表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第十章:モザイク国世界
179/179

175話:ねぇ、私以外みんな変わってるの?

私が知らない世界が、どこにあるのか。

そして、どうやって行くのか。


「はい、ここからが『非物質界』ですよ」

なんて表札が出てるわけでもないし――

どこにいるかなんて、わかるわけない。


そう、これはもう……迷子だよね。


道がわかる誰かに、そっと手を引かれて、

自分の家にたどり着いた帰り道。


部屋の空気に触れたとき――

思いがけず、ふあぁっと嬉しさが込みあがってきた。


ただいま、ヴェルシー。


抱き合いながら、

「よかった」とだけ――彼女は、そう言った。


でも、どうして。

ヴェルシーは、悲しそうな顔をしてるの?


「十年……長かったよ、瑠る璃」


え……? そんな……


ヴェルシーは変わっていないのに……――


……でも、そうか。


すごい魔法使いって、

年齢なんて、わからないんだ……よね。


考えてみたら――

この家にいる人で、外見を見て成長がわかるのって、

もしかしたら……私だけなのかもしれない。


ルクミィさんは――

何も話をしてくれていなかったし、

すぐに、自分の部屋に戻っていってしまった。


「……私、会わないと」


父さまにも、母さまにも。

会って、話さなきゃいけない。


みんなに……なんて言おう?


「ヴェルシー。私、行ってくるからね」


彼女は、何も言わなかった。

ただ頷いて――そのまま、俯いていた。


私は、思わず早足になる。


宮殿の内室へと続く扉を――勢いよく開けた。


「あ、る、瑠る璃さま! お急ぎですか?」


目の前にいたのは、女官のイースさん。

どう見ても――変わっていない。


「イースさん、十歳もお年をとったはずなのに……

とってもお綺麗ですよね」


女官イースさんは目を泳がせながら、何かを思い出したように

「あっ」と、小さく叫んだ。


「瑠る璃さま、ご存じですか?

荒野ではなく、辺境内国で争いが起きているそうですよ。

どうしたのでしょうね?」


彼女は――私の言葉を、聞こえなかったことにしたようだ。


でも、それでわかった。

私。ヴェルシーに――騙されていたんだ。


もし――

女官のイースさんが、いつも部屋を掃除してくれてなかったら……

実家まで走って帰ったかもしれないのに~。


「イースさん、ごめんなさい。思い出したことがあるから、戻るね」


きっと、あの人はいつも以上に驚いたと思う。

でも――またあとで、ちゃんと会えばいいよね。


結局、どうなっているのか聞きたいし。

私は、ヴェルシーの元へ――

扉を迷わず、開けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ