助けてくれるし、

今も魔掌ルドさんと魔法生物キューちゃんのことを心配している。

私も同じ気持ちだ。


「ねぇヴェルシー。

魔掌ルドさんたちは捕まったのかな?――誰に捕まったのかな?」


「僕も気になるよ。なぜ捕まったのかは分からないけど……きっと、

それまではいつも通りだったはずだよね。」


ヴェルシーは少し考え込む。


「違ったとしたら、僕たちが"異物"だったとか?」


その言葉に、胸がざわつく。


「もし、そうだったら……助けに行きたい。

でも、どうしたらいいのか分からない……」


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。

僕だって自信はないけど……二人なら、きっとなんとかなる。」


ヴェルシーはそう言って、私の手をぎゅっと握る。


「とりあえず、隠れながら進もう。少しは魔法で歩く道を作ってみるよ。」


どんな事かわからず、ヴェルシーに付いて行くと壁の様なツタが、

まるで意思を持つように動き出した。

絡み合っていた壁が、ゆっくりとほどけ、トンネルのような道ができていく。


ヴェルシーのすごさは、もう言葉にできない。


「はい」


ヴェルシーがそっと手を差し出す。――そこには、いつものキャンディー。


――とても美味しい。


「ありがほぅ!」大飴玉だね。

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