171話:あつあつステーキを食べて気力満タン
螺旋階段を上るのは、とても大変です。
最初は上が気になって、何度も何度も見上げていたけど、
今ではもう、自分の足ばかり見ていた。
はぁー、はぁー……息が上がって、疲れてきた。
もう、休みたい。ここで待ってればいいのかも……。
……いや! まだ平気。もう少し、がんばって私。
それからも、一歩一歩と上っていった。
――ん? なんだか、いい匂いがする。
香ばしいお肉……焼いてるのかな?
もしかして幻かもしれないけど、と思いながら、
手すりから身を乗り出して、上を見てみた。
そこには、大きな円形の箱が――螺旋階段からはみ出していた。
あはっ。
頭の疲れがどこかへ飛んでいったので、前を向いて上っていくと――
そこにあったのは、巨大な檻のようだった。
中に人がいる!
今の私と同じ、薄い肌着一枚で、
簡素な椅子に座っている女の子。
手を振りながら、こちらを向いたその子は――私だった。
「あなたは私?」
……そう聞こうと思ったけど、意味はないからやめておいた。
私も手を振って挨拶を返し、
テーブルの向かいにあるもう一脚の椅子を指さして――
「座ってもいいですか?」と聞いてみた。
女の子がうなずいてくれたので、安心して腰を下ろした。
すると、檻の扉が外れて落ちているのが気になった。
落ち着いてよく見ると、なんだか――私、そんなに似てないかも?
そんな気が、ふっと湧いてきた。
さっき、変な質問をしなくてよかった。「あなたは私?」なんて言ってたら、きっと頭の軽い子だと思われていたかもしれない。
ふふっと笑うと、その子もつられて笑った。
「あなたもどうぞ」
何のこと?と思った時には、
厚いステーキが目の前で、まだ油をパチパチと跳ねさせていた。
それにはちゃんとブロッコリーとコーン。そしてニンジンも添えてある。
私は「いただきます」と言って、なくなったエネルギーを補給した。
こんな、意識だけの世界で食べたものに意味なんてあるのかな?
そう思ったけれど、実際にお腹はいっぱいだし、
「さぁいくぞー」っていう気力も、ちゃんと湧いていた。
すぐにでも先へ進めそうだったから、
立ち上がって「ありがとう」とお礼を言うと――
女の子は「ばいば〜い。またね」と、手を振ってくれた。
部屋のベッドで眠ることを考えながら、また一歩一歩、階段を上がる。
……なのに、部屋にたどり着く気配はなかった。
――あ、あー。
「またね」……なのね。
何気ないその言葉が、ずっと引っかかっていた。
私は、檻の中で鼻歌まじりに踊る“同じ姿”の女の子を、
静かに見ていた。
【後書き】――rururi
お肉もあったし、元気も出たし、もう問題ないでしょ?
あの子が私じゃないのか、私があの子なのかは……考えない。
とにかく! またねって言われたからには、また会うと思うんだよね。
たぶん。