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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第十章:モザイク国世界
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173話:え?戦っちゃうの?

「はーい」と、優しい声で助けに来てくれたルクミィさんは、

螺旋階段の“上”からでも“下”からでもなく――“外”から現れた。


……え? どこから?

私の目には、螺旋階段の“真横”から近づいてきたように見えた。


最初に見えたのは、足とスカートだけ。

手すりの向こう側から、まるで真下にいる私をのぞき込むように、

顔を出して、にこっと笑って手を振ってくれた。


それから、手すりの側面に横向きに立ち、

しゃがみ込むと、「よいしょっ」と言って手すりをひょいと飛び越えた。


着地したとき、ルクミィさんの向きは――私と同じになった。


「瑠る璃さま」


ルクミィさんは、ずっと笑顔で、私を見ていた。


話しかけてくれると思っていたけど――

そのまま、ただ優しく見つめているだけだった。


私も、なんだかうまく考えられなくなってきて、

「あれ……?」と、頭の中で何かが引っかかったようで、

思考が、進まなかった。


「瑠る璃さま。こちらに、何しに来られたのですか?」


ルクミィさんは「どうして?」と仕草で言ってくるけど、

笑顔はそのままだ。


……んー、もしかして……。

私は『非物質界』にいると思ってたけど、違うのかな?


「あのね、ヴェルシーのローブの糸が魔法糸で、勝手に穴があってね――」


「“なるほど”。……落ち着いてくださいな、瑠る璃さま。

良かったです、瑠る璃さまのままで」


え? ……あ、そっか。


私、そんなに慌ててたかな?


「瑠る璃さまのままで」って、つまり――

あの子たちと、見分けがつかなかったのかな?


「えっと、下にいる私みたいな子たちは違う――」


……でも、それで伝わるのかな?


私が続きを言おうとした、そのとき。

ルクミィさんが、ぽんっと肩を叩いた。


「ちゃんと、違うことは分かりますよ。

今のエネルギーでは、“完成品”とは言えませんから」


「あ! ここって『非物質界』じゃなかったのね?」


「はい」


「じゃあ、『銀の理生物界』……なのね。ここは。

でも、なんだか私の意思でできた場所みたい」


「そういうところですから。……早く片付けてしまいましょ」


――片付ける?


……もしかして、あの子たちのこと?


「あの子たち、前みたいに襲ってきたわけじゃないのよ?」


その私の一言だけで悟っているようだった。

ルクミィさんが、ここに来て初めて――悩んだ顔をした。


「私からのお願いです。

見ないでください。聞かないでください。


いずれ……わかると思いますから」


ルクミィさんの顔は、少しだけ――悲しそうだった。


今まで、ルクミィさんは、必ず私を助けてくれてきた。

だから、今回も間違いじゃない。

……そう、思いたかった。


「なぜ、そんな悲しい顔をするの?

あの子たちが……可哀想なの?」


そのとき――

なぜか、ルクミィさんが私をぎゅっと抱きしめた。


「“なるほど”。

瑠る璃さまは、勘違いしていますね」


私は、何も知らないから――。


「あの子たちは……これから、襲ってくるんですよ」


え?……え!?


ルクミィさん、なんで笑ってるのよ。


それに……

なぜ、あの子が階段を、私たちに向かって歩いてくるのよ。

【後書き】――rururi


ちょっと待って! 「片付ける」って、そういう意味!?

ていうか、ルクミィさんって笑顔であんなこと言うのズルいよね?

でも、ぎゅってされると……なんか、否定できなくなっちゃう。


私、やっぱり、知らないほうがいいこともあるって思っちゃった。

……でもね、見ちゃったし、聞いちゃったし、

だから、たぶん……私、行くよ。


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