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彼女の∞と私の零と  作者: イニシ
第一章:少女二人
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まさか死体があるなんて!ほんと!?

腰の高さの仕切りが広場に並んでいた。

私もその中で《復活》を手伝う人々の一人だった。


仕切りの向こうでは、裸の人々にシーツをかけ、別室へ誘導している。


復活者には、異なる衣服と帰路に必要な小袋が与えられるが、それは慈悲ではない。

各国が事前に徴収した財貨を、復活者に渡す仕組みだ。

とはいえ多くの者が母国には戻らず、帝都に住み着いてしまう。

それが、街が人で溢れる一因ともなっている。


だけど、それは問題ではなかった。

何故かと言うと、私たち人種は老衰以外では死なないし、復活の力の源は女神様だから。


復活者はどこで死んでも、その場で消え、ここで復活する。

復活の瞬間を見た者はいないが、常にその光景は日常の一部だった。


私が周囲を見回すと、地面から唸る声が聞こえた。

復活者が異性の場合には、他の者が対応することもあるけど、私は気にしていない。

シーツを取って、男性にそっとかける。

復活直後の者は錯乱していることが多いため、落ち着かせ、ここがどこかを伝える必要がある。


男性は手を取った私を見つめ、低く呟く。


「ああ、女神リレアス……」


その後も、男性は続ける。


「彼は……死んでいたのです。見るからに屈強な体を持つ若者でしたが、

その体は朽ち、まるで獣のように崩れていく――」


私には彼の言うことが理解できなかったけど、その真剣な訴えだけは伝わった。

男性は気づいたようだ、目を見開き理性を取り戻して頭を下げる。


「失礼しました、お嬢さん。もう大丈夫です。復活は何度も経験しているので。ありがとう」


男性は広間を去った。私は椅子に座って、男の言葉を思い返す。


本当に死体だったのかな? そんな話、聞いたことがない……。

ヴェル君はすごい魔法使いみたいだし、死体の話もわかるかな?


疑問が解けないまま、私はヴェル君に尋ねようと思った。


今の事が頭にこびりついていて、他の事に気が回らない。

来たばかりだけど……平気だよね?


お姉さまと何時までお手伝いをするかは決めていなかったし、

また明日来たって問題ないよね。


私はちょっと後ろめたくて女神リレアスさまに「ごめんなさい」と心の中で謝った。


ここに入る時と同じで私を止める人もいないけど、

自分で使っていた椅子や残っているシーツなど元の所に片付けて、

女神堂を後にした。


私は人混みをかいくぐりながら、最南宮殿まで駆け戻った。

通路に差し掛かると、待ち構えていたかのように女官イースさんが慌てた様子で近づいてきた。


「瑠る璃様、どうかなさいましたか?」


「ごめんね、大事な用ができたから戻ってきたの。」


そう言うのと同時に足を止めることなく、あっという間に内室へと入った。


――あの男性の言葉は、なんだったのだろう。混乱なのかな?

胸にざわつく何かを残したまま、私はまたヴェル君のもとへ向かっていた。

女官イースは、肩で息をしながら、閉じた扉の前に立ち尽くしていた。

実はさきほどから、瑠る璃さまの後をこっそりつけていたのだ。


突然、走り出した彼女を見て、慌てて後を追いかけた。

速足で街中を駆け抜け、最南宮殿まで戻る羽目になるとは――。


けれど、瑠る璃さまはそれどころではない様子で、

イースの苦労にはまるで気づいていなかった。


(まあ……瑠る璃さまに気づかれずよかった。)


ようやく呼吸を整えたイースは、少し気を取り直して、

改めて瑠る璃さまの部屋の扉をノックした。


「瑠る璃さま……?」


けれど、中からの返事はなかった。


しばし耳を澄ませて待ってみたが、やはり気配がない。

イースは小さく息をつくと、静かに扉の取っ手へと手を伸ばした――。

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