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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第十章:モザイク国世界
176/179

172話:見られてるって気づくと、言いにくいよね?

ここは、私の世界のようだけど――でも、なんだか違う気がしている。


それは、目の前の女の子が私にあまり似てないな……

と思いはじめたからかもしれない。


だから、今度は無視して階段を上がっていくことにした。


ふぅー……。

もう何段くらい上ってきたんだろう? 数えておけばよかったな。

……でも、今から数えればいいか。


それにしても、さっきの女の子の鼻歌が、ずっと頭から離れない。


それとも、この螺旋階段が反響してるのかな?


内側の手すりに手をかけて、そっと下をのぞいてみた。


……さっきの女の子が、一回り下の段を、ついて来ていた。


……ん?


そのさらに一段下にも、女の子はいた。


檻の扉は壊れてるんだから、ついて来てもおかしくはない。


でも、私が休んでいる時には、その子たちも同じように止まってる。

どうやら、話しかけてきたいわけでもなさそう。


……なんだろう、これ。


階段の段数を数えるのは、もうやめた。


代わりに――女の子が、何人ついてきてるのかを数えることにした。


……十人を数えたところで、飽きてしまった。


いや、ちょっと違うかも。


下から聞こえてくる声が、重なり合って――

とても、うるさい音になっていた。


一人ひとりは、きっと可愛い声なんだろうけど……

今は、それが気持ち悪く感じる。


疲れてたせいなのかもしれない。


思わず、言ってしまった。


「うるさい!」


……無音になった。


もしかして、みんないなくなったのかな?


また、内側の手すりから下をのぞいてみた。


女の子たちは、みんな身を乗り出して、

一斉に上を――私を見ていた。


「しー」


……そうは言ってみたけど、ちょっと可哀想だったかな?


でも、こうなるとまるで自分に謝ってるみたいで――

可笑しくなってきた。


下に戻って、謝るというか……ちょっと話してみようかな、とも思った。


でも、戻るのは面倒だったし、

私が降りれば、きっと女の子たちも、

同じだけ降りてくる気がして――やめた。


「はぁん」とため息をついた、その時。


……る……りる……


声が、聞こえてきた。


……私の声じゃない。


「瑠る璃さま。平気ですか?」


ルクミィさんの声だった。


「はい。私は平気です」


もう、疲れている事を思い出したのかそれ以上何も考えられなかった。


「あの~助けた方がいいですか?」


あれ? ルクミィさんは、助けてくれないのかな?


ていうか、ルクミィさん……なんか可笑しいこと言ってないかな?


ここまで来たのって、私を助けに来てくれたんじゃなかったの?


……まああれは、ただの確認だよね?


「ルクミィさん、助けてください」


どこにルクミィさんがいるのか分からなかったけど、

「はーい」っていう、優しい声が聞こえた。


その瞬間、すごく――気持ちが安らいだ。

【後書き】――rururi


いや、ほんとに静かになった時って、逆に怖いんだよね?

「しー」ってやったのは私だけど、みんな揃って上を見てるのは反則だよ。

でも、ルクミィさんの「はーい」で全部どうでもよくなった。

安心って、声ひとつで来るんだね~。


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